chay『Lavender』。女性が大人になっ
ていく不安や迷いを、全部歌にして

11月13日に、chayが2年5カ月ぶりとなるフルアルバム『Lavender』をリリースする。その1stリード楽曲として「砂漠の花」が配信された。松尾潔×川口大輔という数々の名曲を生み出してきたタッグにより製作されたこの曲は、これまでのchayのイメージを覆すシリアスなR&Bナンバーだ。『Lavender』にはこうした大人のラブソングから、これまでのchayらしいガーリーな楽曲までバラエティ豊かな楽曲が収録されているが、そのどれにも「ある共通点」があったという。chayが20代最後のアルバムとなる『Lavender』に込めた思いを聞いた。

Photography_Shunsuke Imai
Interview & Text_Osamu Onuma
chay 『砂漠の花』 MV

「砂漠の花」は今の年齢にあったラブソ
ング

――11月13日に3rdアルバム『Lavender』がリリースされます。リード曲の「砂漠の花」を聴きましたが、驚きました。これまでのchayさんのイメージとは違う、大人びたシリアスな楽曲ですね。

chay : 今の自分の年齢に合ったラブソングになったなって思います。これまではもっとガーリーで、乙女心を歌った曲が多かったけど、こういうちょっと大人なラブソングははじめてでしたね。

――作詞作曲は数々のヒット曲を手がけた松尾潔さんと川口大輔さんのタッグです。

chay : 私自身がお二人のタッグの大ファンで、いつかお二人に曲を書いてほしいと思っていました。好きなのは、最近だとシェネルさんの「Destiny」とか、JUJUさんの「ラストシーン」とか……。ああいう大人っぽい楽曲がアルバムにもスパイスとしてあったら良いなと、松尾さんと川口さんにもその思いを伝えて。お二人からも「今までのchayになかったような方向性の楽曲にしたい」と言われていたんですけど、まさかこういう曲になるとは! いい意味でびっくりしました。

――イントロを聴いたとき、思わず違う人の曲を再生したのかと思いました(笑)。それくらいこれまでのイメージと違いますよね。

chay : これまでは歌謡曲テイストのポップスが多かったけど、今回は思いっきりR&Bっぽい楽曲ですもんね。じつは歌い方も少し変えているんです。今までの楽曲を歌うときの癖をあえて抑えて、なるべくシンプルに歌うようにしています。川口さん松尾さんからアドバイスをいただいたのが、歌のフレーズが終わるところできちんと声を止めるってこと。私は割と吐息交じりで終わらせる癖があるんですけど、そうすることで歌にもキレが生まれるんです。

――「砂漠の花」はメロディの起伏が少ないぶん、リズムでしっかり表情をつけているんですね。

chay : そうですね。自分で作る曲はそれこそ高低差のあるメロディが多かったので、今回のような曲を歌うときの表情のつけかたはすごく勉強になりました。

これまでのMVに、男性が登場しなかった
理由

――chayさんの中でも新機軸の楽曲ですが、MVもこれまでにない仕上がりになっているとか。

chay : 今回、はじめてMVで男性に登場してもらったんです。私はラブソングが多いけど、MVの中に男性を登場させないことにすごくこだわりを持っていて。リアルになりすぎちゃう気がするんですよ。もちろん、歌詞の内容は実体験を歌っているんですけど、MVは非日常的でエンタメ的な世界観を作り込みたくて。chayという存在もある種キャラクター的でありたいなと思っていて、chayを見ている間は日常を忘れて、別の世界に連れて行ってあげられるような存在でいたいと思っているんです。

――そんな中、今回男性が登場するMVを作ったのはどんな理由があったんでしょう。

chay : 世間的なchayのイメージとはがらっと違うチャレンジングな楽曲なので、MVでも新しいことに挑戦したいなって。「砂漠の花」ではいい意味で生々しい恋愛を歌っているし、それを生かしながら新たな世界を作っていきたいと思いました。

――新しいことに挑戦するとなると、chayさんのMVの中での立ち居振る舞いも変わってきそうです。8月には出演した映画『ダンスウィズミー』が公開されていますが、そこでの演技の経験も生きていると感じますか?

chay : そうかもしれません。今まで、演技は自分とは畑が違うんじゃないかと思っていました。でも、映画がきっかけで演じる楽しさを知ったし、表現の幅が広がりましたね。

――chayさんはストリートミュージシャンの山本洋子役を演じています。

chay : 洋子、相当パンチの効いたキャラクターですよね(笑)。あまりにも世間のchayのイメージとはかけ離れているので、もしかしたらファンの人が離れてしまうんじゃないかと思っていました。だけど公開されてみたら、「今までchayって興味なかったけど気になった!」と言ってくださる方がすごく多くて。うれしかったですね。

――自分のイメージとまったく異なる人物を演じることに、抵抗はありませんでしたか?

chay : 逆に自分と近いのに違う人物を演じる方が苦手ですね。かけ離れた人物を演じることに恥ずかしさや迷いはなくて、むしろ思いっきりやりたいタイプ。こんなこと普段やらないからって、めちゃくちゃ楽しんで演じていました。

――撮影の中で印象に残ったことはありましたか?

