フラワーカンパニーズ × 映画監督・
市井昌秀 映画『台風家族』主題歌で
フラカンが体現するものとは

老夫婦が銀行強盗で2000万円を奪い、霊柩車で逃亡、そのまま失踪。その10年後、残された4人の子供と家族たちが、行方不明のままの両親の葬儀を行い、財産分与をするために、無人の実家に集まる──というところから物語が始まり、その翌朝までを描く映画『台風家族』。主演が草彅剛、監督・脚本は『箱入り息子の恋』(2013年/星野源主演)等を世に送り出してきた市井昌秀。市井監督の希望により、この作品の主題歌をフラワーカンパニーズが書き下ろしている。9月4日にリリースされたばかりのニューアルバム『50✕4』にも収録されているこの曲について、この『台風家族』という映画について、市井監督にとってのフラワーカンパニーズについて、などについて、市井監督とフラワーカンパニーズのふたり=ボーカル・鈴木圭介&ベース&リーダー・グレートマエカワに、語り合ってもらった。
■やっぱり痛い部分や生々しい部分を描きたい、それを体現してくれるバンドとしてフラカンがいい、と思って(市井)
──市井監督は、どんなふうにフラワーカンパニーズを知ったんですか?
市井:僕はどっちかというと最近のファンになってしまうんですけど。11~12年ぐらい前、友達が「深夜高速」が好きで、そこで僕もはまりまして。そのあとも、すごく僕が共感したのって、前のアルバム(『ROLL ON 48』/2017年)の「ハイエース」が、かなりぐっときまして。僕の映画自体もそうなんですけど、すごいむきだしのものを歌ってらっしゃる、っていう感覚で。「生々しい」を超えて「生臭い」ぐらいまで行っていると思って。それが僕の中で……僕も映画で表現する時に、生臭いぐらいまで、ちょっと目を背けたくなるまで、出してしまう、みたいな部分があるので、そこにすごく共感して。生臭さを出す先輩がフラカンで、同級生が銀杏BOYZって感じがしてるんですね。
──今回、『台風家族』の曲を依頼しようというのは?
市井:今回、久しぶりにオリジナル作品をやらせていただいて。自分のオリジナルっていうことをふり返ってみると、今申し上げたような、むき出しのものだったり、生々しさだったりを……ユーモアとか笑いでオブラートにはくるむんですけど、やっぱり痛みを描きたい、というのがあるので。痛い部分や生々しい部分を僕は描きたいんだな、っていうことを、オリジナルの脚本を書いていて気づいたんですね。で、それを体現してくれるバンドとして──僕はバンドにお願いしたくて。それで、フラカンがいいと思って。
フラワーカンパニーズ / 市井昌秀 撮影=大橋祐希
──この映画、音楽がスパム春日井さんなんですよね。以前にフラカンのライブやレコーディングのサポートをした方。
グレート:そうそう。まずスパムさんから連絡があって、「フラワーカンパニーズの名前が挙がってるよ」みたいな。それが去年の夏で、うれしい話だけど、ただ、時間がかなり厳しくて。
鈴木:締め切りまでの期間がタイトだったんですよね。でも、2曲作りました。この「西陽」と「明日の方へ(仮)」という曲。リハスタでスマホで録った音の悪いデモを一回聴いてもらって、「どっちがいいでしょうか?」っていう感じで。
市井:僕、今日、「明日の方へ」も久しぶりに聴いて来たんですけど。いい曲なんですよね、ほんとに。ただ、攻めてるっていう生々しさや──。
グレート:映画の感じですよね。
市井:そう、映画の感じが、「西陽」だな、っていう。ほんとに迷いましたもん。24時間悩む時間をいただいて……最初は僕、「明日の方へ」を推していて。でも、「ほんとか? これ、ほんとか?」と。全編観てからもう一回エンドロールを当て替えて、自宅の作業で。ほんとに何度もくり返して、だんだん「西陽」にひっぱられていって、「これ、やっぱり『西陽』だな」と。24時間、延々と聴いてました。
市井昌秀 撮影=大橋祐希
■この映画の、家族の人たちのダメさ加減を観て「ああ、なんか、俺たちが呼ばれたの、わかるなあ」と(グレートマエカワ)
──鈴木さんとグレートさんは、曲を書く前に映画を観て、どう思われました?
グレート:僕はもう、この映画の、家族の人たちのダメさ加減を観て「ああ、なんか、俺たちが呼ばれたの、わかるなあ」と。
市井:(笑)。
グレート:俺たちっていうか、鈴木っっていうか、フラカンの世界でもあるなあと。「どうにもならんな、この人たち」っていう人たちの物語じゃないですか。ピッタシだなと思いましたね(笑)。
鈴木:僕もまったくそうで、これはやりたいなと。映画を観てると次々とクズが出現する、いろんな種類の(笑)。
