ズーカラデル「最終的に大切な事は、
良い曲を作る事」ーー1stフルアルバ
ムに込められた想いを紐解く

去年の秋に初めてズーカラデルをインタビューした時、緩やかなスピードながらも、全員しっかりと喋れるバンドだと思った。特にボーカルでフロントマンの吉田崇展は、物凄く丁寧に言葉を選ぶが、的確な言葉を持っているなとも感じた。だからこそ、今回の1stフルアルバム『ズーカラデル』を、どう捉えているかが気になっていた。いざ話してみると、既に色々とインタビューを受けているものの、前作のように話していく内に整理されておらず、まだ混乱している事を吉田は素直に明かしてくれた。それでも丁寧に言語化してくれて、取材を終える為にテープを止めようとしてからも、新たに思い浮かんだ事を吉田は言葉にしてくれて、山岸りょう(Dr)と鷲見こうた(Ba)も、その言葉に沿って付け足してくれていった。とても誠実なインタビューになっているので、是非とも読んで頂きたい。
――前作の『夢が醒めたら』で去年の秋にインタビューさせてもらいましたが、この約1年はいかがでしたか?
鷲見:思い返してみれば昔だなって思いますけど、体感的には早かったですね。「あれっていつだっけ??」みたいな感じですね。
吉田:ライブとレコーディングしかしてないですね。
鷲見:去年の11月にリリースして、年越して、レコーディングして、夏になったみたいな。
山岸:この1年が長いのか短いのかわからないですね。最中は短いし、でも振り返ってみたら長いし。
ズーカラデル
――去年秋のSPICEでのインタビューが、バンドにとっても、みなさんにとっても、人生初インタビューでしたが、その後、インタビューは慣れましたか?
吉田:相変わらず慣れはしないですね。おもしろいなとは思いますけど。
――インタビューしていく中で、自分にとって作品がどういうものか整理されていく利点があると思いますが、今回はいかがですか?
吉田:前回は、そんな感じでしたね。喋るたびに、作品が立体的になっていきましたから。でも、今回に関しては、インタビューで色々と話していく中でも、アルバムのイメージは変わってないですね。まだ、分かってないんでしょうね。理屈でいえば、ベストアルバム的な作品とは言えるんですが。このアルバムとは、こういうものというストンとした感じは、まだ無いですね。今回は混乱しっぱなしです。
ズーカラデル
――フルアルバムというのは、最初から決めていたのですか?
吉田:フルアルバムにしようと言い始めたタイミングがあって、それならば北海道でやってきた事を総括する時期にもなるので、古い曲も入れようとなりましたね。それとオアシスの『(What's the Story) Morning Glory?』やバンプ・オブ・チキンの『ユグドラシル』みたいな全部シングルみたいなフルアルバムが良いとは言っていて。そういう意味では、このベスト盤的な並びは、ちゃんと出来ているかなと思いますね。
山岸:前作が終わって、みんなで食事に行った時に言っていたね。
鷲見:そういうふうにならないと、フルアルバムという形式は取るべきじゃないとは思っていました。ただ曲を詰めただけではない、理由があるフルアルバムというか。「ヤバいやつを作りたい」と吉田も言っていましたし。それから、「来年(2019年)春には東京に出よう」となっていたので、我々が北海道で生活しながらリリースするアルバムとしては最後になるねとは話しました。今までのズーカラデルの、北海道の歴史がしっかり詰まったアルバムにしたいなと思ってましたね。吉田がズーカラデルを始める前の曲もあるし、名刺代わりのアルバムにしたいなって。そういう事からも、セルフタイトルに繋がっていきました。
山岸:その時は、そこまでズーカラデル自体を知ってもらっているというよりは、ズーカラデルの数曲を知ってもらってる感じでしたよね。僕らの持ち味は色んな面なので、数曲のイメージに偏らず、色んな面を知ってもらえるフルアルバムを出したいなとなりましたね。なので、セルフタイトルにしようとなったのも記憶しています。
吉田:コンセプトって訳じゃないですけど、腹を決めてセルフタイトルにしようと。ファーストアルバムがバンド名への憧れもありましたし。でも、「『ズーカラデル』って締まらないよね」とは話しました(笑)。ちゃんと過剰なもの、しっかりとわかりやすいものを作りたいとなったよね。
鷲見:一聴して良いものね。
ズーカラデル
―一発で良さが伝わる事は、とても大事ですよね。それから、実際、北海道から東京に引っ越してみて、どんな感じだったでしょうか?
山岸:まだ5月に引っ越したばかりで、その後、曲を作ってないので、特別変わった事は無いですね。
吉田:一昨日(取材日は7月22日)晩に東京みたいな曲が出始めましたね。
――東京の街に出てきたからこそ生まれる曲は絶対にあると思うので、すごく楽しみです。
鷲見:とにかく東京は人が多いですよね。札幌で遊んでいた友達や行きつけの店と離れてしまって、日常がつまらないものになってきたなって思いますね。まぁ、音楽をやるために東京への引っ越しを決めたので、そこはやはりスピード感が変わってるので、良かったなとは思いますけど。でも、普段の日常が生活の延長になるので、普段の日常が豊かじゃないといけないなって思いますね。過ごし方は定まった??
