伊藤今人&多和田任益に直撃~梅棒の
出世作『ウチの親父が最強』が2019年
秋、新たによみがえる!

「踊りは気持ちだ!」をコンセプトに物語性のあるダンスをJ-POPと共に贈るエンタテインメント集団・梅棒。ダンス、演劇といった枠を超えて疾走する彼らの最新舞台が、2019年9月~10月、東京、福岡、三重、大阪で上演する梅棒EXTRAシリーズ『ウチの親父が最強』(2014年初演)だ。SPICEでは、梅棒の金字塔に新たに挑む作・総合演出・出演の伊藤今人(梅棒)、新進気鋭の俳優・多和田任益に創作プロセスや公演への意気込みを聞いた。

絶好調! 梅棒スタイルの源泉とは
――梅棒は2001年結成です。J-POPを使いながらストーリーもある独自のスタイルはどのようにして生まれたのですか?
伊藤今人(以下、伊藤):梅棒を結成したのは大学生の時です。上手なストリートダンサーにどうやったら並び立てるかを考え、耳なじみのある曲で分かりやすい音取りと面白いコミカルな動きで作品を創ろうと思ったのがJ-POPを使うようになった理由です。最初は音ハメみたいなことをしていましたが、ジャズダンスのサークルだったのと自分が日本大学芸術学部で演劇を学んでいたので、自然と演劇的な要素を混ぜていきました。3年目くらいでJ-POPを使いミュージックビデオみたいに一話完結の話を作るようになったのが今のスタイルの根源です。
――2012年に劇場で一本物の公演を始めるまで間がありますね。
伊藤:5分で1曲のJ-POPを使って踊り、コンテストに出ていましたが、そこからどうしていくかという話になりました。30歳の節目で梅棒を続けるどうかの決断を迫られたんです。そこで劇場公演に活路を見出し、1時間半の舞台をやるようになりました。
伊藤今人
――公演規模が大きくなってきていますが創り方に変化はありますか?
伊藤:1回目、2回目はほとんど僕がストーリーやプロット、細かい場面の設定、選曲、振付の基本を考えていました。そこから僕よりも面白い振付をできるメンバーも増えてきたので、それぞれのパーソナリティに合うように分担し、総合的に僕が見る形になりました。最初の頃は1時間半の作品を創るのに2か月くらいかかっていたのですが、今では進め方が上手くなってスピードは速くなりましたね。最初の頃は我々のノンバーバルな舞台をお客さんが理解できるのか、ストーリーについてこられるのかが分からなかったんです。後からあの場面が足りない、この場面が足りないと壊す作業が続いていましたが、今では10曲目でこれをやるなら2曲目で何が必要だなとプロットを創る段階で定まります。
――J-POPといっても時代やテイストの異なる曲をつなげて一本の物語を生み出していく過程に興味があります。伊藤さんの頭の中はどうなっているのだろうかと。
伊藤:自分一人の脳味噌だと行き着かない特殊な創り方をしています。僕が最初のプロットを持ってきますが梅棒の11人で話し合うんです。ここはこう思う、ここは伝わらない、こっちに寄せるべきだというふうに合わせていきます。そうすることによって多くのお客様に伝わる表現にしていくのが自分たちのスタイルです。
多和田任益ありきでスタート
――多和田さんは梅棒をご覧になっていますか?
多和田任益(以下、多和田):『Shuttered Guy』(2018年)を観させていただきました。前から舞台共演者とかから梅棒さんの噂をよく耳にしていて、「お前絶対に好きだよ!」と言われていたんです。舞台を拝見し、言葉で表せないほど本当に心が躍りました。梅棒さんと観客が一体になっていて、一番後ろの席で見ていたのですが、そこまで飛んでくるエネルギーを感じて。元々ダンスが好きで、ヒップホップやジャズを習っていたりもしたのでノンバーバルも何度が観ていたのですが、これまで感じてきたのとはまた違うエンタテインメント性に強く惹かれて、演劇的にも楽しめるし、いろいろな楽しみ方があって、終わったあとにアトラクションに乗ったような気持ちになって大興奮しました。すぐに自分のマネージャーに連絡して「どうやったら出られるんですか?」と言っていましたね。だから今回出させていただけると聞いてびっくりしました!
多和田任益
――今回再演する『ウチの親父が最強』は梅棒の中でどのような位置付けの作品ですか?
伊藤:第2回公演で初演しました。第1回公演『スタンス』は3つのストーリーが絡み合っていくオムニバス的な作品だったので、初めての一本物でした。その時に悩んだのが、普遍的で誰もが共感できるテーマでないとノンバーバルでは伝わらない恐れがあること。そこで皆が知っている家族ものになりました。家族にちょっとした災難が降りかかるというお話ですが、僕自身エブリデイ・マジックというか日常の中にちょっと不思議なことが起こる世界観が好きなんです。今思うとキャラクターや世界観の説明に凄く時間を割いています。ノンバーバルなだけに世界観を理解してほしい、説明しなきゃいけないということで、起承転結の承が丁寧になっている。その代わり転結が無理やりというか嘘でしょう?みたいな(笑)。今回は転結が緩やかになりますが、曲順を見るだけでも苦労して創ったことを思い出します。当時の振付も使っていますが、初々しいな~と(笑)。5年前の自分をアルバムで見ながら創っているような懐かしい気持ちになりますね。
