デジタル機器を駆使して、
一般リスナーにファンクを浸透させた
ザップの『ザップ!』
本作『ザップ!』について
本作はアルバムチャートでも1位になる。彼らのサウンドは一見すると新しく聴こえるのだが、実はブルース、R&B、ソウル、ジャズなどのルーツ系音楽へのリスペクトを忘れないそのスタンスこそが彼らの音楽の肝だと思うのだ。アンログからデジタルへと変遷する時代にあって、彼らの音楽は10年ほどで消えていくことになる。しかし、彼らの音楽が90年以降の黒人音楽に与えた影響は決して少なくない。
収録曲は全部で6曲。アルバム全編、時代の寵児とも言える革新的な音が詰まっている。全米R&Bチャートで2位になった冒頭の「気分はザッピー」は10分近い長さで、トークボックスとシンセ&打ち込みが満載なので、アンドロイドのような仕上がりになっているかと思いきや、意外と泥臭いサウンドで驚かされる。ゴスペル、ブルース、ソウル、ジャズなど、ロジャーがさまざまなルーツ系サウンドを骨肉化し実験的に取り入れていることが奏功したのだろう。
続く「フリーダム」は自主制作盤の曲の再演で(違う曲のようなアレンジだ)、ロジャーのギターのオクターブ奏法と延々と繰り返されるベースのフレーズが独特のクールさを生んでいる。3曲目の「ブラン・ニュー・Pプレイヤー」は2019年のR&Bといっても通用するぐらい新しい感覚のナンバーだ。多声によるコール&レスポンス、ジャジーなサックス、カントリーテイストのあるマウスハープ、ロック的な荒々しいギターとブルージーなジャズギターが同居(片方のギターはブーツィーかもしれない)するなど、聴きどころの多い凝った作りである。
後半3曲(LPではB面)はゆったりめの曲が揃っており、コーラスを含め複数のシンガーによるヴォーカルに癒やされる。「ファンキー・バウンス」は複数のトークボックス、スラップベース、隙間を埋める何台ものギター、シンドラムなどが登場するのだが、名曲「ビー・オーライト」と同様、後半にオールマンブラザーズのようなレイドバックしたツインギターソロが聴ける。このエピソードで、いかにロジャーの守備範囲が広いかが分かってもらえると思う。
本作の最後を飾る「カミング・ホーム」はシャッフルナンバーで、ファンクというよりはポップソウルに近い。ただ、曲の作り自体は泥臭く、躍動感のあるコーラスやアドリブ主体のギターワークはロック的だ。
最後に
TEXT:河崎直人