FIVE NEW OLD インタビュー 会心の
2ndアルバム『Emulcification』を世
に出した彼らの視界は

かつてはパンク/メロコア・シーンから登場しながら、やがて最新のブラック・ミュージック、ダンス・ミュージックを取り込んだエクレクティックなポップ・サウンドに接近し、近年ではLUCKY TAPES踊Foot Worksら気鋭のアーティストたちと共に、新世代の音楽シーンを切り拓く先頭グループに位置する4人組。FIVE NEW OLDのおよそ1年半ぶりのセカンド・アルバム『Emulcification』は、洋楽ライクな精密なグルーヴと斬新なビートの解釈に、80's感たっぷりの懐かしいグッド・メロディや音色を加え、さらに“人は矛盾を抱えながら生きていく”という哲学的なテーマを歌詞に落とし込んだ、重層的な魅力あふれる会心の1作。日々劇的に成長を続けるバンドの現在位置について、HIROSHI(Vo/Gt)、WATARU(Gt/Key)、SHUN(Ba)、HAYATO(Dr)に話を聞いた。
――『Emulcification』の意味がわからなくて、とりあえず辞書で調べたんですけどね。
HIROSHI:すみません(笑)。
――エマルシフィケーション=乳化。混ぜて安定させる、ということでしたっけ。
HIROSHI:極限まで混じりあった状態に近くする、みたいなことですね。ジャケットのデザインにも、小さい泡のようなものがあるんですけど、水と油を混ぜるとだんだん粒子化してくる。極限まで粒子化させて、お互いが均等に存在しているかのように安定させる。さっき野村義男さんのラジオに出て、この話をしたときに、コーヒーフレッシュも同じ乳化作用を使っていて、乳化で安定すると腐らないらしくて、「だからコーヒーフレッシュは冷蔵庫に入れなくていい」という話を聞きました。だからこのアルバムも腐らない。賞味期限切れ無しで。
――うまいこと言うなあ。
HIROSHI:今回は、珍しくタイトルが先に決まってから、制作に入ったんですね。音楽的な様々な要素を、FIVE NEW OLDとして乳化させていくという作業と、もう一つは、ちょっと飛躍した話ですけど、AIとかビッグデータとかが発達して、自分が白黒つけなくても、周りが「これが正解だよ」というパーセンテージを示してくれる時代の中で、未だに人の心は矛盾を抱えている。こっちが正しいと言われても「これがやりたいから」という、矛盾を抱えながら生きていくのが、人間がこの先も人間である唯一の証明かなということを感じて、だからこそ、今の気持ちをそのまま残すことがいいと思ったんですね。
――メンバー全員にも聞きましょう。どんなアルバムですか。
HAYATO:1曲1曲の役割分担がしっかりした曲が集まった、というのが僕の印象ですね。僕ら的には、2曲目「Keep On Marching」を派手に担いで、その他の曲でやりたいことをやったり、そういうアルバムだと思います。前回よりもバージョン・アップできたかなと思います。
――前回はバンド感を強調した作品だと思っていて、今回はさらにそこを超えて、バンドを突き抜けた感じがするんですね。HIROSHIくんの歌とピアノだけみたいな曲もあるし、ホーンや弦を入れた大所帯になっている曲もある。去年SHUNくんが入って、バンドの形が固まることで、また外に向かって広がり始めた感じがすごくしてますね。SHUNくんの思いは?
