SEKAI NO OWARIが8年ぶりに帰還、髭
男、King Gnuら新星も躍動した『SWE
ET LOVE SHOWER 2019』3日目

SWEET LOVE SHOWER 2019 DAY3 2019.9.1 山中湖交流プラザ きらら
Saucy Dog 撮影=岸田哲平
「おはようございます!」。最終日Mt.FUJIのトップバッターを飾ったSaucy Dogは石原慎也(Vo/Gt)の爽やかなあいさつから。不安や痛みを振り切るように駆け抜ける「真昼の月」、鋭い口調で自分自身を鼓舞する「ゴーストバスター」と、アッパーな楽曲を畳みかけて、朝イチのお客さんの目を覚ましていく。石原の伸びやかな歌声に寄り添い、秋澤和貴(Ba)とせとゆいか(Dr/Cho)が繰り出すシンプルなスリーピースのサウンドが“あの一瞬”の忘れられない景色を鮮やかに描き出す。去年、一昨年のFORESTを経て、初のMt. FUJI出演だが、あいにく曇り空のため富士山は見えない。「次こそ富士山を見たい」と、来年へと想いを託すMCを挟み、ラストは代表曲「いつか」。揺らぐテンポで紡がれるバラードは、互いの呼吸を知り尽くした3人にしか伝えられない歌だった。
Saucy Dog 撮影=岸田哲平
Age Factory 撮影=AZUSA TAKADA
FORESTのAge Factoryは、3回目の出演。彼らの鳴らす半ば轟音、半ば絶叫のようなハードコアサウンドは、一体感と享楽的なビートが求められがちなフェスの場ではあきらかに異質ではある。しかし己と向き合い、お前はどうだ?と問いかけてくる彼らの音楽は今のシーンに絶対必要であり、だからこそ、彼らはこのフェスに呼ばれ続けているのだ。「聞こえるか?」と繰り返す清水エイスケ(Vo/Gt)の問いかけ。マイクに乗っかる、指の腹で弦を弾いた時のブチッ!という音。怒りを言葉に込めた「Puke」のフリースタイル。「HIGH WAY BEACH」などで垣間見える美しいメロディセンス(意外にも野外のロケーションが似合う曲も多い)。瞬間を刻み込む3ピースの弾丸に人知れず撃ち抜かれた者がこの日も存在したことだろう。
Age Factory 撮影=AZUSA TAKADA
Official髭男dism 撮影=西槇太一
人でいっぱいのMt.FUJIにOfficial髭男dism。1曲目「ノーダウト」はイントロの時点ですっごい歓声。ブラス隊+パーカッション込みのカラフルなサウンドでみんなのハートを根こそぎ掴むと、「FIRE GROUND」ではバンドの情熱的な一面が剥き出しになり、小笹大輔(Gt)は長尺のソロも披露した。「115万キロのフィルム」は冒頭が藤原聡(Vo/Pf)の弾き語り。「僕は助演で監督でカメラマン……そしてバンドマン、バンドマーーーン♪」と豊潤な歌声を空へ放つと、今度は「Stand By You」でシンガロングを起こす。そして「Pretender」からの「宿命」で終了。大きな音楽愛で観客を抱きしめピースフルな空間を創りつつ、バンドとしての力強さで熱狂させ、確かなテクニックに裏打ちされたアンサンブルで魅せる。完璧なステージだった。因みに彼らは今年初出演。この堂々とした佇まい、どこから来ているのだろうか。
Official髭男dism 撮影=西槇太一
King Gnu 撮影=岸田哲平
引き続き、Mt.FUJIは超満員。前出のOfficil髭男dismがポップミュージックの化身だとしたら、続くKing Gnuはロックの革命児だ。魅惑的なカリスマ性を持つ4人が登場しただけで会場から「かっこいい……」と呟きが漏れる。ライブは常田大希(Gt/Vo)が拡声器から発する歪んだメロディが鋭利な異物感を生んだ「Slumberland」を手始めに、「Vinyl」「Prayer X」へと、いま、King Gnu初見のお客さんが絶対に聴きたいであろうナンバーを連発。美しくも歪なバンドサウンドは音源以上に衝動的で泥臭い。井口理(Vo/Key)が歌い出した繊細なファルセットに息を呑んだ「白日」に続けて、生命力あふれるリズムにのせて、“命揺らせ”と躍動する最新ナンバー「飛空艇」へ。時代が注目するムーブメントの渦中にあってなお、バンドの新機軸のナンバーで現在地を更新する攻めの姿勢に唸った。
King Gnu 撮影=岸田哲平
東京スカパラダイスオーケストラ 撮影=西槇太一
スペースシャワーTVと同じく、デビュー30周年の東京スカパラダイスオーケストラは「DOWN BEAT STOMP」で陽気にスタートした。この日は3組のゲストを呼ぶことを事前に告知していた彼ら。「星降る夜に」で招かれたOfficial髭男dismの4人(藤原以外の3人も歌うレアな展開)が大先輩にあたるスカパラと初々しい絡みを見せ、久々の共演だという後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)は「Wake up!」の歓喜に満ちたサウンドで観客の心も身体も踊らせる。そして「もうメンバーのように思ってます」と言わしめたTAKUMA(10-FEET)は「閃光」にて、おどけてポーズを決めたり、スタッフから奪ったカメラでスカパラメンバーや観客を撮影したりと、自由なテンションでステージを謳歌していた。さらに「明日以外すべて燃やせ」で宮本浩次がサプライズ出演! 生命力溢れるボーカルを聴きつけ、あちこちからさらにたくさんの人が駆けつけてくる。個性様々なゲストをでっかく抱きしめ、みんなが楽しい空間を鉄板で作り出すこのバンドの懐の深さには改めて恐れ入る。ラストはメンバーのみに戻り「ペドラーズ」で終了。
東京スカパラダイスオーケストラ 撮影=西槇太一

