Sou、“音楽を続けること”で見えた
新たな景色 初の全国ツアー・東京公
演をレポート

Sou 2019 Summer Tour『深層から見た景色』

2019.8.19 品川ステラボール
自らクリエイトした楽曲を含む自分用の書き下ろし曲たちの広がりや浸透。全国各地で自身を応援してくれる人たちの存在。自作/他作問わず、「自分の歌」を欲してくれる人たちがこんなにも居るという心強さ……。Souにとって初のワンマンツアーは、「伝えるべく対象」が実感できたツアーになったのではないだろうか?
今春の初ワンマンを満場に収めた興奮も冷めやらぬ中、Souが早くも初の全国ツアーを敢行した。名古屋、大阪、東京にて各所大成功を収めた今回のツアー。そのファイナルとなった8月19日の品川ステラボールは、自身がクリエイトした楽曲や自身の為のオリジナル曲、それらが聴き手の歌へと変わっていた事実を目の当たりにしたと同時に、Sou自身もこの満場から何かを得、それが今後の楽曲クリエイトへ大きく寄与していくであろう、その萌芽を確信することが出来た。
奇しくも自身21回目の誕生日でもあった、この日。発売されたばかりの2ndアルバム『深層から』の楽曲全曲に、人気の“歌ってみた”楽曲を交えて行われた同ライブは、特にニューアルバムの楽曲たちがしっかりと集まった者たちへの歌のように感受している光景も多々見受けられ、その場を謳歌するが如く楽しむ場内の様相も印象深かった。
Sou
スーッと客電が落ちると、まさしく深層にいる自身を想起させる、海面へと向かい浮かび上がる気泡音のSEが流れ出す。フロアにオーディエンスたちによる水色のペンライトが作り出す光の絨毯が現れ、青いライトがステージを浮かび上がらせる。その明滅するライトの中、まずはバンドのメンバーが現れスタンバイ。下手(しもて)より、ベース、ドラム、キーボード、ギター(、ステージ上に姿は見えないがマニュピレーターも)の布陣だ。その明滅がストロボフラッシュに変わる中、ステージセンターにSouが現れる。パーカー姿だ。そんな彼による「いくぞー東京!!」のライブ開始のシャウトから、ニューアルバムのトップを飾っていた、自身作詞/作曲を手掛けた「愚者のパレード」がその軽快なサウンドと共に場内に飛び込んでくる。ハンドマイクスタイルにて、その高いキーを活かした歌声が会場の隅々にまで広がっていく。「誰かこの世界から僕を救って」と手を伸ばすかのような歌に、救いのように会場中から無数の心の手が伸び、それらがガチッと組み合い楽曲が昇華されていく。続いて「Clap your hands」と手拍子を促し、これまたニューアルバムから「トーキョーゲットー」に入ると、スリリング且つダンサブルなサウンドの上、会場のクラップと合いの手的なコーラス部分が曲をふくよかに育んでいく。
「今日は曲を沢山やるので最後まで楽しんでいって欲しい」とSou。パラレルなギターフレーズから「ハングリーニコル」に入るとファンキーなサウンドが会場に躍動感を育み、途中に加わるクラップ音が楽曲にアクセントを加えていく。
ここまで新作通りに3曲。間に「もう生きてるだけで褒めて頂戴」の爽快カバーを挟み会場がパーっと明るくなる。
Sou
再び新作から。ミディアムな曲調と共に、ちょっとした胸の空虚感を場内と共有した「エリカ」では、諦念を帯びながらも未だ一縷の望みを信じているような歌が胸を締めつけ、その諦念を背負ったまま会場を引き連れて走り出したのは「波に名前をつけること、僕らの呼吸に終わりがあること。」であった。喪失感を振り払うように疾走感に乗ったサウンドと歌声が場内をここではない何所かへと引き連れていく。
この日は海外からも彼の雄姿を観に来ていたようだ。「この規模でのライブは初めて。その初めてを見てくれてありがとう」と続け、ここからはスタンドマイクでの歌唱が。ちょっとしたスウィング感を場内に呼び込んだ「flos」を経て、現れる本音がストレートに痛く響いた「いかないで」、雅やかなメロディに乗せた「ハレハレヤ」と、彼の歌ってみたの特徴でもある【感情をこめて】のカバー曲が2曲歌われた。