SHUN:正式メンバーになって1年弱の時点で、このアルバムを作り始めたんですけど、それまでサポートやアレンジャーとして入っていた時の、俯瞰で見ているようなポジションもありつつ、メンバーとしてみんなが得意なことと不得意なことが見えてきて、「自分はこういうことをやるべきだ」「ここはメンバーに任せたほうがいい」とか、そういうことを考えられるようになったんですね。曲数も多いし、HIROSHIくんにはメロディと歌詞に集中してもらって、アレンジや制作進行は任せてもらうということを、かなり意識してやったので。今までよりは、自分の色がより濃く出ているかなと思います。
――ですね。まさに。
SHUN:さっき言ってもらったみたいに、バンドとして固まってきたこともあって、何をやってもFIVE NEW OLDの音だという表現ができるから、すべて生音で録る必要もないし、打ち込みのグルーヴでもバンドの表現はできるという、幅広くいろんな楽曲を作れたかなと思います。
FIVE NEW OLD 撮影=大橋祐希
HIROSHI:制作の部分で預けられる部分が大きいと、僕は違う視点で臨むことができるので、曲作りもジャケット制作も、このあとツアーに出る過程も含めて、すべてを思い描きながら曲と向き合えたのがすごく大きかったですね。隅々まで自分の思いを巡らせることができたのは、メンバーが主導してアレンジを進めてくれたからだと思います。そうすることで、自分はより深いところのポイントを見つけることができました。
WATARU:この1年間、自分たちの楽曲をどう聴いてもらうか、歌ってもらうか。2枚のEPのリード曲「Gotta Find A Light」「What’ s Gonna Be?」に関しては、そういうふうに考えていて、その間に海外でライブもしたので、日本だけでやっていたらわからないことや、現地のバンドと対バンすることで得たものや、サウンドは洋楽だけど言葉はタイ語だとか、中国語だとか、そういうものを目の当たりにしてきたので。「自分たちも負けてられない」と思ったことが、このアルバムにも反映されていると思います。
――WATARUくんといえば、ギター・バトルの曲があるじゃないですか。7曲目の「Pinball」で、大御所ギタリストの是永巧一氏と、堂々と渡り合ってる。
WATARU:そうなんですよ。超楽しかったですね。
――とんでもないスーパー・ギタリストを呼んじゃいましたけど、どんなきっかけが?
WATARU:あのー、僕と家が近所なんですよ。
――あはは。そんな理由か。
WATARU:ふとしたきっかけでお会いすることがあって、ギターの話をさせてもらう仲なんです。前々回のツアーで、いろいろ相談したことがあって、それ以来ふとした瞬間に電話がかかってきたりとか、そんな関係なんですけど。今回、他のギタリストと何か一緒にやりたいと思ったときに、自分のギターの師匠であるコレさんに、80年代当時の感覚をこの曲でやったら面白そうだなと思ったのが、「Pinball」だったので。シックとか、ナイル・ロジャースとか、「あのカッティングはどうやってるんですか?」とか聞きながら、一緒にアレンジを進めていきました。
HIROSHI:「80年代はこういう録り方をしてたよ」という話を聞きながら、2019年にそれをどうやって表現するか?を一緒に考えてくれました。個人的に一番面白いなと思ったのは、エンジニアもベテランの方なんですけど、ギタリストとエンジニアのベテランの方が作るバチバチとした空気感が、お互い何も言うわけじゃないけど、そのテイクに対して勝負をしている、何とも言えない空気感があって、そこに僕はグッときました。演奏のすごさはもちろんですけど、一番いいテイクを今ここでどうやって収めるか、お互いのやりとりがすごく印象的で。
WATARU:むちゃくちゃ勉強になりましたね。
FIVE NEW OLD 撮影=大橋祐希
――元々80's的な音が好きだと言っていたけれど、どんどん溶け込んでいると思いますよ。「Pinball」もそうだし、「Always On My Mind」「Fast Car」「Please Please Please」とかも。
HIROSHI:その時代の音をそのまま持ってきて、リバイバルさせるような曲もあるんですけど、それが自分たちの中にどんどん入って来て、時代感だけトレースしました、というものではなくなってきていると思います。
――確かに。個人的に5曲目の「In/Out」が好きなんだけど、これも懐かしさと新しさのバランスが絶妙。
HIROSHI:「In/Out」は元々カントリー・ソングみたいなものを作って、それをSHUNくんに預けたら、コーラスをゴスペルっぽくしたら面白いんじゃない?と言われて、やってみたらこうなった。
HAYATO:リズムもレイドバック系で。
