財木琢磨・古田一紀・田中日奈子らが
生演奏に挑む 舞台『この音とまれ!
』ゲネプロ&囲み取材レポート

「この音とまれ!」は、「ジャンプスクエア」において2012年より連載している人気コミックス。「箏(こと)」に情熱を注ぐ高校生たちの青春を描いた本作は多くのファンを獲得しており、2019年4月~6月に放映されたアニメ第1期も好評を博した。10月からは第2期の放送も決定しており、ますます注目が高まっている。
そんな本作の舞台化作品、『この音とまれ!』が2019年8月17日(土)から東京公演が始まる。開幕に先駆けて行われた、囲み取材とゲネプロの様子をお届けしよう。
囲み取材に登壇したのは、財木琢磨・古田一紀・田中日奈子・塩田康平・小島ことり・上仁樹・小沼将太のメインキャスト7名と脚本・演出家の伊勢直弘。東京公演に向けての意気込みと本作の見どころをそれぞれ語ってくれた。
財木:原作を読んで“届け”という言葉がすごく印象的でした。この言葉をすごく大事に、この舞台・この作品を皆さんに届けという気持ちで最後まで駆け抜けたいです。見所は、生演奏はもちろんですがその前の緊張感がすごくリアルなこと。お客様も生徒になった気持ちで観ていただきたいと思っています。リアルな緊張感を体感してほしいです。
古田:今日に至るまで自分の中でいろんなことを考えて、咀嚼して、何回も何回も頭の中でイメージして、体にグッと入った状態になったので、あんまり緊張していないというか……すごく緊張しています(笑)。
田中:この物語はそれぞれが人としてワンランク上に成長していく物語でもあると思っています。なので私自身もこの舞台を通して人としても成長できたらなと思って演じています。見所は、生演奏もそうですが、その前の物語があっての生演奏、それがあっての緊張感、その後の物語とすごく繋がっているので、物語の部分も大事に見て、それから生演奏を見るともっとグッとくるものがあると思います。
塩田:僕らは高校生で、高校生ゆえの言葉のストレートさがある。原作はとても言葉の力が強く、読んでいるだけでグッとくるシーンがたくさんあるので、それを高校生ならではのど直球さでしっかり伝えて、ドキドキしてもらえたら。あと、本だと表現で見える演奏シーンですが、本当の音で、波打っているところが見えるといいなと思って演奏しているので、ぜひ楽しんで聞いてほしいです。
小島:本当に原作のお話が好きで、これだけ人と人との思いがいろんな形に繋がりながら、それでもまたぶつかって、また繋がってと、人と人との繋がりが大切に描かれている作品だなと思っています。もちろんここにいる箏曲部メンバーもですけど、この作品に関わっている全ての人の思いを繋ぎながら、最後まで駆け抜けていけたらと思っています。見所としては、もちろん生演奏もですけど、そこにいくまでの、各々のキャラクターがどんなふうに出会って、そこでどんなことを感じて、この人たちは先に進んでいくんだろうっていうことを大事に思いながら演じているので、そういったみんなの思いが先に繋がって最後まで行けるように頑張りたいです。
上仁:言いたいことは皆さんがほとんど言ってくれたので(笑)、僕は意気込みを。光太として、舞台上で元気よく、皆さんに笑顔を振り分けられるように頑張っていきますのでよろしくお願いします!
小沼:この舞台が始まる前にみんなで横断幕に一言書いたんですけど、僕はそこに“絆”って書いたんです。原作のキャラが仲良くなっていくのって演奏前くらいで、そこからどんどん仲良くなっていく絆が大事だと思っていて。今回この舞台もロングランになっていくので、やっていくうえで、自分たち役者も絆を深めて、千秋楽まで怪我なくやりきりたいと思っています。
伊勢:こうやって書き起こした青春群像劇ではありますけども、スタッフ・キャスト一同この作品が大好きで、この”大好き”が会場で伝播していけば良いなと思っています。彼ら本当にぶつかって悩んで、いろいろ壁に当たってそれを乗り越えて成長していくっていう、今日の時点ですごく成長してくれています。これからも楽しみにしているので、個人的にそれを応援していこうと思います。あとみんな“生演奏”と言っているので要約しますと、この物語のクライマックス、全校集会という形で彼らが箏の生演奏をします。会場にお越しの皆さんも、全校集会に来た気分で見届けてやっていただければ、彼らの想いの詰まった音を堪能していただけると思いますので、ぜひ彼らの生き様を聴きに来てください」
その後の質疑応答では、初めて箏に触れた時の感想を聞かれ、メインキャストの中では唯一箏を弾かない高岡役の小沼が「そうですねぇ」と口火を切り、塩田をはじめとする箏曲部メンバーから「弾いてから言え!」と突っ込まれる、和気藹々としたやりとりも。
財木は「僕と田中さんが最初で、とにかくできるか? っていう疑問がありました。音は鳴るけど正解の音かもわからないし。まず“龍星群”っていう曲を動画サイトで見たんですけど、それがすさまじくて、とても弾けるもんかと思いました」としみじみ話し、小島や上仁が「弾けるもんか?」「弾けてたまるかと」と茶化す。
家元出身の箏奏者・さとわ役として唯一種類の違う箏を奏でる田中も、「最初は十三絃から入って、三十分後くらいにはいじゃあこっち、ってすぐ十七絃に移ったので動揺しました。私は彼らを支える音が出せるかってまずパニックになって、曲を聴いて、楽譜とにらめっこしても最初はビジョンも浮かばなくて、大丈夫かなぁっていうのが正直な感想です」と苦労を語り、部長・武蔵役の古田も「血豆の潰し方を調べて、針で刺すんですけど……」と、弦楽器ならではの大変さに言及。しばらく血豆について語り、みんなからツッコミを受けるが、「弾いているうちに指が硬くなって、いずれいい音が出せるようになるんだよ、っていう台詞をすごく実感を持って言えるようになった」と、生演奏をするための努力が演技に深みとリアルさを与えていることをアピールしていた。
また、生演奏で披露される「龍星群」には、愛とさとわのソロパートがある。自信のほどを聞かれた財木は「ソロを任されるというのはすごく大役。もう本当に、自分のソロがめちゃくちゃ好きで、弾き方とかも聞いたり。音に気持ちを乗せるっていうのは最初わからなかったけど、芝居の稽古をするようになってから段々と感覚がわかってきた気がして、それを本番で出せたらいいなと思います。じいちゃんに語りかけるような気持ちでやりたいです」と、自らのソロパートへの愛と熱意を語ってくれた。田中は「私は愛と変わって、孤独な暗い面を表現する音程・リズムをやっているので、どちらかというと自分の気持ちに沈み込むように、深い海のそこに沈み込むようにっていうイメージを持ちつつ、後半ではみんなが入ってくるので、前向きな部分も音で表現しなくちゃいけない。ちょっと難しいけど、音だけじゃなくて弾き方とか佇まいでもだせるように頑張っています」と、部を引っ張る奏者らしいコメント。
最後に、稽古中のエピソードを聞かれると、各々考え込む。塩田が「みっつ役の小島くん、この風貌通り自分でお菓子を作って持ってきてくれて」と話すと、田中も「美味しかった!」と笑顔を見せる。一人、財木だけは「それ知らない……」と困惑し、「いなかったんだっけ」「じゃあ明日作ってきてもらおう」と、部室のような賑やかさに。また、上仁は自らが演じる光太と同じくリズムを取れずに苦労したことが塩田によって暴露され、「その上での完成を本編で見てもらえれば」と、生演奏への期待を煽ってくれた。

