GLAY 25周年記念ライブ『悪いGLAY』
で見せた彼ららしい“DEMOCRACY”の

GLAY 25th Anniversary“LIVE DEMOCRACY” 悪いGLAY

2019.8.18(sun) メットライフドーム
デビュー25周年を記念したGLAYのメットライフドーム2DAYS公演は、初日を『良いGLAY』、2日目を『悪いGLAY』と名付けたコンセプトライブ。平成を駆け抜けたバンドヒストリーを映像で振り返りながら、TAKUROの「今年こそは紅白」という宣誓などメンバーによる公約と、『GLAY DEMOCRACY』に賛同するファンから募った公約がスクリーンに映し出される感動的な幕開け。
GLAY 25th Anniversary“LIVE DEMOCRACY” 良いGLAY  撮影=田辺佳子
しかし、ヒット曲満載の正統派セットリストだった初日と比べて、8月18日(日)の『悪いGLAY』は序盤からトリック尽くし。「メットライフドーム、熱く行こうぜ!」というTERUのシャウトで「誘惑」のイントロが鳴り、サブステージの巨大バルーンが割れて赤衣装のメンバーが登場……かと思いきや、すぐに曲は鳴り止み、4人はフェイクだったことが判明。「安全第一」との看板が掲げられるホテル建築現場風セットから落下する人影が見えると、黒衣装の“本物のGLAY”がいよいよメインステージに登場、「FATSOUNDS」を奏で始め、怒涛の勢いで特効が炸裂。TERU・TAKURO、HISASHI・JIROの2手に分かれて乗り込んだトロッコはアリーナへと互いに逆方向へ出発。スタンド席ファンにも大いにサービスしながら、2つのトロッコはアリーナ最後部で重なり合った。「ネクスト・ソーング!」(TERU)とコールして始まったのは、なんと再び「FATSOUNDS」。なぜか歌詞はハングルで表示されていて、トロッコは行き交う形でメインステージへと戻っていく。「GLAYの闇営業へようこそ!」と悪いGLAY首謀者・HISASHIが挨拶すると、3度目の「FATSOUNDS」がスタート。「歌詞出てるし、そろそろ歌えんだろ? カモン!」(TERU)と煽るが、字幕はアラビア語。大半の観客は読めないのだった。JIROがベースを荒々しく掻き慣らし、「SHUTTER SPEEDSのテーマ」を歌い出す……かと思いきや「暴れる時間だよ、HISASHI!」と振って、HISASHIが熱唱。次々と繰り出される『悪いGLAY』のパンチにザワつくオーディエンス。続く「BURST」の段階ですでに、ライブ終盤のような盛り上がりを見せていた。
GLAY 25th Anniversary“LIVE DEMOCRACY” 良いGLAY  撮影=岡田裕介
「お前ら水分摂れよ、コンニャロ!(笑)」(TERU)と荒々しい口調で悪ぶってみても、熱中症を気遣うGLAYは優しい。続くシークエンスでは、新旧織り交ぜた楽曲群を真っ直ぐに届けていく。「はじまりのうた」は美しく力強いファルセットを響かせ、「サバイバル」ではファンとの掛け合いで一体感を増幅。レア曲「TWO BELL SILENCE」のイントロが鳴っただけで会場はどよめき、ダークな疾走感と弦楽器隊アレンジの構築美に酔った。歌に込められた真摯な気持ちが直球で飛び込んで来た「COLORS」、爽やかな風を浴びるような心地良さをもたらす「シキナ」。改めてGLAYの歌の力、音の気持ちよさを堪能できる一連の流れだった。
GLAY 25th Anniversary“LIVE DEMOCRACY” 悪いGLAY  撮影=岡田裕介
GLAY 25th Anniversary“LIVE DEMOCRACY” 悪いGLAY  撮影=岡田裕介
「ここで僕らの仲間を紹介したいんですけど」(TERU)と招き入れたのは、MISIA。「白い衣装だけどBad MISIAのつもりで来ました。Badってあっちでしょ? カッコいいって意味の。GLAYさんはSo Bad!」と語り、「YOUR SONG」をコラボレーション。『G4・V-Democracy 2019-』に収録されているfeat.MISIAバージョンをライブ初披露した。MISIAは生命力に満ちた歌唱と華やいだオーラで会場を惹きつけ、自身のデビュー時から縁の深いGLAYの25周年を最高のパフォーマンスで祝した。
GLAY 25th Anniversary“LIVE DEMOCRACY” 悪いGLAY  撮影=橋本塁
10分間の休憩を挟み、後半が開幕。TAKUROは、ライブ冒頭で映し出したファンの公約に触れ、「全力で皆さんの夢を応援したいと思います」と誓った。「25年、たくさんの壁に当たり、心折れる者もいたし、挫ける者もいた。俺たちはそんなに優秀なミュージシャンではないかもしれませんが、手を取り合って歩いて来た。そんなつもりです」と挨拶。公約と合わせて募った楽曲人気投票の結果に言及しつつ、「どんなに歩みが遅いヤツも見捨てずにやってきた」というスタンス通り、投票数下位3曲を披露すると発表。『ザ・ベストテン』のランキング発表風映像に合わせてTAKUROが「悲しみの第〇位」と芝居がかった口調で読み上げるだけで笑いが起きる。279位の「SMILE」はGLAYとファンの数々の笑顔映像と共に披露。280位の「Time for Christmas」では、JIROがサンタ帽をかぶり、スタッフが籠を揺すりJIROの頭上だけに雪を降らせる演出に爆笑。最下位281位は、投票結果を初めて見た時TERUが「ん? 新曲?」とリアクションしたという「WHY DON'T WE MAKE YOU HAPPY」。投票者のペンネームと共に「清き一票をありがとうございました!」と締め括られるまでのすべてに、GLAYらしい民主主義(DEMOCRACY)の形、弱き者たち見捨てずむしろ寄り添おうとする姿勢が貫かれている、と感じた。
GLAY 25th Anniversary“LIVE DEMOCRACY” 良いGLAY  撮影=田辺佳子
メンバーをかたどった巨大バルーンが出現した「JUST FIME」が始まると、観客に配布されたリストバンド型LEDライトが点灯。その頃には陽が落ち、レーザー演出も映える時間帯となっていた。「ピーク果てしなく ソウル限りなく」では色とりどりのバルーンがアリーナ観客頭上を転がり、TERUはアウトロで花道を全力ダッシュ、跪いて渾身の叫びを轟かせた。曲の世界にこちらも入り込んでいたところに、「今日は“悪いGLAY”だよ」と思い出させるかのように、90年代の「Cynical」の出だし歌詞忘れ事件セルフ・パロディを挟み込むマニアックな仕掛けも忘れない。絶え間なく噴き出す炎の演出とアグレッシブなサウンドが連動していた「coyote, colored darkness」、問答無用のロックパフォーマンスを見せた「彼女の“Modern…”」、清らかなファンの合唱が胸に響く「XYZ」で本編は締め括られた。

