【インタビュー】IRabBits、15周年に
セルフタイトル盤完成「腹くくってる
のを見せなきゃいけないタイミング」

IRabBitsが8月7日、約2年半ぶり3枚目となるフルアルバムをリリースした。活動15周年に発表される同アルバムはセルフタイトル『IRabBits』を冠したもの。メジャー作品となる同アルバムに賭けるメンバーの意気込みが伝わってくるようでもある。昨年、会場および配信限定でリリースしたシングル「ミスデモクラシー」「二十日恋」収録6曲に加えて、新録9曲の計15曲が収められたアルバムは、彼らの音楽的な懐の深さや経験に裏打ちされたヴァラエティに弾みをつけたような仕上がりだ。
結成は2004年。年間150本を超えるライブを継続し、ガールズボーカルバンドを一堂に集めたフェス<響姫祭>を主催したほか、2011年7月には10-FEET主催<京都大作戦>に出演するなど、ライブを中心とした活動で注目を集めた。ドラマーの交代劇や事務所からの独立を経て、2017年にはアルカラ感覚ピエロを迎えて横浜の音楽シーンを活性化させるべく<YOKOHAMA MUSIC FUTURE>を開催。近年はアニメ『けいおん!』の声優等を務めるスフィア寿美菜子や、女優の瀧本美織率いるLAGOON、映画『暗殺教室』等に出演の松永有紗率いるリンクSTAR'sに楽曲提供や演奏指導を行うなど、着実な活動と音楽的クオリティの高さが評価されて各方面から引っ張りだこ。バンドの状態が右肩上がりを続けるなかでの3rdフルアルバムリリースとなる。

竹下麻衣子(Vo / Pf)、加藤智之(G / Cho)、猪野進一(B / Cho)、山田祐大(Dr)に、15周年、改名、メジャー移籍、セルフタイトルのアルバム制作について訊いたロングインタビューをお届けしたい。

   ◆   ◆   ◆

■2018年は新人の気持ちで全てを自分たちで
■経験として、めちゃくちゃ良かったです

──IRabBitsとしては、今年結成15周年を迎えました。まずは、この15年という時間は、バンドにとってどんな時間だと感じますか?

猪野:そう言われると“確かにな”と思いますけど、やっているときは無我夢中なので。本当にあっという間でしたね。

竹下:毎日歯磨きしているみたいな感じです。日々、当たり前に歯磨きしていたら15年経ってましたっていう感じで。もちろん、辛いこととかもいろいろあったんでしょうけど、15年やるぞとか、期間を目標にしてバンドを続けたことがないので。本当にただただ、バンドをやっていた15年という感じですね。でもメンバーのおかげです。8年目で前任のみづきというドラムが脱退して、今の山田祐大が加入してから7年。厳密にいうと、途中アイラビ君という謎の生物の時代が3年ほどあったんですけど。

山田:お客さんには“ウサギ”と言っているドラマーが3年間いまして。その後に自分が加入をしたんです。

竹下:でも、その間もずっと一緒にいたので(笑)。
▲『IRabBits』初回限定盤

──元々の“I-RabBits”という表記からハイフンが取れて、“IRabBits”となったのは何か理由があったんですか?

竹下:いろいろあるんですけど、ひとつ“これだ”となったのが、2018年にレーベルも事務所も一旦離れて、完全に独立をしたんです。自由だ!って思って、ここからはなんでも自由にしようとなって。それで、合同会社だったんですけど、自分たちの会社を立ち上げたんです。その会社名を決めるときに、画数診断とかを調べていたら、これが大事だということに気づいて。それでバンド名も調べてみたら、不運な画数だったんです、一画多いせいで(笑)。一画いらないなということで、いろいろ悩んでハイフンを取り、それで16画になったんですね。16画というのが最強の画数で、過去苦労してきた分がここから反転するということで、内容的にもよかったんですよね。

猪野:はははは(笑)!

山田:それがメンバー全員のLINEに送られてきました。

竹下:「改名するから」ってね。

加藤:僕は占いとかは信じてないんですけど、そこまで言うならいいかと。

──何か変化はありましたか?

竹下:こうしてフルアルバムが完成してリリースが決まったのは、きっとハイフンをとったおかげです(笑)。気持ちの問題もあると思うんですけどね。自分たちで一回立て直そうというのもあったし、2018年はいちばん曲を書いたんじゃないか?というくらいで。晴れて今回、15曲のセルフタイトルのアルバムを出すところまでこぎつけられたので、本当によかったなと思っています。

──なぜまた15周年を前にして自分たちの力でやろうというタイミングがきていたんですか?