対してニューアルバムからは、現代のわらべ歌のような「鯰」が木琴ループと横笛の音色の上、帰らなくてもいいさとうそぶけば、再びハンドマイクスタイルにて、彼のレパートリー中最も勢いのある曲とも言える「Q」が衝動のまま走り出せよと煽ってきた。
後半は勢いのある曲たちが連投された。ライトも目まぐるしく走り回る中、会場を並走させた「アイラ」のカバー。さらに加速度を上げていくように盛り上げた「シンソウ」を経て、トラップミュージックに乗せた諦念混じりのウィスパーで伝えた「グレイの海」では、幻想さと沈殿感の中、次々と現れるリリックたちが胸を締めつけた。
Sou
「作品の世界観の再現を目指したツアーだった。振り返ると6年間もよくやってきた」と自らを省み、「変わっていくことに抵抗を感じていた。だけど変わっていく方が自然。変わっていないのは音楽を続けてるってことだけ。今後も幅広くどんな形になろうが音楽は続けていきます。それこそ音楽を無限にやっていくから。これからもよろしくお願いします」とのMCを経て、本編最後の2曲は、場内をグイッとステージに抱き寄せるかのような曲たちが切々とした気持ちを込めて歌われた。「みんなと自分をつなげてくれたターニングポイントの曲だった」と語り入った、YouTube再生回数1300万を記録した「心做し」が心を込めて歌われ、本編最後は「証として」がこの思いよ届け――とばかりに歌い放たれた。
アンコールではバックバンドのメンバー共々Tシャツ姿のSouと出会えた。「わずかばかり残っている体力を出し尽くしていくから!」と満場に宣誓し、このシーズンならではの夏曲を【爽快に】歌った。夏を締めくくるべく会場を一つに!と放たれた「ロケットサイダー」のカバーでは、世界の片隅で出会えた感が場内に広がっていき、駆け抜けるべく放った「サマータイムレコード」のカバーではまた会いましょうとの約束がアライアンスされた。
ここでちょっとしたSouへのサプライズが。この日、誕生日を迎えた彼に「Happy Birthday」の会場からの合唱と、スタッフからはケーキのプレゼントが贈られた。「幸せを噛み締め、この感謝を忘れずに今後もいい歌を届けていくことを誓います!!」とSouからも新たなる決意が返礼される。そう。彼から我々への最大最高のお返しは、やはり彼の歌う歌なのだ。
そして正真正銘最後の曲は、再び自らがクリエイトした、彼のダークサイドが炸裂したかのような「ノイド」が存在証明をしっかりとしてくれた。
Sou
重複するが今回のアルバムには彼が作った曲(一部共作詞)が2曲現れた。どちらもデカダンスで内省的、諦念を宿しながらも、その実、光や明るさ、救いを信じているかのような「愚者のパレード」「ノイド」の2曲だ。これらの歌は前回の初ワンマンや今回の全国ツアーの前には完成していたもの。すなわち今回の全国ツアーを経ての歓びを知る前の楽曲たちと言える。
前回の初ワンマンで気づき、今回のツアーで確信になったであろう、こんなにもいる自分の味方たち。今作を機に今後ますます自身がクリエイトする楽曲が増えていきそうだ。届けるべき、贈るべき、伝えるべき対象がより明確になった今、今後彼の生み出す歌もきっと変わっていくことだろう。
Souの現在が分かったのと同時に、この光景を経た今後の彼の楽曲の変化もますます楽しみになった。今はまだ「愚者のパレード」かもしれないが、いつしかそれは「賢者のパレード」へと変わっていく。そんな確信を胸に、どこか豊かな気持ちと共に帰路についた。

文=池田スカオ和宏 撮影=清水基揮(Styler86)

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