t-Aceというラッパーが持つ摩訶不思
議な魅力に迫る

t-Aceはなぜここまで支持されているの
か?

今、日本のラップシーンはカオスの様相を見せており、シーンを見渡してみてもさまざまなラッパーが活躍中です。SKY-HIの躍進やCreepy Nutsのブレイクは、そんなシーンの多様性を示すひとつの指標だと思います。仮にこの二組だけで考えてみても、日本語ラップの広がりを実感することができます。

そんなわけで、「日本のラップシーン」という括り方で何かを語るのはもはや不可能に近くなってきたわけですが、「近年、ラッパーがYouTubeにあげた音楽の再生数」だけを指標としてラッパーの人気を考えた時、明らかに無視することができないラッパーが一人います。それが、t-Aceです。

t-Aceのヤバい再生数について

t-Aceは、茨城県水戸市を拠点に活動するラッパー。2017年10月にYouTUbe上にアップされた「超ヤバい」の再生数は、この記事を執筆している7月現在では1400万回を超えており、その再生数こそヤバいことになっています。
2018年に発表された「ダレもいねえ」は、2018年のYoutube上にアップされた日本語ラップMV再生数で第2位を獲得しており、Youtubeでの影響力の大きさは他のラッパーの比ではないことがわかります。
また、2019年6月5日にリリース&配信がスタートした10枚目のオリジナルアルバム『TSUBASA』は、LINE MUSIC総合チャートで1位を獲得。今なお圧倒的に支持されていることがわかります。

t-Aceは楽曲リリースだけでなく、ライブ活動も精力的。現在、年間140本以上のライブをこなしており、どのライブも大盛況。これだけみても、彼が生み出した功績は「普通」の域を超えていることがわかります。

いったい、t-Aceはなぜこのような功績をあげることができたのでしょうか?

どんな層に人気があるのでしょうか?

一般的な評価として、t-Aceは10〜20代の女性ファンが多く、特にクラブ系のカルチャーに精通している女性からの支持が根強いです。また、「超ヤバい」をはじめ、TikTokで彼の楽曲が使用されることが多く、TikTokを能動的に使用している層(おそらくティーンの女性)からの支持も集めています。しかも、その支持が「熱狂的」なものであることがポイントです。

なぜ人気があるのでしょうか?

t-Aceの場合、表向きのキャラクターがはっきりとしています。「クズ」「エロティック」「刺激的」「アダルト」…t-Aceをググるとそんなキーワードが出てきます。アーティスト名を聞くだけで、簡単にキャラクター化できるワードを幾つも連想できることがそもそも凄いですよね。また、タトゥーのイメージが強いビジュアルも独特です。

t-Aceの人気の理由を考えてみたとき、「このキャラクター性がはっきりとしている」という部分は重要なポイントだと思います。ただし、これは単に個性が際立っているというだけの話ではありません。他の人たちがなかなか取らないポジションを、マーケティング的な計算ではなく、自分らしさを追求していくなかで勝ち取ったところが大きなポイントなのです。

というのも、若者のセンスに引っかかったのは、t-Aceのキャラクターが「天然のかっこよさ」だったから。ファンが魅了されている本質にあるのはt-Aceの表面的なキャラクター性ではなく、彼が嘘偽りなく自分をさらけ出した結果、やっぱりチャラいキャラクターであるという事実なのです。すべてをむき出しにしているはずなのに、かっこいいんですね。

だからこそ、彼の精神性にも、彼が歌詞として語る言葉にもコミットすることができるのだろうし、「熱狂的」なレベルにまで引き込まれるファンが増殖中というのにも頷けます。

楽曲の魅力はどこにあるのでしょうか?

先ほどお話した、“嘘偽りのないキャラクター性”とも通ずる部分ではあるのですが、t-Aceは楽曲中で丁寧に「自己紹介」をするタイプのラッパーです。また、刺激的な言葉を並べただけのように見える歌にも、自分の本音や想いをさらっと織り交ぜます。

たとえば、「超ヤバい」は<笑えなきゃ何も意味ない>というフレーズに、t-Ace自身の人生哲学が詰め込まれているように感じます。アメブロの個人ブログで綴られた言葉や、他の楽曲で語られた言葉を並列にしてみていくと、なぜ彼がこんな言葉を紡いだのか、なんとなく想像することができるのです。

t-Aceの楽曲を聞き込めば聴きこむほど、なんとなくスルーしそうなリリックにこそ、彼の哲学が詰め込まれているということに気づくんですね。

また、「孤高の花01」や「孤高の花02」などの楽曲では、凄惨な過去、辛い幼少時代など、赤裸々に己の半生について語るラップを聴くことができます。

ライブに足を運んでいる人たちみんなが、t-Aceのそういった過去を「知った」うえで、パフォーマンスをみているのかはわからないですが、その過去が彼のパフォーマンスをより魅力的にしていることは間違いありません。

リリースからたった一ヶ月でYouTube再
生回数100万回を突破

上記の要素が一本の軸でキレイに通っているからこそ、t-Aceのパフォーマンスには説得力が生まれ、引き込まれるのだと思います。軸を持っているからこそ、彼のパフォーマンスにはブレがありません。ブレがないからこそ信頼できますし、多くの人がコミットできる。結果、圧倒的なバズを生み出すんですね。

今年リリースされた新曲「PORSCHEでKISS」では、リリースからたった一ヶ月でYouTube再生回数100万回を突破しています。
この楽曲は、エレクトリカルな匂いのするサウンドに、オートチューンのかかったボーカルをかぶせることでリッチ感のある装いに仕立てる一方、どこか哀愁の漂うメロディーラインとどこかセンチメンタルな気分になるフロウのギャップの内在に心が掴まれる構成となっています。

t-Aceは楽曲の幅も広く、ポップ感のある楽曲や、歌メロの要素の強い楽曲も多い。ポップスにしか馴染みのない人でも聴きやすい楽曲が多いため、普段はラップを聞かないという人にこそ、ぜひ彼の作品に触れてみてほしいです。

ライブ情報

t-Ace 2nd Live Tour 2019 “遊びの天才”

2019/10/26(土)なんばHatch
open 18:30 start 19:30
1F スタンディング ¥5,000(税込)/2F 指定席 2F ¥5,500(税込)

2019/11/8(金)STUDIO COAST
open 18:00 start 19:00
1F スタンディング ¥5,000(税込)/2F 指定席 2F ¥5,500(税込)

2019/11/29(金)DIAMOND HALL
open 18:30 start 19:30
1F スタンディング ¥5,000(税込)

【チケット情報】
7/13一般発売
https://l-tike.com/tace/

t-Aceというラッパーが持つ摩訶不思議な魅力に迫るはミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。

ミーティア

「Music meets City Culture.」を合言葉に、街(シティ)で起こるあんなことやこんなことを切り取るWEBマガジン。シティカルチャーの住人であるミーティア編集部が「そこに音楽があるならば」な目線でオリジナル記事を毎日発信中。さらに「音楽」をテーマに個性豊かな漫画家による作品も連載中。

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