言語やジャンルは“壁”じゃない。R
UANNが学ぶ理由とは

現在高校1年生にして、歌って踊ってギターも弾けて、さらに日本語と韓国語、英語も話せるアーティスト・RUANNが、シングル「BEEP BEEP」を日本語と韓国語の2ヴァージョンで日韓同時リリースした。プロデューサーはTWICEの大ヒットを支えたBlack eyed pilseung。キュートに弾けるティーンのエネルギーと、しなやかな色気を兼ね備えた、ダンサブルで強靭な曲が、彼女の多面的なパフォーマンス力とマッチし、次世代ポップを担うアイコンとしてのポテンシャルが見事に引き出されている。彼女はこの曲にどんな想いを込めたのか、そして表現に対してどんな考えを持っているのか。その魅力の秘密を探るべく、話を聞いた。

Photography_Shunsuke Imai
Text_Taishi Iwami

オープンマイクからワンマン・ライヴに
まで漕ぎつけたNYでの思い出

――RUANNさんは現在高校1年生。すでに歌とギターなどの楽器とダンスのスキルをお持ちですが、もともとパフォーマンスをしようと思ったきっかけは?

RUANN : 小学校1年か2年生の頃、三浦大知さんが椅子を使って踊る「Lullaby」のミュージック・ビデオを、母に見せてもらったことがきっかけです。その時に、私も歌って踊るんだって、はっきりと決心しました。

――ダンスや歌は見よう見まねで?

RUANN : その頃はただ音楽が大好きで、やりたいと思った時にはもう体が動いてました。見よう見まねでやっていた部分もありますし、スクールで教えてもらったこともあります。でも、踊り過ぎちゃって、発育期によくあるオスグッド・シュラッター病になっちゃたんです。それで、ほかに何かできないかなって、中古さんでギターを買って弾くようになりました。すごく楽しくて、一気に楽器を弾くことへの興味が高まって、ピアノやドラムも始めたんです。

――どんな曲を演奏していたか、覚えていますか?

RUANN : Taylor Swiftの「We Are Never Ever Getting Back Together」を、ひらすらギターで弾いてました。ピアノは、お祖母ちゃんの家で小さな子供用のを見つけて、童謡の「チューリップ」を覚えたことで、「あ、私、これできるかも」って。

――身近なところに、たくさんきっかけがあったんですね。

RUANN : そうなんです。きっかけになりそうな破片みたいなものがそこらじゅうにあって。足を怪我したことで、最初は逃げ道を探していたのかもしれないですけど、結果的にすごく視野が広がってよかったと思います。

――ご自身でも好奇心旺盛だと思いますか?

RUANN : そうですね。やりたいことがどんどん溢れてくるんです。剣道もやってましたから。足が痛くて辞めるんですけど。今は寄り道してどっちつかずにならないように、現在進行でやっていることに、最大限の力を注いでいます。
――さまざまな場所でパフォーマンスしている姿を、ご自身のYouTubeチャンネルにアップされています。なかでもニューヨークでの映像が印象的でした。

RUANN : ニューヨークには10日間くらい滞在したんです。1日目に、まずオープンマイクに参加したら、その店のオーナーさんが、「ワンマン・ライヴしてみない?」って声を掛けてくださって、10曲くらい歌いました。あとは路上ライヴもしましたし、すごく楽しかったです。

――アポロ・シアターのステージにも立たれていましたね。

RUANN : 憧れのアポロ・シアターを一目見てみたいと思って行ったんですけど、飛び入り参加ができるようになっていて、そこで私を選んでもらえて。即興ダンスを披露したら、思ったより大きな拍手とスタンディング・オベーションが起こったんです。それはステージに立つことが大好きになった、決定的な出来事でした。

――どんな場所でも積極的に出ていくんですね。

RUANN : さすがにアポロ・シアターは躊躇したんですけど、お母さんが半ば強引に(笑)。でも、そのおかげでますますステージが好きになれたんで、よかったです。

ルーツは日本語とYouTube。ネット・ネ
イティヴだからこその興味

――RUANNさんにとってライヴとは?

RUANN : 練習は対自分。それがライヴになると、みなさんと一緒に笑ったり歌ったり、そんななかで涙を流してる方もいる。多くの方々といろんな感情をシェアできる場所なんです。

――そのうえで大切にしていることはなんですか?

RUANN : 言いたいことがうまく言えなくて曲を通している部分もあるから、想いをしっかり曲に込めてパフォーマンスすること。でも、MCやこういった話をする場でも、恥ずかしがらないで言いたいことをはっきり言うこと、ちゃんと感謝の気持ちを伝えることも、すごく大切だと思います。

――伝えたいことと日本語、韓国語、英語と語学を積極的に学んでいることの関係性はどうでしょう。まず、RUANNさんのルーツに海外の血は入ってないですよね?

RUANN : ルーツは日本語とYouTubeです。スマートフォンがなかった時代だったら、語学にも興味がなかったと思います。

――どういうことですか?

RUANN : テレビだといろんな言語が流れることはないじゃないですか。YouTubeだと世界中の言葉に触れることができます。そこで、Taylor SwiftやLady GagaCeline DionMichael Jacksonの曲を聴いて「英語って喋り方がかっこいい」と思ったり、防弾少年団に興味を持つようになって「韓国語ってかわいい」って思ったりして、その言語についてGoogleで調べて。すべてスマートフォンのなか、インターネットがあったからなんです。

――周りの友達も、似たような感覚なのでしょうか。

RUANN : みんながみんな語学に興味を持つわけではないにせよ、海外の情報に対して、特に敷居を感じることなく、興味を持っている友達は多いような気がします。

――スマートフォンやYouTubeがない時代も、遠い昔ではないですが、ご存じですか?