chay : 映画のなかで、全力で叫ぶシーンがあるんですよ。なかなか「はい叫んで」って言われても叫べないから、監督が「叫びレッスン」をしてくれて。

――叫びレッスン!(笑)

chay : 監督やスタッフの方数人と円になって、一人ずつ「暑いんだよ!」「冷やし中華食いてえー!!」とかって順番に叫んでいくんですね。それで最後に私がセリフを叫ぶっていう(笑)。そのやり方は面白いなって思いました。あとは、劇中では「年下の男の子」「タイムマシンにお願い」といったちょっと懐かしい曲をカバーしたり、路上ライブのシーンでは即興で曲を作って歌ったり(笑)。良い経験になりました。

『Lavender』のタイトルに込めた思い

――アルバム『Lavender』についても聞かせてください。ビジュアルイメージが紫色で統一されていて、大人っぽいイメージですね。

chay : アルバムが出る時、私は29歳になっていて。数字的なものは特に気にしていないけど、今回もこれまでのガーリーなイメージのままというよりは、大人っぽいアルバムにしたいと考えていました。楽曲からもそれを感じ取れると思います。

――「砂漠の花」含め、新曲は9曲。他にはどんな曲が入っているのでしょう?

chay : ジャンルは本当に様々で、最近の洋楽テイストのサウンドも、武部聡志さんによるスタンダードなポップスも収録されています。今回、武部さんがアルバムを全面プロデュースしてくださっているのですが、やっぱりすごく心強かったです。いつも的確なでわかりやすいアドバイスをくださるし、私の相談に対していつも迷わず断言してくれるんですよね。新曲が多くて大変な制作を乗り切れたのは武部さんのおかげだし、このアルバムを出す上で自信にもつながりました。

――前作の『chayTEA』から2年5ヶ月ぶりとなるアルバムですが、どうして『Lavender』というタイトルをつけたのでしょう?

chay : 私のアルバムは毎回ジャンルにとらわれないバラエティ豊かな楽曲が揃っているのが特徴で、今回も色々な楽曲が入っています。だけど今回、改めて楽曲を並べてみると、20代後半の女性が感じる漠然とした不安や焦り、迷いのようなものがすべての曲に共通して入っていることに気づきました。意図していたわけではなくて、全体を眺めてみてはじめて気づいたんです。そういう共通点を見出せたのは、これまでのアルバムにはなかったことでした。

それなら、そのアイデンティティの迷いをアルバムのテーマにしようと思いました。だけどそれをそのままタイトルにするのではなくて、chayらしい言葉で言い表したかった。そんな時、ラベンダーに「期待」「繊細」「疑い」「許しあう愛」「優美」といった花言葉があることを知りました。いろんな意味があるけれど、どれも今の自分が曲で歌っている気持ちと重なる言葉だと思って、タイトルにしようと決めました。

――chayさん自身も20代後半にさしかかり、そういった迷いや不安を抱いていたのでしょうか。

chay : そうですね……この仕事をしていると幅広い年代の人と一緒に仕事をするから普段は考えないんですけど、久しぶりに同級生の友人たちで集まると、結婚や出産、仕事のことで「これからどうしていこう」「このままでいいのかな」って悩んでいる人が多くて。私自身もこれからアーティストとしてどうなっていくべきかとか、不安があったんだと思います。

曲を書く時って、その時にしか書けない気持ちが絶対にあるはずなんです。昔書いた曲を今聞くと、こんなこと考えてたなって懐かしく思ったり、今とは考え方が違っていたり。今回も、20代後半のこの時期にしか書けない気持ちがあったはずで、それを一つ一つ形にしていったのが『Lavender』なんだとおもいます。

――以前『大切な色彩』リリース時のインタビューで、「冒険するのがすごく楽しい」と語っていました。不安を抱えながら冒険し続けた、ある意味その集大成的なアルバムになっていそうですね。

chay : そうかもしれません。「砂漠の花」も冒険した楽曲だったし、その他の新曲も挑戦したサウンドが多いです。最近は映画に出演したり、本も出させていただいたりと、音楽以外でも新しいことにチャレンジしていて。その気持ちが音楽にも反映されていると思います。

あっ、今話していて気づいたけど、『Lavender』が20代最後のアルバムになるんですね。……でも、そういった意味では悔いなしです! 今抱えている気持ちは全部このアルバムに詰めたし、武部さんや松尾さん、川口さんといった素晴らしいクリエイターの方々と一緒に一枚を作り上げていく経験ができたこともすごく大きい。良い経験をさせてもらったなって感じます。

『Lavender』は同世代の女性が抱える悩みをテーマにしていますが、そこには私と同世代の女性にかかわらず、どんな人でも感じる気持ちがあると思います。スタンダードなポップスがたくさん入っているので、性別も年齢も関係なく、たくさんの人に聴いていただけたら良いなと思っています。

〈リリース情報〉

「砂漠の花」配信URL
https://chay.lnk.to/sabaku-no-hana


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chay『Lavender』。女性が大人になっていく不安や迷いを、全部歌にしてはミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。

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「Music meets City Culture.」を合言葉に、街(シティ)で起こるあんなことやこんなことを切り取るWEBマガジン。シティカルチャーの住人であるミーティア編集部が「そこに音楽があるならば」な目線でオリジナル記事を毎日発信中。さらに「音楽」をテーマに個性豊かな漫画家による作品も連載中。

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