浜中文一×水崎綾女インタビュー エ
ロティックで笑えるミュージカル『5
0Shades!(フィフティシェイズ!)
~クリスチャン・グレイの歪んだ性癖
~』の危険な魅力

2016年の日本初演時、R15指定の過激な作品として注目を集めたエロティックコメディミュージカル『50Shades!(フィフティシェイズ!)~クリスチャン・グレイの歪んだ性癖~』(以下、『50Shades!』)。危険な魅力たっぷりの本作が、河原雅彦(上演台本・訳詞・演出)と浜中文一のタッグで3年ぶりに蘇る。
ミュージカル『50Shades!』は、イギリスの官能小説「50Shades of Grey」がオフ・ブロードウェイでパロディ化されたもの。原作は世界で1億冊を超える大ベストセラー官能小説となり、映画版も女性を中心に熱い支持を集めた。小説と映画ではサディストな若い青年実業家・グレイと恋愛未経験の純粋な女子大生・アナという二人の歪な恋愛模様が、緊張感漂うシリアスな雰囲気で描かれている。一方、ミュージカル『50Shades!』でのグレイとアナの描かれ方はまるで正反対。とある主婦たちが刺激を求めて官能小説「50Shades of Grey」を読み進めると、小説の中のキャラクターが劇中劇で現れ、過激な恋愛シーンがバカバカしいコメディタッチで繰り広げられるという演出だ。
今回の再演では、演技派俳優として着々と活動の場を広げる浜中文一が主演を続投。そこに、映画を中心に活躍中の実力派女優・水崎綾女をはじめ、シルビア・グラブ、野口かおる、青木さやか、福田転球、レディビアード、カイル・カード他、個性的かつユーモアに溢れた役者陣が新たに加わる。
本作のビジュアル撮影が行われる都内スタジオで、この日が初対面だという浜中と水崎へのインタビューが開催された。手錠や首輪といった怪しげな小道具に囲まれながら、それぞれの作品への想いを語ってもらった。
「キャストは、ほんま集まらんかと思いました」(浜中)
ーー初演から3年ぶりの再演となる本作。二度目の出演となる浜中さんの今のお気持ちを聞かせてください。
浜中:早く再演したいなと思っていた作品なので嬉しいです。河原さんが再演をどういう形で考えているのかまだわかりませんが、めっちゃ楽しみですね。
ーー今回初参加となる水崎さんにお伺いします。かなり過激な作品だと思うのですが、出演を決めた理由は?
水崎:元々映画の「50Shades of Grey」を見て知っていたので、お話をいただいてすぐに「やりたいです」と答えました。映画のようなシリアスなお話なのかなと思っていたのですが、そのあとでミュージカル版の映像を見せていただいたんです。そうしたら面白くて楽曲も良くて、とにかく楽しい作品で。さらにやりたいという気持ちが強くなりました。
ーー水崎さんは久しぶりの舞台出演、さらに初のミュージカル出演となりますね。その点についてはいかがですか?
水崎:デビュー16年目にして初のミュージカルなので、すごいプレッシャーです。歌は普段お風呂で歌うくらいなので(笑)。お仕事となると、毎回120点を出さなきゃいけないですよね。その点、どう対処していったらいいのかが本当に未知過ぎて……。初演に出られていた浜中さんや、キャストの皆さんに声の出し方のコツを聞いて頑張りたいと思います。
あとは怪我をしないようにしたいですね。以前、本番中に前歯を折ったことがあったんです。今回の舞台も怪我に注意しつつ、ライブ感を楽しめたらなと思います。
ーー主演の浜中さん以外はキャストが一新されるようですが、新キャストの皆さんに対してどんな印象をお持ちですか?
浜中:今回のキャストは僕も初共演の方ばかり。まだ全員とはお会いしていないんですけど、結構強烈な人がいるなあという印象です。でも、出演したいと皆さんが思って下さってよかったなと思います。ほんま集まらんかと思いましたよ。特にヒロインは大変な役なので……。
(水崎さんに対して)すみません。最初に謝っておきますね。
水崎:あはは(笑)。
ーーそんなヒロインを演じられる水崎さんは、河原さんの演出は初めてですよね?
水崎:演出は初めてです。でも、一度だけ歌稽古でお会いしました。
ーーその際、何かお話はされましたか?