竹下:まあ、ひとつは会社との関係性ですかね。IRabBitsというバンドは、曲を書いてリリースをするということが大事なことであるにもかかわらず、なかなかそれが踏み切れない状況になってしまったのが苦しかったんです。もちろんいろんな会社の事情があるし、すごくお世話になっていたんですけど。動きづらくなってしまったときに、これは違うなって思ったんですよね。

──それで、今ならば自分たちでやってもいいのではないかと。

竹下:そうですね。いろんなきっかけも重なって、“ここだ”っていうふうになったのが、2017年の11月でした。ちょうど前のアルバムのリリースツアーも終わって、次の作品の曲出しなどもしていたんですけど。そこでうまくいかないことが重なってきたんです。
▲『IRabBits』通常盤

──なかなかリリースできないとなったときは、ひたすらライブをするというような活動だったんですか?

竹下:ライブはしていましたね。もともとは、結成してから横浜駅前で路上ライブをはじめて。毎週水曜日は少なくとも路上に立って、かつライブハウスでもやって、作品をリリースをしたら全国ツアーがあって、年間100本から150本くらいは毎年ライブをしていたんです。だからライブをしなかったら、ちょっと大変だったかもしれない。

猪野:うん、難しいですけどね。結局はライブもままならなくなってしまって。総合的にうまくいかなくなってしまった時期があったんです。

──そうした時期にも曲自体はかなり作っていたんですか?

竹下:そうですね。前の会社の時から作り溜めていた曲もありました。そのタイミングで、今回のアルバムの1曲目の「This Is LOVESONG」がちょうど自分の中でできはじめたんです。これは大事に出したいなと思う曲だったんですよ。もちろん全部の曲が大事ですけど、この曲はきっと自分たちのステージを上げてくれる曲だという直感があって。そういうものがやっと書けたから、これを大事に出すのに最適な環境を整えようと思った結果が、一旦独立をするということだったんです。

──そうだったんですね。

竹下:独立して、自分たちで会場限定盤やシングルを出したりをしてみたんですけど、これがまた難しくて。独立をして自由になるイコール、大変さや苦しさも知って。やっぱり、いい環境で出してもらえる会社を探そうとなり、今に至るんです。

──そうやって自分たちでバンドのことをすべて動かしていくことは、IRabBitsとしては初めてのことだったんですね。

竹下:初めてですね。2018年は新人バンドのような気持ちで、すべてを自分たちでやりました。経験として、めちゃくちゃ良かったですけどね。それこそミュージックビデオ1本撮るのも本当に大変で。頭ハゲそうでした(笑)。

猪野:一応、ずっとやってきたコネクションがあるので、今やっていることを続けることはできたんです。でも、その先に何があるのかっていう話にもなってきちゃうので。もうひとつ、バンドとしての規模を上げたいというのが常にあるなかで、自分たちだけではちょっと限界があるな、とは1年やってみて感じることが多かったですね。
■“未完成”ができたんだから
■次は“完成形”の“あいのうた”だなって

──今回のリリースには、いい出会いがあったんですか?

竹下:そうです。これは山田祐大先生のおかげで(笑)。

山田:叔父の松崎しげるに話をしたんです。ただ自分も自分で、小さい頃から可愛がってもらっていた分、叔父に甘えたくないというか、迷惑をかけたくないなという思いもあったんです。でも以前からIRabBitsを知る方が、「バンドもここまで頑張ってきて、独立をして、今はなんでもできる状態なんだから、相談してみたら」とアドバイスをしてくれて。それで叔父に話したら、今の社長に話を繋げてくれたんです。

──バンドとしての意志と実力がしっかりとなかったら、いくら話をしてもらったところで実現できないでしょうし。

竹下:そうですね。“そこまでできる”と思う曲ができて、大事に出したいっていう気持ちがすごく高かったんです。最初に「This Is LOVESONG」の弾き語りのデモをメンバーに送ったときに、祐大が真っ先に「これはいけますね、電車で泣きました」っていうLINEをくれて。メンバーが泣いたってことは、これはいけるなっていうのが自分の中でもあったんですよね。そういう曲ができたというのは、大きかったですね。
──初の試みということで、加藤さんの「246」はどのように作っていったんですか。この曲はかなりギターをやりたい放題でやってますよね。

加藤:そうなんですよ。

猪野:「そうなんですよ」って(笑)。

加藤:せっかくですからね。ギターリフから考えていって。そのリフを考えるときにはリズムも一緒に考えるんですけど、打ち込んでは弾いてというのをひたすら繰り返して作り上げていきました。

──メタルっぽいフレーズもありますが、この曲には加藤さん自身のルーツ的なところも映っているんですか。

加藤:そういうわけではないんです。間奏部分に入れたメタルっぽいフレーズは、半分冗談で3パターンくらい作ってメンバーに聴かせたんですけど。“これ!”って即決でしたね。

猪野:全部良かったんですけど、ほかのフレーズは別の曲でもできるだろうなと。あのメタルリフはこの曲でしかできないだろうし、しかも、めちゃくちゃおもろいからこれにしようっていうことで。

竹下:そうやって遊んで作った曲のほうが、意外とライブで人気になるんですよねえ。

加藤:いや、遊んではないですよ(笑)。ギターだけは遊んでますけど。

竹下:しかもまさかの英語詞で上がってきたんですよね。なんで英語詞なの?

