【RIZIN.18開催直前見どころ記事(前
篇)】“RIZIN&ベラトール世界2冠王
”堀口恭司凱旋!新星・朝倉海が“世
界”に挑む名古屋決戦!

■RIZIN・ベラトール世界2冠達成
現地時間6月14日、日本格闘技史に残る偉業が成し遂げられた。
格闘技だけでなくあらゆるエンターテイメントの殿堂である米ニューヨークのマジソン・スクエア・ガーデン(MSG)で、ベラトール世界バンタム級タイトルマッチに臨んだ堀口恭司は王者ダリオン・コールドウェルを判定で撃破。保持するRIZIN同級王座との世界2冠に輝いた。
■伝統派空手+山本KIDの遺伝子
幼少より伝統派空手を学んだ堀口は、山本“KID”徳郁に憧れ、高校を卒業するとKIDが主宰するKRAZY BEEへ入門。総合でもすぐに頭角を現し、2010年にプロデビューすると空手由来の打撃と爆発力を見せ、13年に修斗世界フェザー級王座を獲得。世界の頂点を目指し、同年からUFC参戦を開始する。
ここでも連勝を見せた堀口は後にUFCの最多王座防衛記録を樹立するデメトリアス・ジョンソンが持つ世界フライ級王座に挑戦(15年4月)。この一戦は腕十字を極められ惜しくも5Rに敗れたが、強さへの思いを強めた堀口はさらなる練習環境を求め、米フロリダを拠点とするアメリカントップチーム(ATT)に移籍。DJ戦の後から現在まで約4年、13連勝と勢いを増すとともに敗北を喫していない。
■日本格闘技界隆盛のためRIZIN参戦へ
デメトリアスへの再挑戦と王座奪取が期待された堀口だが、UFCフライ級の試合機会は減じており、師であるKIDが果たしたように日本の格闘技を盛り上げるため、堀口は日本への帰還とRIZINへの参戦を決意する(17年4月)。
堀口の存在を得てRIZINはバンタム級グランプリを開催する(17年7月~12月)。包囲網を敷かれた堀口であったが、ここで頭一つ抜けた強さを見せ、全試合を一本あるいはKOという完勝でトーナメントを制覇。UFCでは鳴りを潜めた、修斗時代の爆発的な試合ぶりが戻ってきた。
■“神童”那須川天心との一戦へ
翌18年となっても堀口の勢いは止まらない。初戦となった5月のイアン・マッコール戦ではUFCランカーであったマッコールをKIDを彷彿させる9秒ノックアウト。修斗王座を争った因縁の相手・扇久保博正を続けて退けると、なんと“神童”那須川天心とのキックルール戦が実現する。名だたる立ち技選手であっても一方的に降してきた那須川だけに、さすがに堀口も不利の予想が大半を占めたが、2Rまで互角以上に渡り合い、有効な被弾は3Rに喫した胴回し回転蹴りにとどめて判定負け。初挑戦のキックルールながら、試合後は神童・那須川を「人でした」と語るなど、敗れてなお堀口恐るべしの印象を残した。
■ベラトール最強王者に2連勝
18年末には新設されたRIZINバンタム級王座を争い、ベラトール王者であるコールドウェルと対戦。レスリングの猛者で178cmという長身を誇るコールドウェルに苦戦を強いられるが、タックルでテイクダウンを喫しても立ち上がる動きで徐々に体力を削り、3Rに秘密兵器というべきギロチンチョークを極めて一本勝ち。会場を爆発させた。
王者でありながらアウェーの日本へ乗り込んだコールドウェルに敬意を表するように、堀口は今年6月、今度はベラトールへ参戦。コールドウェルのリベンジを受けるとともに、保持するベラトール王座へ挑んだ。コールドウェルにとってのホーム、さらに本領を発揮できる金網での戦いとなり、堀口不利の声が聞かれたが、やはり前戦のよ勝利一本こそ奪えなかったが尻餅をついた状態からコツコツとパンチ・ヒジを打ち込み判定勝利。UFCと並ぶ米メジャー団体ベラトールの王座を奪取する偉業を果たした。
■アウトサイダーからRIZINの星へ――朝倉海
今回はそんな堀口にとっていわば凱旋試合。2冠王としての強さを見せつける大会で朝倉海(かい)を相手に迎える。
朝倉は実の兄である未来(みくる)とともに前田日明主催の大会「ジ・アウトサイダー」出身の選手。兄・未来は喧嘩で無類の強さを誇ったが、同じ血を持つ海も立ち技・寝技を問わないアグレッシブなスタイルと強さで、アウトサイダーの王者に就くなど早くから注目を集めてきた。
