【DIR EN GREY インタビュー】
広大なキャンバスに脈打つ5人の鼓動
アルバム『The Insulated World』から約1年、DIR EN GREYにとって久々となる新曲「The World of Mercy」が世に放たれた。ツアー開幕を1週間後に控えるという緊迫した空気の中、Die(Gu)が制作の裏側について語ってくれた。
着地点が見えない
“10分”との格闘
今日はツアーのリハーサル初日だそうですね。
そうなんですよ。だから、このあと初めて「The World of Mercy」をバンドで合わせるんです。レコーディングの時には1度も合わせてないですからね。すごいでしょ?(笑)
メンバーも初めてこの曲の生身の姿に向き合うというわけですね。このシングルはアルバム『The Insulated World』から約1年を経てのリリースとなるわけですが、春にはアルバムのツアーもあったので、そこでひと区切りして、今回のシングルから新たなフェーズのスタートかなと思ったのですが。
あまりそういう意識はなかったかな。今回のシングルの曲作りは年始からやっていて、“この曲で!”って決めて制作作業に着手したのは結構最近という印象ですね。候補曲が他にも何曲かあったし、そちらもやりながらだったから時間は掛かりましたよ。ツアーと並行して制作していたし、いろいろなことを考えながらやっていましたから。
年始からの曲作りというのは、次のアルバムが念頭にあったのですか?
アルバムというよりは、まずはシングルですね。どういうものにするかは決めずにそれぞれが曲出しをして。そこからどう転がっていくかで、自ずと方向性が定まってくるだろうと。
どなたが原曲を?
まず薫くんの原曲とShinyaの曲があって、それぞれプリプロしてたんだけど、シングルとして長尺の曲はどうだろうという案が出てきたので、そこに照準を絞ったというか。その2曲のテイストが似たところもあったので、これを合体させて長編にしてみようと。
長尺にしようという案は誰から?
京くんですね。前作にも長編の曲がなかったし…あっても7分台の「絶縁体」ぐらいだったから。あと、前回と前々回のシングルが両方ともわりとコンパクトな曲だったし。
とはいえ、まずシングルというフォーマットとの格闘があるわけですね。
シングルの定義ですよね。さまざまなタイプの曲をシングルで出してきたので、別に何でもいいっちゃいいんですけど(笑)。かと言って、また同じようなコンパクトな曲を出したら、DIR EN GREYのシングルはそういうものと決め付けられそうで、それも違うなと。そこで“長尺のシングルというのはなかったよね”と。ただ、10分もあるとね、まぁ着地点がなかなか見つからない(笑)。答えが見えないんですよ。
最初に10分という縛りがあると、キャンバスが広すぎてどうにでも描けてしまう分、逆に難しそうですよね。
本当にその通り! 10分にもなると、正直言ってアレンジ段階では何度も通して聴かないんですよ。セクションごとに詰めていくんでね。途中で10分聴いて判断するというのができなくなってくる。
僕が受けた印象としては、構築はしているんだけど生身な感覚はあって。しっかりと呼吸が感じられる曲だなと。
うんうん。やっぱりね、歌なんですよ。歌ありきで構成を考えていったから、そう感じてもらえたのかもしれないです。
長くて展開もあるけど、やはり歌モノですよね。
そう。いきなり歌から入って、楽器が入ってくるのは途中からやしね。でも、そんなに複雑にはしていなくて。そこはアレンジ的によくできたと思います。長編の中で…まぁ、シンプルとは言わないけど、どうしっかりと的を得た構成にするかがポイントでしたね。それを10分間の中で達成するのが、本当に難しかった。
展開的なところで言うとセクションの繰り返しがないので迷路に迷い込んだ印象はないし、音の重ね方の部分ではすごく見通しが良くて、どの楽器もしっかりと聴こえますね。
繰り返しがない分、音符…要は弾く音が多いんですよね。それだけにクリアーに聴かせることは強く意識しました。楽器の縦ライン…ヴォイシングに関してはかなり緻密に計算しましたよ。こういう作り方は久しくしてなかったかな。『The Insulated World』や『ARCHE』(2014年発表の9thアルバム)ももっとシンプルだったし。その意味では『DUM SPIRO SPERO』(2011年発表の8thアルバム)のあたりに近い作り方だったかも。
構築美ですね。
まさに。これが次につながっていくかといえばまだ分からないけど。
もし次にシングルが来るとしたら、想像が付かないですね。
今回のでシングル3枚分ぐらい出した気分ですよ(笑)。もう次はアルバムでいいかなって。次にシングルって出しにくくなりますよね、少し時間を空けないと。3分の曲だったら“3分かよ!”ってなるし、もっと長い曲にしたら“だったらアルバム作ってくれよ!”ってなる(笑)。