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【yaiko インタビュー】
過去19年間を含めた“Beginning”

期待を裏切らないものでありつつ
未来を感じられるサウンドに

さて、その『Beginning』には先ほどお話をうかがった新曲「いつまでも続くブルー」の他、過去の楽曲が3曲収録されていますが、これはどういう基準で選曲されたのですか?

『Beginning』というミニアルバム自体、原点回帰の意味合いがあったので、私のスタート地点でもあるインディーズデビュー曲の「How?」は入れたいなと。あと、19年間活動してきて、今のところの私の名刺代わり的な曲かなと思ったのが「My Sweet Darlin’」。そして、20年間ライヴをやってきて、ライヴでお客さんが育ててくれた曲という印象が一番濃いのが「Life’s like a love song」なので、この3曲になりました。

いずれもドラムレスでアコースティックアレンジが施されていますが、これはどういう経緯なんですか?

2015年に初めて弾き語りツアー(『矢井田瞳 弾き語りTOUR2015~ヤイダヒトリ~』)をやらせてもらって、そこから何度かやってるんですけど、最初はめちゃくちゃ孤独を感じたし、怖かったんです。でも、いざツアーを回ってみると、まだまだアコギと歌には可能性があるって思えたし、自由度も高いと思ったし、改めてアコースティックギターと私というスタイルを掘り下げたいと思っていたところに、高高-takataka-のおふたりのサウンドに出会って。彼らのライヴを観ていると、ギターのボディを叩いてパーカッションみたいに使ったり、足元にはいろんな音が出るエフェクターがたくさんあったりして、“ここに私が入ったらもっともっと楽しいことが起こりそう!”と思ったのがきっかけですね。

今回収録された「How?」は少しサイケデリックサウンドっぽいところがあって、アコースティックギターでもこういうサウンドが作れるんだと思いましたし、オリジナルの「Life’s like a love song」にもサイケな感じはありますから、曲は違うものの、しっかりとサウンドにyaikoさんらしさが宿っていると感じたところではあります。

うんうん。「How?」は曲自体がギシギシとしたものを持っているから、アコースティックでやるとはいえ、曲の持っている雰囲気はそのまま引き継いで、高高-takataka-のおふたりもちょっとギターの音を歪ませて、エフェクティブなものをやってもらった感じでしたね。

オリジナルの「How?」はモロにオルタナな感じですけど、今回はエレキギターではないものの、あの感じを踏襲していると言いますか。あと、個人的にはアコースティックアレンジにすることで、情念みたいものが若干薄まっているような気はしました。オリジナル「How?」って歌詞も含めてすごく情熱的な楽曲じゃないですか。

ですね。すごくギラギラしてて、“この女の人、怖そう”って私も思います(笑)。

ははは。でも、今回はそこまでじゃないというか。

そうなんですよね。サウンドを聴きながら歌うので…やっぱりアレンジに呼ばれるメロディーっていっぱいあって、アレンジが変わると歌い方も変わると思うし、言葉の発音も単語のひとつひとつで変わるので、最終的に聴く印象が原曲よりもやわらかくなっているところはあると思います。

20年ものキャリアを重ねると、やはり表現力も大きくなるんだろうなと勝手に思っていたところではあります。その点で言えば、いい意味での変化をもっとも感じたのが「My Sweet Darlin’」で。メロディーは大きく変わってないですけど、ポップなアップチューンである原曲から、今回のバージョンはブルージーな雰囲気を漂わせていますよね? 随分と深みを増した感じです。

嬉しいです。この曲のリアレンジは正直言って相当プレッシャーがあって、ハードル高いなぁって感じていたというか(笑)。

みんながよく知ってる楽曲ですからね。

うん。サウンドプロデュースにGAKUさんが入ってくれたんですけれども、GAKUさんと高高-takataka-のおふたりと私とでリハスタに入って…それこそ「My Sweet Darlin’」って少なく見積もっても2,000回くらいは歌ってるんですよ。だから、私の中にこびりついた固定概念がすごくあるんです。なので、まずそれを外さないといけないと思ったし、GAKUさんには過去の楽曲のイメージを壊しつつ、ずっと聴いてくれていたファンの人の期待を裏切らないものでありつつ、新しく生まれ変わらせて、未来を感じられるサウンドにしてほしいとお願いして。それは“テンポをゆったりとしてバラードにしました”とか、“クラシック調にしました”とか、“ボサノバ調にしました”とかではなく。そういうリクエストをしましたね。