HIROSHI:ヒップホップのサンプリングっぽい感じにしたりとか。「Keep On Marching」や「Magic」にも参加してくれている、LUCKY TAPESのホーン・セクションをやっている3人が入ってくれて、トロンボーン、トランペット、サックスを吹いてもらって、良かったところを僕とSHUNくんでチョップして。という作り方です。
SHUN:いい生感を残しつつ、気持ちいいループ感を出すのが難しかった。何回もやり直して、「ここかな?」って、結果、気持ちいいところに落ち着いて良かったです。
HAYATO:これを普通のエイトビートで叩くと、こんなに気持ちいいところには着地しない。僕もこの曲、大好きなんですけど、これをライブでどう演奏するかで、僕のドラマーとしての真価を問われるかなと。今からすごく考えていて……頑張ります(笑)。
FIVE NEW OLD 撮影=大橋祐希
――HIROSHIくんの歌でいえば、「Set Me Free」が本当に最高。魂の歌を聴きました。
HIROSHI:これは2テイクで終わらせました。頭からお尻まで全部歌って、2本録って、「これ以上歌えません」って。曲自体も、デモを作るのに15分かけたかな?ぐらいの感じだったので。
――そんなに速く。
HIROSHI:このアルバムに収録しようと思って書いた曲じゃなかったんですよ。スケッチというか、現実逃避というか……(笑)。アルバムの制作を進めていくと、だんだん形が見えてくるじゃないですか。そうすると、見えている形に縛られていく自分に対して、すごくフラストレーションが溜まって、幅を出したい自分を抑え込むようになって、その思考は良くないなと。「別に使われなくてもいいからとりあえず作っとけ」と思って、「もう自由にしてくれ、ほっといてくれ」という感じで作ったんですね。「Set Me Free」というタイトルそのままに。
――ああ。そういうことか。
HIROSHI:誰にも拾われなくていいと思ったんですけど、メンバーに聴かせてみたら、意外なことに「これ、いいやん」みたいなことになった。最初に話した、自分の正直な気持ちをそのまま吐き出して形にすることが、こんなにスンナリとみんなの心に残るんだなということの大切さを、再確認させられました。そういう意味でも、なるべくきれいに仕上げようとせずに、歌もなるべく早く、できることだけやって終わらせたかったんです。出来上がった時、鳥肌が立ちました。
――これは名曲ですよ。
HIROSHI:鍵盤のアレンジもしていただいて(key:山本健太)、歌のドラマに合うようなアレンジになったのも、良かったと思います。最小限の楽器でここまでやれたのがすごく嬉しかった。
FIVE NEW OLD 撮影=大橋祐希
――「Same Old Thing」も好きだなあ。オートチューンがかかった、今風のサウンド。
HIROSHI:こうやって自分の声をエディットすることもあまりなかったので、アルバムだからこそできたんだと思います。これはTondenhey(踊Foot Works)のアレンジが素晴らしくて、こう来るか!みたいな。SHUNくんが直接やり取りをしてくれたんですけど。
――彼はどういうタイプのアーティストですか。
SHUN:ポップなものもできるし、音楽的にも深いところまで知っていて、バランス感覚がすごくいい、センスある人だなと思いました。元々のデモは、いかにもFIVE NEW OLDっぽいねと言われるような曲だったので、「思い切って好きに壊していいです」というオーダーをしたら、「こう来るか!」というものが返ってきた。FIVE NEW OLDにはあまりない派手な部分も、サビでは表現できているから、すごく楽しい曲になったなと思います。
――あと、忘れちゃいけないKai Takahashi(LUCKY TAPES)くん。「Magic」でがっつりコラボしている。
HIROSHI:僕らとKaiくんは年も近いし、2月にはLUCKY TAPESとツアーも回ったので、コミュニケーションをしっかり取ったからこそ、やりとりもスムーズだったし、僕らのいいところとKaiくんらしさを、どっちも出せて良かったと思います。デモを送った時に、彼がすごく気に入ってくれたのが嬉しくで、ただお仕事でやったわけではなくて、実りのある作業だったなと思います。
――踊Foot Worksもそうだけど、やっぱり、同世代のアーティストたちから受ける刺激は大きいですか。
HIROSHI:大きいですね。彼らが「かっこいい」と言ってくれてるということは、僕たちを信じてくれてることだと思うし、そうやって僕たちがかっこいいと思うことは、聴く人もきっとかっこいいと思ってくれるはずだと思うので。
――確かに。
HIROSHI: だから、僕らがちゃんと繋がっていけば、「この人はこんな人たちともやってるんだ」とか、どんどん広がっていくと思うので。僕はそうやって先輩のアーティストにいろいろ教えてもらったので、僕がアーティストの側に回っても同じことをしたいと思ってます。
――そういう意味で、音楽的、時代的、人脈的なことも含めて、FIVE NEW OLDの現在地って、どういうものだと思う?
