箏曲部の生演奏にも高まる期待 舞台
『この音とまれ!』財木琢磨&田中日
奈子インタビュー

廃部寸前の箏曲部を舞台に、箏に情熱を傾ける高校生たちの青春を描く『この音とまれ!』。原作は和楽器にフォーカスを当てたことでも注目された同名コミックスだ。TVアニメ化に続き舞台化となった本作、その稽古場に久遠愛を演じる財木琢磨と鳳月さとわを演じる田中日奈子を訪ね、公演への熱い思いを語ってもらった。
ーー時瀬高校箏曲部のおふたり。まずはそれぞれのキャラクターについてお聞かせください。財木さんは新入生の久遠愛役です。
財木:祖父が大事にしていたモノを知るために、祖父が創設した箏曲部に入部する男の子です。愛はもともとちょっと荒れていたんですがじいちゃんのおかげで変われて……でも誤解されやすい行動も多いし、今でも周りからは不良と思われてる。そこでちゃんと箏と向き合うことで成長、というか、もともと熱い心や思いやりを持った子なんですけどね、なかなかそれを表現するのが上手じゃないんですよねぇ。だから箏を通じて仲間と出会って、少しずつ素直に自分を出せるようになっていくところが可愛くて(笑)、僕は好きなんです。原作を読んで、出会った初っ端から愛着を持てたキャラクター。理解できるところはいっぱいありますので、そこをどう演じていけるのかは……これからもっともっと愛になっていきたい、さらに頑張らないとなって、踏ん張っているところです。
財木琢磨
田中:私が演じる鳳月さとわちゃんは、箏の家元の跡取り娘。小さい頃からコンクールも総なめの天才って言われてきてお箏の世界ではすごいんですけど、ひとりの人間としては……不器用すぎて人との関わり合いが苦手な女の子。お箏には素直に自分の感情を表現して乗せていけるけど、言葉にして気持ちを相手に伝えるっていうのはちょっと得意ではないんですよね。そういう性格が故に周りと壁を作ってしまっていて。
ーー箏曲部も、始めは自分のキャリアのために入部してくる。
田中:はい。でもみんなと触れ合う中で「あ、こういうこと言っていいんだ」「こんなことしてもみんな受け止めてくれるんだ」っていうアプローチの仕方をどんどん吸収していって、仲間のおかげで成長していくキャラクターだなぁって思っているので──愛もそうなんですけど、原作の最初の頃と一番最近では本当に印象が全く違ってると思います。その成長の跡を刻み付けるのは……難しいですよね。さとわちゃん、難しい! 
財木:成長。わかる。すごいわかる。
田中:私自身はさとわちゃんと真逆の性格だと思うので、始めは「うわ、なんで今そんな言い方しちゃうの!?」って思ったんですけど、物語に向き合ううちに「そうだよね。さとわちゃん、そう言っちゃうよね。わかるよ」って思えて、その気持ちで最初に戻ると「そうかぁ……うん、いいんだよ。よしよし」って気持ちになって(笑)。
財木:さとわは言い方がキツイんだよね。
田中:そうなのっ。愛、いつもゴメン!(笑)。
財木:うん(笑)。ま、彼女はそもそも愛みたいなタイプとは今まで絶対関わってこなかっただろうけどね。
田中:箏曲部での関わることのない同士の出会い。最初はまぁ猫かぶって人当たりよく上手く受け流して行こうって感じなんですけど、そうじゃなく、全部さらけ出していこうって思えるようになるのは箏曲部のみんなだったから、なんでしょうね。
(左から)財木琢磨、田中日奈子
ーーまさに部活動、まさに青春! 原作の繊細さと強さが描き出してくれている世界を、今こうしてみなさんで作り上げようとしているわけですね。もちろん箏の演奏に関しても妥協なし。本番での合奏を成功させるため、楽器の練習自体はかなり以前から始めていたと伺っています。
財木:もう……半年くらい?
田中:そうですね。2月からなので。
財木:最初はみんな箏なんて触ったこともないってところからスタートしたので確実に成長はしていると思いますけど……僕なんて楽器未経験者でしたから。
田中:五線譜も読めなかったもんね。
財木:「これ、何??」状態でした(笑)。なので楽譜の読み方から始まって、弾き方を覚え、今は楽譜を見なくても演奏できるところまではなんとかみんなでたどり着いてます。あとは、合わせることの大切さ。周りの音を聴きながら合わせながら演奏していくっていうところと、さらに個々のレベルアップと──という感じです。
田中:私は中学3年間吹奏楽部だったので音楽経験はそれなりにありましたけど、管楽器・木管楽器と和楽器は本当にもうぜんっぜん違う! 三味線も少し触ったことありますが箏はそれとも違ってて……絃も10本以上増えるし、構え方も初めての経験。縦に弾くっていう体の動きにも慣れなくちゃいけなかった。でも大変ですけど、自分が生まれた国の楽器を知るのっていいなぁ、素敵な音色に包まれているこの期間ってすごく贅沢だし大事にしたい瞬間だなぁって、いつも思っています。箏曲部での演奏のポジション、私が中心にいてみんなに囲まれているカタチなので、もういっつも一番の特等席にいるんですよ〜。その分、他の人よりもズレてるとかちゃんと合ってるとか全体のことが把握できるので、そこはしっかり聴いて、しっかり伝え合って作っています。最終的には私の弾く十七絃のベースに合わせなくてはいけないわけですし。
ーー必要なのは全てにおいての“天才奏者”としての存在感、ですね。
財木:そうなんですよぉ〜。
田中:ああ、プレッシャーが……。ここ、「遠い目」って書いておいてください(笑)。
財木:(笑)。いやもう、でもね、十七絃を弾いている姿を見るとマジで「自分じゃなくてよかった!」って。
田中:(爆笑)。それ、毎回言いますよね〜。
財木:ほんっとに見るたび「ひぇぇ〜!」って思う(笑)。
田中:でも琢磨さん、稽古中に「大変そうだね」とか「ここ難しそうだね」って、いっつも声かけてくれるんですよ。
財木:声、だけ、です(笑)。