GLAY 25th Anniversary“LIVE DEMOCRACY” 良いGLAY  撮影=岡田裕介

GLAY 25th Anniversary“LIVE DEMOCRACY” 良いGLAY  撮影=岡田裕介
LEDライトで客席に人文字をつくる企画を楽しみながらアンコールを待っていると、ステージに屋台が出現。ギターケース片手にやって来たTERUが路上弾き語りのていで「HOWEVER」を歌い出すと、はちまき姿のマスター役Toshi Nagai(Dr)がおひねりを渡してドラムセットへ移動する、といった形で、酒場の客に扮したメンバーが演奏に徐々に加わっていく(最後までHISASHIは不参加のまま)。数々の感動を刻んできた代表曲を、前代未聞の演出で届けたGLAYの、度を越えた遊び心。「学芸会みたいですけど(笑)。付き合ってくれたスタッフの皆さん、そして(観客の)皆さんもありがとうございます!」とTERU。忘れられない一場面がまた一つ、バンド史に加わった瞬間だった。TERUに一言ずつ求められると、「どんなにGLAYが“悪く”なってもサポートいていきます」とToshi、「久しぶりに皆と一緒にできて、ミュージシャン冥利に尽きる」と斎藤有太(Key)、「昨日のライブは皆のことを楽しませようとして、今日は、皆もだけど俺たちも楽しもうと、新しいスタイルでやってみた」とJIRO、「FATSOUNDS」3連続は「本当は5回連続でやりたいと言ってた(笑)」(TERU)と暴露され、「スイマセンデシタ!」とHISASHI。「(JIROが長年固辞していたサンタ帽を遂にかぶった)サンタ記念日、『安(やす)EVER』(※メンバーが不揃いな状態で宴席等で披露される「HOWEVER」)の目撃者になってしまったということで、おめでとう!」とTAKURO。TERUは、「皆さんの笑顔があればまだまだ5年、10年とやっていけいると思う」と意欲を見せた。「誘惑」を今度こそしっかりと披露し、まばゆい白い光の中、「BEAUTIFUL DREAMER」を届けて終演。トロッコに乗り込み客席にフリスビーを投げ入れて会場を巡り、惜しまれながらステージを去った。
「良い・悪い」のテーマが発表されて以来、圧倒的善なイメージのあるGLAYが表現する悪とは何なのか、予測不能だった。いざライブが始まってみると、ファンを楽しませようとする愛すべき悪ふざけがひしめいていて、人を傷付けるような悪はもちろん、皆無だった。何より、メンバー自身が楽しみ、心から面白がっている空気が伝わって来たことが生み出す幸福感を絶大で、一風変わった、しかし極めてGLAYらしい25周年記念公演だった。

文=大前多恵

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