HIROSHI:まあ、できることはそんなに多くないとは思うんですけど、出どころがラウド/メロコアのシーンで、だんだん音楽的な方向性がこういうところに行って、今は踊Foot WorksやLUCKY TAPESとも出会って一緒にやっている。オーバーグラウンドになってくれば、そういうこともどんどん関係なくなってくるとは思うんですけど、今そこから駆け上っていこうとしているレベルで、ここまでいろんな人たちと音で繋がっていってるのは、僕らぐらいじゃないかな?と思ったりしてはいるので。そういう垣根をどんどん崩していけるような存在であればいいなとは思います。
FIVE NEW OLD 撮影=大橋祐希
――それと、これまですべて英語詞だったけど、今回ちょこちょこ日本語が入ってるでしょう。それは意識して?
HIROSHI:はい。元々世界中のいろんな人に伝わるように、という意味での英詞ではあったんですけど、アジア・ツアーに出たときに、僕たちの母国語である日本語をもっと聴きたいんだなということを感じたんですよね。それって結局プラスになると思ったし、国内の人にもわかってもらえるし、国外の人にも面白がってもらえる。たとえば、僕らがStamp(タイの国民的シンガーソングライター)さんのタイ語の歌を聴くと、「何かわからないけどいいな」と思う。それと同じ効果が、きっと日本語にもあると思うので、入れたいなと思った箇所に日本語をけっこう入れています。「Keep On Marching」が特に多いですけど。
――今回、リリック的に中心になる曲とか、アルバムのテーマになる曲はあるのかな。
HIROSHI:そうだなあ……それぞれに物語があって、コンセプト・アルバムと言えるほどのものではなくて、短編集ではあるんですけど。全体的には、矛盾したことを歌うのがテーマだったりしたので、「こいつは何言ってるんだ?」みたいな部分も多いかもしれない。「Pinball」とか「Fast Car」とか。言いたいことは全部に散りばめられてますけど、最終的に言いたいことは、最後の「Bad Behavior」に詰まっているのかな。
――「Bad Behavior」は、“Let It Go=ありのままでいい”と繰り返す歌詞がすごく印象的。これは希望の歌だと思いました。
HIROSHI:そうですね。
――ジャケットを見て、曲を聴いて楽しんで、歌詞を深読みしてさらに楽しめる。そんなアルバム。
HIROSHI:隅々まで楽しんでもらえたらいいなと思います。和訳もただの直訳ではなくて、物語になるように。ポエムとして書いているので、そこも楽しんでもらえると嬉しいです。こんなふうに歌っていますよ、というだけじゃなくて、曲の世界観や景色が伝わるように訳詞を付けているので。
――9月末からのリリース・ツアー、楽しみです。
WATARU:14か所という、けっこう多めにワンマンをさせてもらうので。今までよりもキャパも大きいし、大勢の人に伝えるのはどうするか?ということを、今まで以上に考えなければいけないので、アレンジしかり、演出しかり、見せ方についてもいろいろ考えて、今はそこに向かって頑張っている最中ですね。
――リズム隊にも注目しますよ。特に「In/Out」のドラムを。
HAYATO:ガン見でお願いします(笑)。頑張ります!

取材・文=宮本英夫 撮影=大橋祐希
FIVE NEW OLD 撮影=大橋祐希

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