グレート:そこもバンドと一緒だよね。だから、是が非でも作れればいいなと思って。
市井:改まってこういう話をきくと、うれしいですね。初めてです、おふたりの感想をきいたの。
鈴木:あと、何しろこの映画、ずーっと同じ場所で物語が進んでいくじゃないですか。最後に外に出るけど。それまではずっと実家の部屋の中だけでのもめごとが延々とくり返されてる。でもそれがちっともじれったくないというか。テンポがものすごくいいし、途中で全然ダレない。「普通だったら飽きるよな、これ」っていうシチュエーションなのに。で、最後に台風が来て、外に出て、朝になって終わるという……いちばんラストのシーンとか、見事だなと思いましたね。
フラワーカンパニーズ 撮影=大橋祐希
■朝日で終わる映画なのに「西陽」っていうタイトル、すごい攻め方してるなと(市井)
──その映画を観て曲を書くときに、どんなことを考えました?
鈴木:うーん、いや、さっきも言ったんですけど、2曲書いて。両方とも歌詞も上がってて。
グレート:ソフトタッチの「明日の方へ」と、ちょっとハードな「西陽」と。
鈴木:「明日の方へ」は、ちょっと収まりのいい感じにしてたんです。歌詞も曲調も、映画のエンディングで流れてもいいような感じ。映画を観て、「ああ、よかったなあ」みたいな感じで帰れるやつ。それでいいなとも思ってたんですけど、もう1曲、ダメ元で、観終わったあとどういう気持ちになるかわかんないけど……映画に寄せてないバージョンをと。元々監督から映画に寄せないくてもいい、むしろ寄せてほしくない、ぐらいの話をいただいていて。「明日の方へ」の方は、どっかで寄せようとしてたところが残ってて。逆に「西陽」は全然寄せようとしてなくて、もうそのまま自分を歌ったっていう。ただ、映画を観た後に作ってるので、観た後のムードみたいなものはやっぱり入ってると思います。
市井:攻めてる曲だし、疾走感もあるし。朝日で終わる映画なのに「西陽」っていうタイトルなのも、すごい攻め方してるなと(笑)。すごいなって思って。2曲とも、映画を全部観てから最後に曲を流す、っていうのを何度もやって選んだんですけど、「西陽」、歌詞がすごく鋭く響くんですよ。「道ばたの隅に捨てられたビラがお前の正体さ」とか、「渋滞だ 渋滞だ 後悔の渋滞だ」とか。そういった歌詞が……僕自身、おカネをいただいて作る映画だとしても、自分の身のまわりのことを描こうとしてるので。この登場人物たちも、みんな、はっきり言って僕なので。そういうことの感覚として、「西陽」の方が、シンパシーを感じたんですね。
フラワーカンパニーズ / 市井昌秀 撮影=大橋祐希
──「『西陽』でお願いします」と言われたときは、どう思いました?
鈴木:いや、「やった!」と思いましたよ。
グレート:「明日の方へ」は優しい曲だし、いかにも映画のエンディングでかかりそうなんですよね。実際に曲が入ったあとの映画を観たときに、「よくこっちを選んでくれたなあ」って思いましたね。でも、「あ、なるほどな、こういうふうに終わるんだ」と思って。こっちの曲を選んだ理由がわかったというか。
──台風みたいというか。余韻もクソもない、曲でぶっ壊す感じで終わりますもんね。
鈴木:そう、「ガシャーン!」だもんね。
市井:(笑)。あのラスト・シーンは、ああいう、ちょっといい感じで終わるんですけど、最終的に「西陽」にしたいと思った理由は……あの、彼らのクズさって、あのあと、また芽を出すと思ってるんですよ。人間、そんなにきれいに変われないし。この映画が終わったあとにも、彼らにはまた何かあるだろうな、というところとしても、「西陽」でしっちゃかめっちゃかに終わっていく方がいいんじゃないかな、と思うんですね。
グレート:確かに、「明日の方へ」だったら、あれで結末がまとまって終わる感じだけど、「西陽」だと終わる感じじゃないですもんね。
市井:あと余談なんですけど、ほんとにうれしかったのが……「夜明け」とか「ビューティフル・ドリーマー」とか、「あまくない」とか、僕が好きなフラカンの曲の中で、特に「ハイエース」がほんとに好きで。それで、今回「西陽」のレコーディングにおじゃましたときに、フラカンのハイエースを見たのが、僕、ほんま感動して。写真も撮らせてもらって。うれしかったです。あのハイエース。何十万キロも走ってるんですよね?
グレート:もうすぐ50万キロです。
鈴木:あの汚いハイエースで、こんなに喜んでもらえるっていう(笑)。

取材・文=兵庫慎司 撮影=大橋祐希
フラワーカンパニーズ / 市井昌秀 撮影=大橋祐希

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