BUMP OF CHICKENはなぜ『aurora ark
』ツアーでライブハウスを廻るのか、
その意味を新木場公演にみた

BUMP OF CHICKEN TOUR 2019 aurora ark 2019.8.20 新木場STUDIO COAST
BUMP OF CHICKENの最新アルバム『aurora arc』を携えた全国ツアー『BUMP OF CHICKEN TOUR 2019 aurora ark』。7月12日のメットライフドームを皮切りに11月4日・東京ドームへと至る全18公演からなる今回のツアーは、数万人規模を動員するドーム公演の合間に各地のライブハウスも回る構成となっている。その中間地点に差し掛かるタイミングで行われた、東京・新木場STUDIO COAST公演を観た。
会場へと足を踏み入れると、まず「近い!」という当たり前の事実が視覚情報として飛び込んできた。ライブハウスとしては大型のハコとはいえキャパシティは約2600人ほどであり、横に広い形状を持つコーストだけに、最後方や2階席から観覧してもステージ上の一挙手一投足が十分に肉眼で捉えられる大きさだ。近年BUMP OF CHICKENがライブを行ってきた会場からすれば異例中の異例であるこの規模のライブを行うことの意味。約2時間半にも及んだこの日のライブは、それを存分に知らしめた。
BUMP OF CHICKEN 撮影=古溪一道
場内が暗転すると程なく、大歓声を身に受けながら、藤原基央(Vo/Gt)、増川弘明(Gt)、直井由文(Ba)、升秀夫(Dr)が登場。藤原が歌の合間に「大声出す準備できてるか?」「待たせたな」「会えて嬉しいぜ」と投げかけるより早く、詰めかけたオーディエンスたちはハナからボルテージが高まりきっているという様子で共に歌い、色とりどりに発光するPIXMOBを装着した腕を高々と掲げている。藤原が増川と向き合って音を重ねたかと思えば、直井がステージの際ギリギリまで歩み出てプレイしたり、升も隙あらば立ち上がって客席を煽ってみせたりと、息のあったパフォーマンスも前半から次々と飛び出していた。
BUMP OF CHICKEN 撮影=古溪一道
ドーム公演では、ステージ後方の巨大なLEDスクリーンをはじめとする様々な装置や特効を効果的に使いながら、数万人を乗せた一つのark=箱舟が共通の体験を楽しめるような、大規模な演出で魅せてくれたが、この日はそれをただダウンサイジングしたり簡素化するわけではなく、きちんとライブハウス仕様に再構築していた。例えば「aurora arc」「Aurora」といった楽曲では、アルバムの根幹を成すモチーフ=オーロラをムービングライトやレーザーで表現するなど、普段からライブハウスで用いられる装置は随所で巧みに使われていたが、裏を返せばそれ以上の大掛かりな演出は用いられていない。サウンドメイクに関しても、「Butterfly」や「ray」でシーケンスより生音が前に出るなど、普段以上にバンド感やダイレクトな興奮を味わえる仕上がりになっており、ライブハウスという環境を最大限に生かすためのアプローチが為されていた。
また、音源と比べてもグルーヴの体温が増した感のあった「Spica」、息遣いや運指までリアルに感じられる藤原のアコギ弾き語りとそれに寄り添うようにもう一つのメロディを歌う増川のギターが見事だった「話がしたいよ」、ラストに至るドラマティックな展開に息を飲んだ「流れ星の正体」など、これ、至近距離で観たり聴いたりすることで別の魅力を発揮しているんじゃないか?という楽曲も。
もう一つ、「近さ」というのは、物理的な距離だけの話ではなかった。4人と、会場に集まった1人1人との精神的な距離も、驚くほど近いのだ。藤原は曲の合間に飛ぶ声援を丁寧に拾っては返し、直井はステージ上から見たフロアの密集ぶりを身を以て再現して笑わせ、増川は楽屋やリハでのエピソードを嬉しそうに語り、先日誕生日だった升は会場全体から「この夏一番のボリューム」で祝福された。それ以外にもほぼライブ全体を通して、メンバーと観客たちが視線を交わし合い、それによって表情が緩んだり歌声や演奏に熱が込められたりする瞬間が何度もあった。
BUMP OF CHICKEN 撮影=古溪一道
個々の楽曲のテーマやメッセージはさておき、アルバム制作中にメンバー全員でオーロラを見に行った出来事がアルバム『aurora arc』に少なからず影響を与えていることは、インタビュー等でメンバーが語っているとおりだ。オーロラという現象の壮大さや神秘性、それを目の当たりにする非日常的なスペクタクルを、あらゆる演出を用いながら巨大な空間でできるだけ多くの人間と追体験する場がドーム公演であるとするならば、幼馴染のメンバー4人がその旅の道中でどんなことを話して、どんな様子で過ごしていたのかといった、その場の空気のようなものをコンパクトな環境でそっと披露する機会がライブハウス公演である、という捉え方も出来るのではないだろうか。そう思えるくらい、この日のBUMP OF CHICKENは終始リラックスした様子だったし、晴れやかで朗らかな表情を浮かべ、ことあるごとに楽しさを口にしていた。
名古屋と大阪でのドーム公演の後、再びライブハウス公演を挟んでファイナルへ。巨大なスタジアムを沸かせる一方で、手も声も届く距離で言葉を交わし笑いあうという、言わばこのバンドの魅力そのものを鮮やかに描きながら、『aurora ark』ツアーは続いていく。

取材・文=風間大洋 撮影=古溪一道

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