その強さはアウトサイダーで収まらず、16年から韓国ROAD FCにも出場を始めるとここでも連勝。しかし17年6月、ムン・ジェフンにプロで初の敗北を喫すると、格闘技に専念することを決め、地元の豊橋市を離れ兄とともに上京する。
そして17年12月に大舞台RIZINの出場が決定。当初伊藤盛一郎との対戦が予定されたが、伊藤が直前で負傷し大会を欠場。急遽出場の決まったK-1出身のストライカー・才賀紀左衛門と対戦した。戦前から寝技だけでなく打撃においても自身が上と自信を見せた朝倉は、その言葉通りに才賀を2Rノックアウト。そのポテンシャルを広く知らしめた。
続く18年は3試合を消化。バンタム級グランプリにおいて最も堀口を手こずらせたアンゴラの新星マネル・ケイプを僅差で退けると(5月)、トップノイ・タイガームエタイも判定で下し(9月)、2年半前に敗れたムン・ジェフンにも大晦日に判定勝ちでリベンジを果たした。
■“最強”堀口戦に大抜擢
19年は堀口と同世代で日本軽量級を引っ張ってきたトップファイター・佐々木憂流迦との対戦が4月に組まれるも、佐々木が内臓疾患で欠場となり試合が消滅。6月の試合に臨む予定であった朝倉だが今度は自身が練習中に眼窩底骨折となり無念の欠場。どうにも運に恵まれず8月の今大会にして今年初戦となるが、ここで“最強”の座にある堀口との対戦というビッグチャンスを得た。
世界中の賞金首となる一方、対戦相手探しが難航する立場となった堀口だが、二冠達成後「堀口恭司と戦いたいっていう選手、ぜひ名乗りを上げてください」と呼び掛けていた。これに対し名乗りを上げたのが朝倉で、対戦発表の会見でも「『お前じゃまだ早い』という声がありました。そう言われても仕方ないですけど、RIZINに出た時からチャンピオンを目標にして世界のトップになるためやって来たので、チャンスがあるなら迷わずやらせてくださいと言いました。全てを懸けて戦います。試合、結果で証明します」と語った。
その意気やよし。最強を目指し、強いものと戦ってこその格闘家。アウトサイダー出身ということで実力を疑問視されることもあった朝倉兄弟だが、兄・未来はRIZIN登場から無傷の5連勝。直近の「RIZIN.17」では矢地祐介との日本人対決を制し、中量級エースの座に君臨している。海も不利の予想が圧倒的な堀口戦だが、ここで“最強”堀口に土をつけるようなことがあれば、まさしく世界に衝撃を与えることになる。
■順当に終わるか、世界を揺るがすか
折しもRIZINバンタム級では、堀口と対戦・因縁を持つバンタム級四天王による“堀口争奪戦”ともいうべき戦いが7月からスタート。佐々木憂流迦に一本勝ちした石渡伸太郎と、元谷友貴に競り勝った扇久保博正の対戦の気運が高まり、さらに佐々木vs元谷戦も実現が期待され、盛り上がりを見せている。
朝倉はこの争奪戦に加わることなく飛び級で堀口戦のチャンスを得た形だが、この序列自体をいきなり破壊してしまうのか、あるいは実力を示し四天王より上の位置に割って入るか、やはり時期尚早だったと評価を降されるのか……
堀口が30戦のキャリアで喫した敗北は上田将勝戦(12年1月)とデメトリアス戦(15年1月)の2試合。いずれも組み技の展開で後れを取っての敗戦だったが、その後ATTに移籍しての取り組みでこの課題は克服。全米屈指のレスラー・コールドウェルをしても攻略できなかったことからも明らかなように、弱点は確実にふさがっている。
では、空手由来の打撃パワーと独自の間合いが最大の強みである堀口に対し、朝倉が恐れることなく踏み込んで強打を打ち込むことができればあるいは――
順当に終わるか番狂わせが見られるか。夏の名古屋で決戦が待つ。
(文:長谷川 亮)
『GOOD SPEED presents RIZIN.18』は8月18日(日)開催

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