舞台について真剣に話す二人。会話がつきません。

田中:でもそれだけでも嬉しいですよ。応援って思って励みにしてます。
財木:良かった(笑)。箏の絃って繊細で、ちょっと押さえ方が違っただけで全然音が変わってきちゃうんですよ。それも難しいポイント。「ここ」と思っても少しズレると「ちょっと高い? ん?」ってなるから周りと合わなくなっちゃって。
田中:自分の押し加減もですし、そのときの絃のコンディションでも音が変わってくるので……ホント生き物ですよね。お箏って。
財木:(大きく頷く)。
ーー箏曲部部長・倉田武蔵役の古田一紀さんはいかがですか? 財木さんはミュージカル『テニスの王子様』以来の共演になりますね。
財木:一紀とは久々ですけど、相変わらずだなぁって感じ(笑)。すごくストイックだし、そういう頑張ってる姿は全然周りに見せないし。たぶん、箏も一紀が一番安定してると思いますよ。
田中:そうだと思います。私、いい意味で一紀さんが頑張ってる姿を見たことがなくって。稽古場ではいつも「いやもうできた。できてる」って自信満々の感じ。課題が出たら「ここまで僕はやってきます」って言って、次の日には「ここまで」の先、絶対にマックスよりちょい多いくらいのところまで仕上げてきてくれる人。それが、私の中の一紀さんの印象ですね。もちろん話をしてるととても努力家なところは自然と感じられますし、そういう見えないところでコツコツ積み上げている姿は武蔵ともリンクするなって思います。
財木:なんだかんだ、結局は面倒見てくれるしね。
田中:はい。私は同じベース部分を弾いてるっていうのも含めてお箏の稽古もずっと一緒でしたし、音の部分での地固めは一緒にやってこれたように思います。ちなみに琢磨さんはすごい負けず嫌いなタイプ。いつも怒ってるんですよ(笑)。
財木:箏のお稽古があった分、みんなで一緒に過ごす時間はしっかりと作ってこられたので、箏曲部の絆は着実に生まれてます。そこは自信を持って言えますけど……自分に対してはね。怒っちゃいますねぇ。今の自分の出来はまだ好きじゃないので……頑張りたいんだよなぁ。もっともっと。
(左から)財木琢磨、田中日奈子
ーー3年生の武蔵が奮闘し、なんとか部員が揃った箏曲部。物語はその箏曲部が廃部を免れるために行なう演奏会に向けての日々が描かれていきます。
財木:箏曲部が演奏に行くまでの過程は彼らの練習風景と実際に僕らのやってきたこととがすごく重なるので、感情移入もめちゃくちゃしやすいですし、「わかるなぁ」って思いながら演じているところがたくさんあります。あと僕、3バカがすごく好きで。
田中:そう〜!
ーー愛の同級生で同じく箏曲部に入部する足立実康(塩田康平)・堺通孝(小島ことり)・水原光太(上仁樹)ですね。
財木:3人が稽古場でホントにいろいろ試してくれていて、「うわ〜、いてくれてありがとう!」って、すごい思います。冒頭、愛と武蔵、そしてさとわのシーンが続いて「そろそろなにか欲しい」っていうときに彼らがバシッと入ってきて、またひとつ空気を変えてくれるというか。そこからさらに舞台が華やかになるような存在で。
田中:みなさん芝居中に起きたちょっとしたことをすかさず拾って、絶対いい方に、笑える方に変えてくださるんです。