――多和田さんが出演される経緯は?
伊藤:EXTRAシリーズは実行委員会主導の企画で、本公演とは違ったものをやろうとしていました。演目より先に決まっていたのが、多和田くんでいくこと。プロデューサーサイドが「最高の主役を用意しました!」ってことで、フカヒレ(=多和田)を使って料理するみたいな(笑)。『ウチの親父が最強』に多和田くんにピッタリの役があったんです。一文字(いちもんじ)という役でチョイ悪なんですが、多和田くんは普段カッコいい役を普通にやっているから、ちょっと違う役をやってもらいたい。そういうわけで、最終的にこの作品を再演することになりました。いつかやろうと思っていましたし多和田くんにハマる役があるということで。多和田くんありきです。
多和田:もの凄くうれしいんですけど!
多和田任益
絶妙のチームワークで創り上げる梅棒ワールド
――リハーサルの手応えはいかがですか?
多和田:体は疲れてくるんですけれど、テンションは上がっていて、今までにない感じです。稽古場に向かう足取りも軽くて。
伊藤:今まではそうじゃなかったんだ?
多和田:稽古が楽しいってことは他でももちろん感じてきましたが、作品・テーマが重いと、演じていて気持ちが沈んでくることもあったり…。
伊藤:演出家が嫌いだったりとか?
多和田:それはないです(笑)! 今回は今人さんを中心に、面白い作品を作ろう!っていう全員の空気を常に感じてますし、ポジティブな気持ちで毎日行けるんですよね。ただこの間、暑さにやられてテンションが低いまま稽古場に行ったら今人さんに「おい、どうした?」と突っ込まれ、すかさず、「君が出たいといったんだからね!」とおっしゃってくれたのには笑いましたし、愛があるなと。
多和田任益
伊藤:(爆笑)
多和田:飴と鞭が激しすぎるんですね。梅棒はファミリー感が強いです。絆もそうなんですが培ってきた年月が長いというのもあって、自分たちのやってきたことに自信を持っていらっしゃるでしょうし、もっともっと上がっていきたいという気持ちも感じるので凄く刺激的です。お芝居が好きになって、今いろいろなことに挑戦している中で新たな表現を感じ取れる梅棒さんに出させていただけけることはプラスですし、自分はまだまだだなと感じます。皆さんが親身になって寄り添ってくださるのは有難いし、チームワークも高まっていて、もう梅棒さんの虜になっています。
伊藤:いつでも入ってくれて構わないよ!
多和田:そうだ! 今日絶対に言おうと決めていたことがあるんです! 稽古が始まってまだ中盤戦くらいなのですが、既に次に絶対に呼んでほしいと思っているんです。
伊藤:どうしようかな~(笑)。
多和田:「いつでも」って言ったじゃないですか(笑)!
伊藤:今回は梅棒メンバーがほとんどで、客演も多和田くん、横山結衣(AKB48チーム8兼チームK)、永洞奏瑠美は梅棒が初めてだけど、パイレーツオブマチョビアンと上西隆史は梅棒を知ってくれていてメンバーのように動いてくれているので空気がいいですね。多和田くんもなじんで、また次も出たいというくらいの前向きなモチベーションで来てくれている。今回は”ウェイ”な感じでやっています。
伊藤今人
多和田:”ウェイ”の三文字で伝わりますね(笑)!
伊藤:つまりは、ノリがよくて男の部活っぽく楽しくやっています(笑)。でも多和田くんに関してはなかなか”ウェイ”ができない、ふざけることが一番許されない役なんですよ。この世界においてもっともまともなのが多和田くんなので。ストレスが溜まるかもしれませんが、懐メロ中心の選曲の中に1つ新曲が入り、彼が登場するのでお楽しみに。
――本番に向けての抱負をお願いします。
多和田:梅棒さんに出させていただけることに感謝しつつ、与えられた責任を果たしていきたいです。僕がきっかけで興味を持つ方がいらしたら僕が味わったような感動を味わってほしい。梅棒さんの魅力がもっともっと広がるべきだと思うんです。ここまで面白さを追求しているノンバーバルはないと感じているので、それを伝える材料として光を放っていけたらなと。まずはしっかりと自分自身が楽しんで、この作品を生きていきたいですし、カーテンコールで皆さんの笑顔を見られたらいいなと想像しつつがんばります。稽古場で見ていてもユーモアのある人が多すぎて目が足りないんですよ。ぜひ何回でも見に来ていただきたいです。
伊藤:絶対に面白くする自信があります。客演をただのゲストとしてではなく生かしてファンの方々にお返しすることをプライドとして持っているので、多和田くんをちゃんと作品に生かしたい。フカヒレの話をしましたが、フカヒレ目当てで来た人たちに「この店の飯は旨かったね。そういえばフカヒレも美味しかったね」と後で気が付いてもらうような生かし方ですね。多和田くんはもう一部トロトロに溶けかけています。なので、あらためて多和田くん自身の良さを感じていただき、それを生かした梅棒もよくやったと思ってもらいたいですね。
左から 多和田任益、伊藤今人
取材・文=高橋森彦 撮影=荒川潤

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