RUANN : 私が初めて持った携帯の通信機器がすでにiPhoneだったんです。周りの友達もそうだったんですけど、ある時、何人かが急にガラケーに変えたことがありました。私もお母さんにガラケーの存在を教えてもらって、欲しいと思いましたし。ボタンをポチポチしてみたいなって。

――iPhoneが初めて発売されたのは2007年ですから、現在高校1年生だったら、そうですよね。

RUANN : 単純に物として、ガラケーにはすごく興味があります。

ジャンルや言語は“壁”じゃない。RUA
NNが将来辿り着きたい場所とは

――そして今回のシングル「BEEP BEEP」は、日本語と韓国語の2ヴァージョンを制作し、リリースも日韓同時に。そこにはどんな意味があるのでしょう。

RUANN : 日本人だと日本語だし、韓国人だと韓国語が伝わりやすいわけですけど、そのなかで、私ができる限りのことをして、少しでも多くの方々に、この曲の意味や内容を理解してもらいたいんです。

――言語や音楽ジャンルの違いについてはどう思いますか?

RUANN : もちろん、国によって話す言葉は違いますし、音楽にもジャンルはあります。でも、ジャンルがどうとか国がどうとか言う前に、私にとってはそれらの一つひとつが宇宙の大切な音楽。そこに壁があるのは、寂しいと思うんです。そういうことはひとまず関係なく、いろいろ聞き流して「これ好き!」って引っ掛かったら買う。言語やジャンルは壁じゃない。私が語学を大切にしているのは、音楽の素晴らしさをもっともっと感じたいからなんです。

――なるほど。2か国語でリリースする意味はすごく伝わってきました。そこで、同じ曲を別の言語で歌うのは、難しくなかったですか?

RUANN : 日本語と韓国語で同じグルーヴを出すのはすごく難しいので、そこを意識しながらできるだけ近いグルーヴになるように意識しました。今回は韓国語ヴァージョンが先にできていて、その歌詞を日本語に訳す時に、韓国語と日本語の語感や発音の似ている部分を見つけ出してリズミカルに聞こえるように、なおかつ曲の意味が大きく変わらないような単語を、出していきました。

――今回、韓国語ヴァージョンが先にできたのは、プロデューサーにTWICEを手掛けたことでも知られるBlack eyed pilseungを迎えられたからですよね?

RUANN : はい。すごく嬉しかったです。TWICEは、日本で最初に大ヒットした頃からずっと聴いていて、ライヴでもカヴァーしてたので。

――依頼した経緯を教えてもらえますか?

RUANN : ギターを持って韓国に行ってバスキングをしたんです。そしたら会えることにになって、そこでお二人が作ったTWICEの「TT」を歌ったら、提供していただけることになったんです。

――曲の展開も、韓国のポップ色が強いですね。

RUANN : ですよね。日本だとAメロ→Bメロ→サビがきてまたAメロ、みたいな展開が多いですけど、今回は予測できない流れになっていて、それを日本語で歌うことでの新鮮なマッチングも聴きどころだと思います。

――そのなかで、ラップもすごく効いています。

RUANN : "かっこいい"と"かわいい"を1曲のなかでどう表現できるか、そこはすごく考えました。曲もビデオも、自分でもすごく興奮するくらいになったので、みなさんもラップになったときは思いっきり盛り上がってくれたらいいなって、思います。
――この曲がどう育っていくか、楽しみですね。

RUANN : すごく楽しみです。基本アップテンポなんで、みんなで恥ずかしがらずに自由に踊ってジャンプしてくれたらなって、思います。あと"hello this is ruann"という歌詞があるんで、そこはライヴに来てくださったお客さんと、一緒に歌いたいです。

――このライン、すごく耳に残りました。

RUANN : ですよね(笑)

――今回のリリースを経て、この先は広く世界を目指して活動していくのでしょうか。

RUANN : もっともっと語学を勉強して、たくさんの方々と関われるようになることで、挑戦できることもどんどん出てくると思うんです。だから、日々向上心をもって取り組んでいきたいと思います。

――序盤に、”憧れのアポロ・シアター”とおっしゃいましたが、立ってみたいステージはありますか?

RUANN : 前まではグラミー賞を獲りたいとか、スーパーボウルで歌いたいとか、あったんですけど、今はないというか……、立ってはみたいですけど。大切なのは、自分の意志でやりたいことをやって言いたいことが言えるようになることと、そこに集まってくださる方々がいること。まずは目の前にあることを、精一杯やって楽しむ。そして、たくさんの国の素敵な場所に行けたら最高ですね。

作品情報

Digital Single
『BEEP BEEP(Prod. B.E.P)』

https://ruann.lnk.to/ZX2UQ


RUANN
オフィシャルサイト
Twitter

言語やジャンルは“壁”じゃない。RUANNが学ぶ理由とははミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。

ミーティア

「Music meets City Culture.」を合言葉に、街(シティ)で起こるあんなことやこんなことを切り取るWEBマガジン。シティカルチャーの住人であるミーティア編集部が「そこに音楽があるならば」な目線でオリジナル記事を毎日発信中。さらに「音楽」をテーマに個性豊かな漫画家による作品も連載中。

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