財木:今も本番に向けてどんどん温まってきてますよ。怖いくらいに。
田中:(笑)。原作ファンの方が見ても「3バカ、ありがとう!」ってなるでしょうね。他にも哲生(小沼将太)もいるし、忘れちゃいけないおじいちゃん(加藤靖久)、教頭先生(山崎雅志)、おばあちゃん(藤田弓子)! 絶対誰も欠けちゃいけない、大事なメンバーですよね。私も原作が大好きなのでみんなが揃っていると「ああ、この感じ!」ってすごく思うし、若い子たちの青春ストーリーだけじゃなく、若者と大人との関係の中で物語が深くなっていくんだなっていうところを生の舞台からグッと感じ取って欲しいです。私たちで今まさにあの原作の世界へ行こうとしているところなので……楽しみにしていて欲しいです。
財木:ちなみに教頭先生は今まで名前がなかったんですけど、山崎さんが「名前が欲しいなぁ」って言ったらなんと、原作のアミュー先生がすぐに命名してくれたんです! その名前が果たして本番で呼ばれるのかどうかも……。
田中:含めて見どころですね。密かに(笑)。
田中日奈子
ーー瑞々しい青春ドラマと魂のこもった箏の生演奏。本番がとても楽しみです。
財木:もうね、間違いなく絶対絶対面白いし、感動する。と、断言したい! 素敵な原作に負けないように……というか、この作品の魅力を舞台でもみなさんにしっかりとお伝えしたいですし、なにより箏の生演奏というのは僕らの中でも大きな挑戦。お芝居でも感動させて、さらにその中で作られてきたものを全部演奏に乗せてのクライマックスの合奏。毎回毎回、新鮮な気持ちで僕らの思いをお届けし、箏を演奏する僕らの姿でもぜひ感動させたいです。なんかもう……この箏の音に武者震いして欲しい! そして最後にはぜひ大きな拍手をいただきたいです。残念ながら諸事情でアンコールにはお応えできないんですが、そこは……ね。また二度、三度と劇場にいらしていただければいいかな(笑)。
田中:うまい! 私は今回5年ぶり2度目の舞台で、舞台経験豊富なみなさんのように互いにお芝居を引き出し合うっていうことがまだなかなかできなかったりもするんですけど……先輩方からいろんなものをたくさん吸収しながら、全力で挑んでいます。さとわちゃんが箏曲部で成長していったように、私もこの稽古場でしっかり成長して、そして初日からその成長の成果を最後の最後までお客様へとお届けしていきたいです。『この音とまれ!』は琢磨さんの言う通り、絶対皆様に感動していただける舞台です。涙を拭うハンカチ……じゃなく、できればスポーツタオルを持ってきてくださいね(笑)。
財木:今はまだ胸の中にあるもやっとしたものも全部気持ちよく解放して、愛としてしっかりと本番を迎えたい。この思い、大事に届けていきたいです。

(左から)財木琢磨、田中日奈子
本公演は、2019年8月17日(土)に開幕し、25日(日)まで東京・全労済ホール/スペース・ゼロ、9月7日(土)~8日(日)福岡・ももちパレス、9月14日(土)~15日(日)大阪・森ノ宮ピロティホールにて上演。

取材・文=横澤 由香 撮影=池上 夢貢

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