■中村佳穂
中村佳穂 撮影=AZUSA TAKADA
異才、奇想天外、自由人。今年初めて誕生した「GOOD VIBES」という名前のステージに現れた中村佳穂は、開口一番「カラオケで歌ってた人と同じ土地を歩いてる!」と、初登場のラブシャ出演の喜びを無邪気に伝えた。メロディとラップ、ポエトリーを自由に行き来する即興のフロウに、このあと、Mt. FUJIに初出演するMISIAの「Everything」の一節を入れ込んで圧巻のハイトーンを聴かせると、そこからは完全に彼女の独壇場だった。中村が決めた数に合わせて、サポートメンバーがジャンッジャンッジャンッとリズムを刻んだ「GUM」(最高数は56回!)、鍵盤の弾き語りに細やかに震える美声を聴かせた「シャロン」。変幻自在のビートのなかでバシッと演奏が決まると、「はははっ!」と軽やかに笑う姿も楽しげ。ラスト「きっとね!」まで、「中村佳穂」という音楽で遊ぶ摩訶不思議な時間だった。
中村佳穂 撮影=AZUSA TAKADA

■ASIAN KUNG-FU GENERATION
ASIAN KUNG-FU GENERATION 撮影=岸田哲平
ASIAN KUNG-FU GENERATIONの1曲目は「ULCA」。ゆっくりと呼吸するように起伏するバンドサウンドが大地に広がるようなオープニングだった。この日のセットリストは “8ビートのスタンダードなロックを鳴らす”というバンドのモードを反映したもの。「スタンダード」を終えると後藤正文(Vo/Gt)が「なんかいろいろ話したいことはあるんだけど、言葉じゃ伝わらない感じなんだよね。こうやってゆっくりコードを爪弾いてる方が伝わるときもあるよね。魂が震えてる」と言いながら、「Sweet~♪」とファルセットで歌い始めた。他のメンバーも微かに音を重ね、それはやがてセッションになる。「みんなも自由に歌っていいよ、好きな歌をさ」という後藤の言葉は、集まった人たちにどう響いたのだろうか。MC曰く彼らは、『SWEET LOVE SHOWER』初年度にトップバッターとして出演していたとのこと。ラストの「ボーイズ&ガールズ」には、このフェスとともに歳を重ねたASIAN KUNG-FU GENERATIONだからこそ語れるメッセージが詰まっていた。
ASIAN KUNG-FU GENERATION 撮影=岸田哲平
ストレイテナー 撮影=西槇太一
オープニングSEを吹き飛ばすナカヤマシンペイのビート、そこへ次々に加わっていく日向秀和のベースに大山純とホリエアツシのギター。そうして始まったセッションから、1曲目の「DONKEY BOOGIE DODO」へと繋げば、直前のライブ(盟友・ASIAN KUNG-FU GENERATION)が終わったLAKESIDEの方角からどんどん人が押し寄せてくる。『SWEET LOVE SHOWER 2019』最終日、オルタナ/インディロック好きが大集結。FORESTのトリを務めるのはストレイテナーだ。<それぞれの1日が交差する>という一節が今日、いや、夢のような3日間が終わりに近づく中で、思い思いにこのフェスを楽しんできた観客たちを優しく包んだ「灯り」と、再会を祈る新曲「スパイラル」。「ブチ上がる準備できてるか!」とライブを再加速させて一気に駆け抜けた「Melodic Storm」に「シーグラス」。ホリエがインディーズ時代から共に歩んできたスペースシャワーTVへ贈った「これからも共にカッコいい音楽を鳴らしていけたら」との言葉通り、そこにあったのは歴戦の貫禄をまといながら進化を続けるロックバンドの姿だった。
ストレイテナー 撮影=西槇太一

