【あいのぼり インタビュー】
メロディーは歌詞を活かすためのもの
昨年デビューしたポップバンド、あいのぼりが満を持して2ndシングル「1秒の花束」をリリース。映画プロデューサーに名指しで挿入歌の制作を依頼されるほど優れたメロディーを持つ彼女たちの曲作りの背景と、カップリング曲に込めたバンドの決意を訊いた。
楽曲を表現するにあたって、
変なこだわりは要らない
ー新曲「1秒の花束」を含めた、あいのぼりの音源を聴かせてもらって、歌メロが実に堂々としているバンドだと感じました。作曲は主に小松さんが行なっているようですけど、歌メロまできっちりと作り込むんですか?
小松
歌詞があって、そこにメロディーを付けていくパターンがほとんどですね。
アッカさんの作詞から楽曲作りがスタートするんですね。言葉にしたい何かがあって、そこから始まる感じですか?
アッカ
そうですね。ただ、今回の「1秒の花束」の場合は『初恋ロスタイム』という映画の台本と映像をいただいてから書き始めたので、私が書きたいものというよりは、その台本の中にある台詞とか映画のテーマとかを自分なりに考えて広げていった感じです。
ちなみに、映画に沿った作り方は今回が初めてですか?
アッカ
いいえ。これまでも4曲くらい、そういう作り方をしています。自分が好きな小説からテーマを持って来て、勝手に“この主題歌を作ろう!”って書いたりとか。あとは、舞台の楽曲提供をお願いされたことがあって、その台本を読んで書いたこともあります。
そうですか。言葉が先にあるとメロディーを作りづらいとおっしゃる作曲者も多いような気がするのですが、小松さんはそんなことはないですか?
小松
僕はメロディーを付けているというよりは、なんか答え合わせをしているような感じで。アッカの歌詞を何回も読むんですよ。100回以上は読むと思います。声に出して読んだりもしますし。そうすると言葉の流れが分かって、テンポ感やコード感とか全体的な雰囲気とかのイメージが沸いてきて、“これはバラードだな”とか“これはロックだな”って思えてくるんです。そのイメージでずっと読んでいると、結果メロディーができているという。そういう時が多いですね。
でも、「1秒の花束」もそうですけど、不自然に言葉を詰め込んだようなところはないですよね。
小松
自然ですよね。メロディーは歌詞を活かすためのものという考え方なので、自然じゃないと嫌なんです。フックとして不自然な部分というか、あえてそういうところを練り込んだりすることもあるんですけど、基本的にはそのままの流れで。歌詞のまま、答えをはめ込んだという。
歌詞にはCメロや大サビもあるんですか?
アッカ
そうです。全部ある状態で渡します。中途半端な状態で渡したくなくて、“1番だけでもできてたら見せて”って言われることもあるんですけど、絶対に嫌なんですよ。途中で見せたり、作っている工程を見られるのが嫌で。
鶴の機織りみたいですね(笑)。
アッカ
それは歌詞だけじゃなくて、料理を作っている時もそうで、誰かに作っている姿を見られるのが嫌なんですよ。だから、“途中でも見せて”って言われると、“はぁ!?”ってなるんです(苦笑)。絶対に見せないです。自分の中で“オーケー!”ってなってから渡します。
小松
…締め切りの2日前とかに来たりするんですけどね(苦笑)。
このバンドは結成から何年目ですか?
その作詞、作曲の関係で6年間やられてきているわけですか?
小松
そうです。鶴とお爺ちゃんの関係で6年間やってきました(笑)。
(笑)。すごく緊張感のある曲作りですよね?