そのリクエストもかなりハードルが高い(笑)。

(笑)。でも、GAKUさんが原曲の「My Sweet Darlin’」のアレンジを脱がせて、曲自体が持っている強さを、また別の強さに生まれ変わらせた…みたいな感覚がありましたね。なので、すごく嬉しかったです。“サビは♪ザンザンザザザン〜って感じでやってみて”って言われてやってた時は、もう“これだっ!”って。

あと、「My Sweet Darlin’」は声が若返ってませんか? オリジナルよりも若い歌い手が歌っているような印象が個人的にあります。

あら(笑)。ありがとうございます!

「How?」とは違った意味でのやわらかさを感じましたね。で、続いては「Life's like a love song」ですが、これは北欧民謡っぽいですね。

うん。ケルトですよね。

オリジナルも不思議な感じでしたけど、楽器は変わってもその不思議な感じは変わってないような。

確かに。オリジナルはリバースの音がたくさん入っていたりして…まぁ、私としては不思議という感じはなかったんですけど(笑)、「Life's like a love song」はこの中では一番手こずったかな。というのも、リアレンジでコードもいじろうということでちょっとやってみたんですけど、原曲のコードの印象が強くて戻してみたり、そういったことがあったんです。だったら、原曲に抗わず、コードもいじらず、それでいて今の「Life's like a love song」になるようにと。自然な感じでやったら一番上手くいったという感じですかね。

なるほど。今のお話からは、yaikoさんご自身もそうですし、アレンジャー、演奏者を含めて、一曲一曲にかなり注力していたことがうかがえますね。

ただのセルフカバーにしたくなかったんで、そこは細心の注意を払いました。新曲の「いつまでも続くブルー」とテイストが合っているのもすごくいいなと思っています。

制作は「いつまでも続くブルー」からスタートしたんですか?

違うんですよ。このチーム…私とサウンドプロデュースのGAKUさんと高高-takataka-とでやることが決まって、取り掛かったのは過去曲が先だったんです。なので、「いつまでも続くブルー」を書き始めた頃にはこのチームでレコーディングできることが頭にあったので、それも大きかったかもしれないですね。演奏者を思い浮かべながら曲を書くというのはのちのち響くので。

どの曲もライヴを想定していると言いますか、観客に手を叩いてもらうのにぴったりな印象を受けたのですが、その辺は意識していましたか?

確かに4曲とも“ライヴでやる時はこうしようね”や“ライヴだったらアウトロでお客さんに歌ってもらえたら嬉しいね”とか、そういう会話がすごく自然に出てましたね。…うん、同時にライヴのことを考えながらやっていた感じです。

やっぱりずっとライヴをやってきたアーティストでありますから、その辺は自然と身に付いている感じでしょうね。

そこはデビュー当時と変わったことかもしれません。曲を作る時からライヴのことを考えられるようになったのは、デビューしてしばらく経ってからなので。デビュー当時はそこまで考えが及んでなくて…例えば、レコーディングではいくらでも音を重ねられるじゃないですか。だから、好き放題に重ねていた時期もあったんですけど、そういう時代を経て、今は重ねること以外のアイデアはないかというほうに考えがいきますね。そのほうが自然にライヴをすることができるし。きちんとライヴのことを考えられるようになってきたんだと思います。

取材:帆苅智之

ミニアルバム『Beginning』2019年8月14日発売 青空レコード/VAA
    • 【限定盤(DVD付)】
    • ZLCP-0381
    • ¥2,037(税抜)
    • 【通常盤】
    • ZLCP-0382
    • ¥1,389(税抜)
yaiko プロフィール

1978年7月28日大阪生まれ・A型。00年に青空レコードより関西地区限定シングル「Howling」でインディーズデビュー。その後、矢井田瞳名義で1st マキシシングル「B'coz I Love You」でメジャーデビュー。2ndシングル「My Sweet Darlin’」、1stアルバム『daiya-monde』がミリオンヒットを記録。その後も順調にリリースとツアーを重ね、19年8月に新作ミニアルバム『Beginning』をyaiko名義でリリース。yaiko オフィシャルHP

「My Sweet Darlin'」MV
(official Music Video long ver. )

OKMusic編集部

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