加藤:サビだけですけどね。ハマりが良かったんです。ライブでやって楽しいというのが、第一に考えました。

──山田さんの「Life is…」はどうですか。

山田:最初に、“1分くらいでわーっと盛り上がれる曲があったらいいな”という話があったんです。アルバムとしてボリュームもあるし。で、自分はもともと智さんとは逆に、ずっとメロコアやパンクをやってきて。最初のバンドでは、自分も曲を書いていて、全部英語詞だったんです。でも、IRabBitsで全部英語詞は違うなというのもあったので。日本語と英語を織り交ぜて作ろうかなと。メロディを作るのはすごく好きなので、人前では聴かせられないギターをぽろんと弾きながらメロディを作って、「あとはお願いします!」って、ドラムとコードとメロディが入ったデモをみんなに投げました。

猪野:智さんは逆にデモを作り込んでくるよね。“このベース、人間には弾けないんだけど!? ”っていうようなフレーズがたまに入っていたりする。

山田:ドラムも腕が3本ないと叩けないようなのがある。

加藤:デモはニュアンスを伝えるものなので、あとは自由にということで(笑)。

──猪野さんはデモをガッチリと作り上げるほうですか。

猪野:僕は、IRabBits以外でも編曲をしたりもしているので、そうですね。ただこのバンドのデモでは、ギターはコードしか弾かないし、ドラムも適当なフィルしか作らないし、あとは全員にポンと投げるだけですね。

竹下:全員がそれぞれのパートを入れるので。アレンジについては、データのやりとりででき上がりますね。昔はセッションでも作っていたんですけど、今は全員がPCでできるようになったし、時代も時代なので。早いです。
■3rdフルアルバム『IRabBits』

2019年8月7日発売

▲初回限定盤


▲通常盤


【初回限定盤(CD+DVD)】¥3,000(税別)
【通常盤(CD Only)】¥2,500(税別)
01. This Is LOVESONG
02. 宵ノ月
03. DKG1
04. ミスデモクラシー
05. 七光れ
06. ブラックホリデイ
07. TOP OF the15
08. 二十日恋
09. はじまりのハッピーエンド
10. 246
11. Mr.41
12. ミュージックスター
13. シアワセノカギ
14. Life is...
15. タイムレスヒーロー
▼DVD収録曲
『2019年4月開催ライブ<360度フロアライブ>』
01. ゴーインマイウェイ
02. ミスデモクラシー
03. 七光れ
04. This Is LOVESONG
05. 未完成なあいのうた


■『IRabBits』発売記念インストア情報

8月06日(火) タワーレコード 吉祥寺店
8月07日(水) タワーレコード 横浜ビブレ店
8月08日(木) HMV&BOOKS SHIBUYA 6F
8月09日(金) HMV ららぽーと柏の葉店
8月10日(土) タワーレコード 町田店
8月11日(日) タワーレコード 池袋店
8月12日(月・祝) タワーレコードららぽーとTOKYO-BAY店
8月14日(水) タワーレコード 藤沢オーパ店
8月16日(金) タワーレコード 八王子店
8月24日(土) タワーレコード 川崎店
8月25日(日) タワーレコード グランツリー武蔵小杉店
8月26日(月) タワーレコード ららぽーと立川立飛店2F日(屋外)
8月26日(月) タワーレコード ららぽーと立川立飛店2F日(店内)
8月29日(木) タワーレコード 西武東戸塚店
8月31日(土) 名古屋某所
9月01日(日) 金沢某所
9月07日(土) 高崎某所
and more…


■<“This Is IRabBits”TOUR 2019>

09月22日(日)千葉LOOK ※ワンマン
09月27日(金)鹿児島SR HALL
09月28日(土)福岡DRUM SON
10月08日(火)出雲APOLLO
10月09日(水)高松DIME
10月18日(金)金沢vanvan V4
10月25日(金)水戸LIGHT HOUSE
11月02日(土)豊橋club KNOT
11月08日(金)新潟club RIVERST
11月10日(日)盛岡the five morioka
11月11日(月)仙台MACANA
12月06日(金)大阪アメリカ村DROP
12月20日(金)名古屋ell.FITS ALL
12月28日(土)横浜BAYSIS
▼TOUR FINAL
2020年2月23日(日) 渋谷club QUATTRO ※ワンマン

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