A New Musical『FACTORY GIRLS』稽古
場公開 柚希礼音「役名がない子も最
強に光っているのが最高の舞台。今い
い空気が流れています」

2019年9月25日(水)より、A New Musical『FACTORY GIRLS~私が描く物語~』が東京・TBS赤坂ACTシアターにて世界初演される。これに先駆けて本作の稽古場の一部が8月27日(火)公開された。この模様をレポートする。
この日公開されたのは第3場<♪機械のように>、第7場<♪自由か死か>、第8場<♪ローウェル・オウファリング>の3場面だ。※この日は能條愛未の稽古場代役として、日髙麻鈴(さくら学院)が参加していた。
第3場では、産業革命真っ只中のアメリカ・ローウェルの紡績工場で大勢の女工たちがまさに機械の歯車の一つになったかのように感情を殺して黙々と働いている。そこにサラ(柚希礼音)が初めて出勤する姿が描かれる。ここで歌われる「機械のように」は労働者の鬱屈する力をロックのメロディーに乗せ、熱く力強く歌い上げられていた。またその一人として柚希が加わる事でさらに強さを増したかのようだった。
その後、第7場と第8場が連続して披露された。サラ、アビゲイル(実咲凜音)、ルーシー(清水くるみ)、マーシャ(石田ニコル)らがそれぞれに自由に生きたい、弱い自分に負けたくない、夢を実現したいという想いを歌う場面から、ハリエット(ソニン)のオフィスを訪ねたサラたちが女子労働者たちが寄稿して作り上げた「ローウェル・オウファリング」の素晴らしさを歌う場面へと描かれた。柚希と実咲の元宝塚コンビによる息の合った歌声のすばらしさはもちろん、清水のややハスキーさがある声、そして石田の色気のある声が合わさり、その歌声に背中を押されるように見せる群舞の躍動感は見事だった。
ちえさんのむぷぅ!な表情が可愛いので使ってしまいました!
一方で「ローウェル・オウファリング」の編集者・ハリエット役のソニンはこれまで彼女が演じてきたどの役よりも落ち着いた雰囲気を醸し出し、力を持て余す女子労働者たちを低めの落ち着いたトーンでぐっと引き締めるという意外な姿を見せていた。とはいえ、場面の最後に柚希と共に歌い上げるところではいつものソニンパワーがさく裂! 喜びを歌声で高らかに表現していた。
約15分ほどの稽古披露の後、囲み会見が行われ、柚希、ソニン、実咲、清水、石田と日本語版脚本・演出の板垣恭一が出席した。

柚希礼音

女工たちのリーダーとなるサラを演じる柚希は「それまでの女性は結婚するのが普通だったが初めて自分たちも働いてお金を持つ事が出来るようになる、という今の時代にも通じる“女性が生きる”をテーマにしています」と作品の狙いを語り、自身が演じるサラ役について「板垣さんが凄く当て書きしてくださったので、宝塚のトップ時代にリーダーとして悩んだ事が凄く思い出されます」と笑顔を見せた。また「とっても革命的、恋愛がメインとなっていないミュージカルでありながら、かなりお客さんに共感していただけるものが多いです。女性に観ていただきたいし、男性にも『女性ってこういう事を想っているんだ』と感じながら観ていただきたい」とアピールした。
ソニン
ソニンは「ハリエットは女性の権利を勝ち取るために力を注いでいくんですが、サラとは違い、『ローウェル・オウファリング』を編集をしながら女性たちの文才を高め伝えていく、衝動的ではなく理論立てて進めていく役です」と紹介。世界初演となる作品について「私たちがオリジナルとなっていくので、キャストもスタッフも皆で話し合いながら一緒に作っていってます。大変な事もありますが、幕が開いた時に今まで感じた事のない達成感を感じるのでは」と期待に胸をふくらましていた。ただ役どころでは女工たちとは違う立ち位置なので、「稽古場では孤独です。女子たちがキャッキャしているのをのぞき込んで『お菓子何食べてるの~?』って中に入ろうとしています(笑)」というと他メンバーも笑い出していた。
実咲凜音、石田ニコル
アビゲイル役の実咲は「サラが初めて工場に来た時にいろいろ教えるお姉さん的存在です」と自身の役を紹介しつつ「まさか柚希さんと共演できるとは夢にも思わなかった。稽古が始まってからは実際とは逆の立場、工場の“先輩”となってしまいました!」と照れながら柚希と目を合わせて笑い合っていた。
この流れで、さらに宝塚の大先輩である剣幸も本作に出演している事に触れた柚希は「剣さんのお稽古を自分の席から見る事が出来るのが幸せ。あたたかいお芝居をされる方だなあと思っています」とこちらも尊敬の念を送っていた。
板垣恭一、清水くるみ
女工たちが住む寮の娘ルーシー役の清水は「一番年下ながらも皆を支える役。ストーリーテラーでもあります」と説明し、現場の雰囲気について「女性が多いのでいつもと違う現場だなと。宝塚もこんな感じかなあ」と口にすると、柚希と実咲が「こんな感じじゃないかも~」と茶々を入れて清水を笑わせる。
マーシャ役の石田は「おしゃれが大好きで自分を着飾って男性を捕まえようとする、感覚的には現代の婚活中な女性たちにいちばん近い存在。一生懸命働いて自分の夢を掴む役です」と話し、ミュージカルは『RENT』に続き2回目ではあるが「前作と時間が空いてしまっていて、皆さんが履くダンスシューズから何から新しい発見があります」と嬉しそうに語っていた。
板垣は本作が本国アメリカでは音楽はプレビューされたが、まだ台本が出来ておらず、作品として完成していない事に触れ、日本語脚本と音楽を作り上げた現状を「ちょっと、いやかなり僕らのほうが先行していますね」と胸を張る。そして、働く女性の権利を扱う本作について「どうしてもそこを(取り出して)記事にしたくなると思うんですが、そうすると暗く重いものになりがち。でも本作は明るくポップな場面がたくさんあって明るい芝居です!」と取材陣に改めて本作の魅力を語っていた。
女性だらけの現場と男性が多い現場の違いについて聴かれると、柚希が「宝塚のときみたいに『もっと空気を見よう!』って言っている」と言う。するとソニンが「男性にはっきり言うと傷つくかも(と遠慮してしまう)。女の子なら大丈夫かなって」。その現場を連日目のあたりにしている板垣は「男性って意外と本音でしゃべらないんです。男の演出家同士でも相手を“読み”に行かないとならない。でも、女性は喋る前に顔に言いたい事が書いてあるんです。『何言ってるか分かりません』とか(笑)。隠し事がない現場なので僕は楽です」とニッコリ。
最後に柚希は「ずっと舞台をやってきましたが真ん中の人だけが目立つというのが嫌いで、役名がない子も最強に光り輝いているのが最高の舞台だと思っています。本番にはどの人もキラキラしていて、どの人をみたらいいのかわからなくなるくらいの中私たちはよりエネルギーをもってやりたい。今いい空気が流れる稽古場です!」とこのカンパニーを自信を持ってアピールしていた。
(左から)板垣恭一、清水くるみ、ソニン、柚希礼音、実咲凜音、石田ニコル
取材・文・撮影=こむらさき

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