■MISIA
MISIA 撮影=AZUSA TAKADA
ニューヨークからやってきたバンドメンバー(ベース、ドラム、キーボード、トランペット、トロンボーン、サックス)を従え「SWEET LOVE SHOWERー!」とシャウト。Mt.FUJIトリのMISIAは早速、圧倒的な声量で観る者を驚かせた。前半は「来るぞスリリング」「LADY FUNKY」などファンク/ソウル色の濃い曲が中心。心の赴くままに鳴らす、ゆえにアドリブ多発状態であるバンドのグルーヴに乗っかるMISIAの歌声は気持ちよさそうで、その楽しさが観客に伝播していく。後半では「陽のあたる場所」、「つつみ込むように…」といった初期の名曲が登場。音域は5オクターブと言われる歌声で超高音のロングトーンを披露したり、アウトロに突入してもなおスキャット的なノリで歌い続けていたり、コール&レスポンスをするもその難度に観客がついていけず「今のは難しかった?(笑)」と笑ったりするMISIA。まるで泉みたいに、歌が、音楽が、溢れ出してやまない人みたいだ。30周年を迎えたスペースシャワーTVを「ハッピーバースデートゥーユー♪」とお祝いしたあと、ラストには「アイノカタチ」を届けた。
MISIA 撮影=AZUSA TAKADA
SEKAI NO OWARI 撮影=古溪一道
荘厳な鐘の音がLAKESIDEに鳴り響いた。いよいよ3日間にわたって5つのステージで数々の熱演を繰り広げた今年の『SWEET LOVE SHOWER』をSEKAI NO OWARIが締めくくる。実に8年ぶりとなる3度目の出演。めくるめくファンタジーワールドへと誘った「炎と森のカーニバル」から、Saori(Key)が奏でるクラシカルなピアノが楽曲に横たわる狂おしい狂気を増幅させた「ANTI-HERO」へと展開するなど、楽曲ごとにまったく異なる景色が描き出されていく。
SEKAI NO OWARI 撮影=古溪一道
中盤、「僕にとって原点みたいな大切な曲」と紹介してから届けた「銀河街の悪夢」は鮮烈だった。憂いを帯びたメロディにのせて、Fukase(Vo/Gt)が自分自身の苦しい経験を綴り、最後に“強くなれ同士よ”と歌うその楽曲は、孤独な絶望のなかでも必死に生きようとする人への救いの歌だ。そこから、「RPG」「Dragon Night」へ明るく突き抜けていく昂揚感は素晴らしかった。圧倒的な現実感を突きつけながら、悲しいほど現実離れしたSEKAI NO OWARIの音楽が特大のシンガロングを巻き起こす、圧巻のフィナーレだった。

取材・文=秦理絵(Saucy Dog、King Gnu、中村佳穂、SEKAI NO OWARI)
蜂須賀ちなみ(Age Factory、Official髭男dism、東京スカパラダイスオーケストラ、ASIAN KUNG-FU GENERATION、MISIA)
風間大洋(ストレイテナー)
撮影=各写真のクレジット参照
なお、スペースシャワーTVでは、10月5日(土)、10月12日(土)、10月19日(土)に3週連続でこの模様を3時間ずつオンエア。会場に行けた人も行けなかった人も、80,000人が集まった当日の熱気を体験できること間違いなし、合計9時間の特別番組をお見逃しなく。
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