小松
そうですかねぇ…もうこれが当たり前すぎて。僕からフッと新しいメロディーが出て来ることもあって、そういう曲も多かったりしますし。ただ、バンド的にはやっぱり歌詞先行で…歌詞が先にあって、そこに曲を付けた方ほうがあいのぼりっぽいというか、あいのぼりらしさが出るので、いつも慌てず、焦らず、歌詞を待ってます。まぁ、いつもギリギリですけど。
なるほど。そこでひとつ分かったことは、小松さんが主に作曲をするものの、その作業は決してワンマンではないと言いますか、メロディーもあくまでバンドだからこそ導き出されているんでしょうね。
小松
そう思いますね。僕は曲作りが大好きなので、正直言って1カ月で10~20曲は作ってるんですけど、やっぱりバンドの世界観を表現するためには自分という存在よりもバンドという存在に意識を昇華させるじゃないですけど、そういう状態で曲作りをしたほうがあいのぼりらしさが出るというか、表現できるかなと。
小松さんはギタリストでもありますが、ギタリストって一般的に自己主張の強い方が多いというイメージがありますけど。
小松
僕もそうだったんですけど、他に約3人、とても自己主張の強い人がいるので(笑)。前作「涙のアーチ」のプロデューサーで、僕らの大恩人である是永巧一さんとも話したんですけど、自分のギタリスト、ミュージシャンとしての立ち位置を発見してからいろいろと上手くいってきた気がします。確かにライヴで演奏する時はバーッと自己主張するんですけど、バンドのリーダーでもあるので、それ以外はちゃんとまとまればいいかなと。僕たちがやりたい表現になるような役割になっているというか。
これはインディーズ時代のミニアルバム『スターティーコレクション』を聴かせてもらって感じたことなんですけど、楽曲によってはソウルやR&B、アイリッシュなどの音楽要素も垣間見えるんですが、それらが突出してないと言いますか、抑制が効いた印象ですよね。今の小松さんの話からすると、これらは意図的なんでしょうか?
いや、ギターだけじゃなく、例えば、『スターティーコレクション』収録の「フレンド」とか、イントロはゴスペルチックなコーラスで始まるものの、そこまでゴスペル、ゴスペルしてないし、サイケなオルガンも入ってますが、そこまでサイケデリックロックではない。
小松
そうですね。あくまで“歌モノ”なので。あくまでも装飾ですね。ドラムもベースもギターも、僕の中では全部装飾です。ピアノもブラスも全部。歌がボン!といて、それを彩るものという考え方です。
4人編成のバンドスタイルではあるものの、そこにこだわっているわけではないということですかね。もっとも楽曲によっては鍵盤、ブラス、ストリングスも使ってますから、そもそも3ピースのサウンドだけにこだわってないことは明白ですよね。
小松
表現したい音楽がギター、ベース、ドラムだけでは賄えないというか、“どうしてもピアノの音が欲しい”“ここには弦が欲しい”となってくると、バンドなんですけどその形態にはこだわってないというか。でも、一番好きなのはバンドなんです。単純にバンドが大好きなんで。ライヴは楽しいですし。ただ、アッカが書いてくる世界観もそうですけど、楽曲を表現するにあたって、変なこだわりはいらないかなと思ってて。それよりも楽曲が一番求めているものを探し当てたほうがいいかと思っているので、たぶんそういうかたちになるのかなと思います。
将さんはあとから加入されたということですけど、加入した時点ではすでに現在のような歌を中心としてポップバンドという感じのスタイルになっていたんでしょうか?
将
そんな印象でしたね。僕はずっとビジュアル系が好きで、メタルとビジュアル系ばっかり聴いてて、そういうバンドを作りたかったから、とりあえずオーディションを受けてたんですよ。で、そこで知り合った人に“お前に合う、いいバンドあるぞ”と紹介してもらったので、“ビジュアル系のバンドなんだろうな”と思ってたんですけど…。
将
音源を聴いてみたらすごくポップだったという(笑)。でも、メンバーが見つからなかったんで、“とりあえずやってみようかな”って。
将さんのルーツはメタルやビジュアル系なんですね。
将
そうですね。L'Arc〜en〜Cielを聴いてベースを始めた感じです。で、そこからGLAYを聴いて、そのメンバーが影響を受けた音楽をどんどん遡っていって、最終的にBOØWYで止まりました。ルーツは90年代の邦楽ですね。あと、ビーイングも好きでした。
ビーイングはともかく、ビジュアル系はあいのぼりには直結しないような気がするのですが。
将
ああ(笑)。でも、第一印象で“楽しそうだな”と思ったんですよ。自分は楽しく生きていきたいと思ってるんで(笑)。