吉田・山岸:ハハハ(笑)。
吉田:そんなに今まででとブレてないよ。
山岸:そうだね。
吉田:生活していく中で世の中との関係性がフィルターを通して音楽になるので、環境の違いは間違いなく大きいとは思います。最近は国内でもしょうもない事がたくさん起きていて、色々と変えなきゃいけない事もあると感じていたので、そういう意味では今回の引っ越しともシンクロしてるのかとも思います。何かしら変化はあるんだろうなと、一昨日にも思いましたし。
ズーカラデル
――その変化というのを、もう少し具体的に教えてもらえますか?
吉田:客観的にみて、何かしら発信する人が社会を無視して能天気に明るく発信するのが絶対的正義という時代では無くなってきていますね。だからこそ、何か発信した方が、何か言った方がというのもわかりますが、何かを発信したり、何かを言う為に作品を作るのは不誠実だなと思いますね。最終的に大切な事は、良い曲を作る事ですから。作品は時代性を映すものにはなりますけど、何かのメッセージの為の音楽では無いですね。
山岸:いい事を言うな。
――すごくわかりやすかったです。後、今回はズーカラデル結成の前に作った楽曲も収録されていますが、当時の自身を振り返ったりしたものですか?
吉田:当時の自分を振り返る瞬間は無くて、ただ、やっぱり良い曲だなとかとは思いましたし、今の3人で録音できたのが凄く良かったです。このまま眠らすのは可哀想だなと曲に対しても思っていたので。
――古い曲は、どの曲になりますか?
吉田:「前夜」は、今までバンドではやっていない曲ですね。全部を説明しきるみたいな曲ではなくて、彫刻みたいな、そこにあるみたいな曲を作れたので、個人的には凄く良かったです。
ズーカラデル
――個人で作られていた曲なんですね。いつくらいの曲ですか?
吉田:2011年ですね。今の3人で録る事でアレンジがガラっと変わりましたけど、やっぱり良い曲ですね。
――個人的に、「前夜」がこのアルバムで一番好きなんですけど、最後に入っているのも良いですよね。
吉田:一番最後に入れようと言い出したのは、山岸ですね。
山岸:古い曲だから一番最後に入れたとかではなく、最後にふさわしい続く感じがあったんですよね」
鷲見:僕も古い曲は意識してなくて、どれも新曲のつもりで挑みましたね。「生活」とか「光のまち」は、吉田崇展とズーカラデル名義の時代のデモCDに入っていたんですよ。2016年に200枚くらいしか出てなくて、その頃はメンバーじゃないので、普通に聴いている側でしたね。200枚しか世に出ていないものを、もう1回きれいな音で録れたのは良かったです。何よりも楽曲が良いのが素晴らしいですよ。
吉田:バンド組んでから、やりたいけど出来ないなと思う事はよくあったんですけど、今回は、この3人で出来るおもしろさにフォーカスできましたね。そのあたりの発想は昔と変わりました。出来る事しか出来ないと思えるようになりましたね。大人になったのかな。
――そう思えるようになっても、レコーディングしていく中で大変さはありましたか?
吉田:新曲はプレッシャーと戦いましたし、その中でも「イエス」は生みの苦しみがありましたね。ああでもない、こうでもないとパターンを作っていきながら、ようやく最後の形に辿り着けました。歌詞もギリギリまで完成していなかったですね。疾走感という身も蓋もない高いテンションで乗りきるというよりは、ここは絶対この音という確信を持って作れました。最終的には最初に考えていたのと似ていますが、ベクトルは変わってますね。
――今作がリリースされたばかりですが、次というのは既に考えておられますか?
吉田:形態とかは、これから相談していきますが、色々な事が出来るなとは思っています。「ズーカラデルって、こうだよね」という軽快でアップテンポな感じであったりとか、ドバラードであったりとか、もっと攻撃的な変な曲とかも出来るかなって。『ズーカラデル』というアルバムを今回出してみて、良い曲を作ったら、受け止めてもらえるとは思っています。今は根っこな部分はたくさんあって、今後ググッと結合していく瞬間があったらいいですね。
――メンバーとは共有しているのですか?
吉田:メンバーとは共有していないですね。
ズーカラデル
――個人的には、めちゃくちゃドバラードが気になります。
吉田:めちゃくちゃ良いですよ!
山岸:スタジオでちょっと合わせたりはしますけど、まだドバラードは聴いていないですね。
吉田:「●●●●」なんだけど。
山岸・鷲見:ああ!!
――記事では伏せ字にしてしまいますが、その仮タイトル名が、まためちゃくちゃ気になりますね!
鷲見:3人で合わせた事が1回ありますね。ストック曲自体がたくさんありますし、まだ手つけていない曲たくさんありますから。今回入らなかった曲がたくさんあって、次どうするかという楽しみがありますね。
――とにかく東京で生活し始めてから、一発目の作品を本当に楽しみにしています。
取材・文=鈴木淳史 撮影=河上良

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