〈STORY〉
先輩たちが卒業してただ一人の部員となり、廃部寸前の時瀬高校箏曲部(そうきょくぶ)を守ろうとする倉田武蔵(くらた たけぞう)のもとに、入部希望者が現れる。
上級生にすら恐れられる不良少年だが心根は優しく仲間思いの久遠愛(くどお ちか)。そして、箏の家元『鳳月会』の出身で天才的な箏の奏者、鳳月さとわ(ほうづき さとわ)。
とある理由から入部したいという2人に、さらに愛の中学時代からの仲間であるサネ、コータ、みっつを加え、箏曲部は新たに始動するが、愛たちを不良として警戒する教頭から、部の存続を認めてもらえずにいた。そこで、さとわは廃部を免れる条件として、半分以上素人である彼らが一ヶ月後の全校集会で学生全員を納得させる演奏を披露することを提案する。
それぞれの思い、それぞれの事情を抱えながら、箏曲部存続の為に全員で立ち向かう。
響け—。
不器用で誤解されやすい彼らの、もう一つの言葉。
意気込みでキャスト陣が語った通り、登場人物一人ひとりが抱える思いや悩みが物語の見所の一つだ。部の中心である武蔵、愛、さとわは三人とも言葉が足りずにぶつかり合い、回り道をしながら少しずつ距離を縮めていく。そして、そんな彼らに寄り添い、支えてくれる仲間や大人たちの存在があたたかい。

不器用だが真っ直ぐな彼らの姿や言葉、そして、彼らの想いを汲み取り見守る愛の祖父・源や静音といった理解者に胸が熱くなるシーンも多い。
人との出会い、箏との出会いで成長していく彼らの眩しさに、自らの青春時時代を懐かしく思い出す方もいるのではないだろうか。
そして、クライマックスであり最大の見せ場が、箏曲部キャストによる生演奏シーン。半年に及ぶ稽古を経て、彼ら自身が、全校集会で披露する「龍星群」を奏でる。
力強く迫力のある音色と凛とした佇まいには、生演奏ならではの説得力がある。アイコンタクトを取り、呼吸を合わせて演奏する様子からは、静かな緊張感と彼らの情熱がひしひしと伝わってきた。
冒頭からラストまで、箏曲部の面々が衝突し、悩み、助け合いながら成長してきた様子を見ている観客は、きっと固唾を飲んで彼らの演奏を見守ってしまうはず。
そして、彼らの思いと情熱がこもった演奏に、きっと魂を揺さぶられるはずだ。
東京公演は全労災ホール/スペース・ゼロにて2019年8月17日(土)~25日(日)まで上演。
(C)アミュー/集英社・舞台「この音とまれ!」製作委員会

アーティスト

SPICE

SPICE(スパイス)は、音楽、クラシック、舞台、アニメ・ゲーム、イベント・レジャー、映画、アートのニュースやレポート、インタビューやコラム、動画などHOTなコンテンツをお届けするエンターテイメント特化型情報メディアです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着