水崎:「いいんですか?」と何回も聞かれました(笑)。会って最初に「本当にいいんですか?」と聞かれて、歌稽古のあとに「僕は出ていただけたらと思っているんですけど……いいんですか?」とさらに確認が(笑)。河原さんや浜中さんはじめ、周りの皆さんから気を遣っていただきますが、私としては楽しみの方が勝っています。
河原さんはすごくクリエイティブな方だなと思っているので、演出を受けるのが楽しみです。私は普段映像のお仕事が多いので、映画と舞台の表現の違いや、舞台上でどこまでやったらいいのかといったことが自分では分からない部分もあり、河原さんについていけたらな、と。
舞台はお客様の生の反応を見ることができるということが、演者として楽しいところ。ただ、映画と違ってNGを出してはいけないというか、NGを出してもそれをNGにさせないという難しさがありますね。
ーー浜中さんは、初演時の稽古場での河原さんについて印象に残っていることはありますか?
浜中:稽古場では河原さんが思いついたエロいことを言って、ニヤニヤしていた印象しかないです(笑)。でも、思いついたアイディアを組み込むセンス、と言うんでしょうか。面白いエロに仕上げたのは、やっぱりさすがだなと思いましたね。
浜中文一
過激なセリフに気をつけて
ーーお二人が演じるのは、サディストの青年実業家・グレイと、そんな彼に調教されて未知の世界に足を踏み入れる女子大生・アナというかなり濃いキャラクター。それぞれどんな風に役作りをしたいと考えていますか?
浜中:初演時のことは一旦忘れて、一から河原さんと皆で作っていきたいなと思っています。
水崎:私は見た目がSっぽいのでSな役が多いんですけど、実際は多分M寄り。アナは根本的には自分に近い役だと思うので、あまり気負わずにできるかなと思います。ただ、まだちょっと羞恥心があるので、稽古期間中にその羞恥心をどれだけ減らせるのかという……。
ーー初演時、浜中さんは過激なセリフを言うことに慣れるまで時間はかかりましたか?
浜中:いや、全然恥ずかしくなかったです。意外と言えるもんですよ。逆に気をつけた方がいいのは、慣れて外でセリフを言っちゃうこと。劇中では人前で普段言わないワードを大声で叫んだりするので。
水崎:私は歩いてブツブツ言いながらセリフを覚えるタイプなので、今回の作品でやったらちょっとやばいやつですね(笑)。
浜中:歌も外では口ずさまない方がいいですね。気をつけてください。
ーーそうなると、公園など公の場でセリフを覚えるといったこともできないですね。
浜中:それは絶対ダメですね。
水崎:でも家で練習しても、隣の家の人に聞こえてしまったら何してるんだろうと思われますよね。
浜中:本当に危ない作品ですよ(笑)
エロくて笑えるだけじゃない!ライブ感が魅力のステージ
ーー初演を観た方からは「中毒性がある」という感想も聞きますが、本作の持つ魅力はどんなところだと思いますか?
浜中:音楽がかっこいいというのはありますね。初演の時はバンドの皆さんが本番が始まる前から生演奏で盛り上げてくれて、演じる僕らもやりやすかったという記憶があります。
あと、お客さんとの距離が近いということ。劇中で、キャストはそれぞれ河原さんから地獄のような時間をプレゼントされるんですけど、そのときに客席がくすりともしない様子とかがめちゃくちゃ伝わってくるんです。演じる側にとって、それはある意味すごく魅力的だと思います。観ている人も逆にそれが面白いかもしれないですね。歌も芝居もその公演だけのライブ感があるので、何度来ても楽しい作品です。
水崎:生バンドがすごく楽しみです! やっぱり生で演奏があると、演じる側もやりやすいんじゃないでしょうか。私は経験したことがないんですけど、相乗効果でより良いものができるのかな、と。
それに、コメディなのでシリアスな映画版よりも見やすいと思います。歌もすごく良かったです。思わず口ずさんじゃうような。(歌詞が過激だから)ダメなんですけどね(笑)。
ーー最後に、改めて本作への意気込みを聞かせてください。
水崎:とにかく皆さんの足を引っ張らないようにしたいということと、初めてのミュージカルなのでしっかり歌が届けられたらいいな、と。
女性のお客様もたくさん観に来てくださると思うので、私が演じるアナという役にご自身を投影していただき、浜中さんに調教されるのを想像してもらういい機会になったらなと思います(笑)。老若男女楽しめる作品ですので、色々な方が観に来てくれたら嬉しいです。
浜中:(水崎さんに対して)そんなに気負ってやるような舞台ではないですよ。僕も初演時は本番中にアドリブを言ったせいで肝心の歌が飛んだりしていましたし…(笑)
この舞台は稽古場で河原さんからお題を出されて、本当にいろんなことをやらされます。僕は二度目になりますが、新しいキャストの方々と一緒にまた一からその無茶ぶりに対応して頑張っていきたいです。
水崎:どんなことがあっても、座長(浜中さん)についていきます!
浜中:大丈夫です。僕は河原さんのせいにするので。全ては、河原雅彦の責任です(笑)。
取材・文=松村蘭(らんねえ)

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