『Sing N' Play』AnlyとOTO(NEIGHB
ORS COMPLAIN)が京都で奏でた音楽の
魔法

someno kyoto 2nd Anniversary Special『Sing N' Play』2019.9.11(WED)京都・someno kyoto
これまでにReiとAnlyLeolaとchayのツーマンや、NEIGHBORS COMPLAINがハウスバンドさながらの役割を務め、Anly、eill、Rude-αが共演するなど、その日限りのコラボレーションが好評なライブシリーズ『Sing N' Play』。4回目となる今回は初の2日間開催、今年で2周年を迎えた京都のアコースティック専門ライブハウスsomeno kyotoを舞台に、『Sing N' Play』最多出場となるAnlyと、前回に引き続きNEIGHBORS COMPLAINのOTO(Vo/Key)が出演。Anly、OTOともに「人生初の2DAYS」と事前にTwitterでもかけ合ったスペシャルライブ、2日目の模様をレポートする。
ループのビートに客席からのクラップが合流する心地よさのままに、2人のボーカルが溶け合う極上の幕開けを迎えた『Sing N' Play』2日目。NEIGHBORS COMPLAINの「Night Drivin’ 」とAnlyの「Moonlight」がシンクロしていくマッシュアップでいきなり強烈なインパクトを与えたオープニングから、このイベントがただの共演ではないことを物語る。「皆さんこんばんは、someno kyotoにようこそ!」(OTO)と放った「Got It Goin’ On」でも、まるでユニットのようにボーカルをリレーし巧みに夜を染め上げていく。「COFFEE」ではAnlyがリードし、ループペダルを駆使した多重演奏と凄まじい歌唱力を存分に発揮!
「もうすでに楽しいわ~」と思わず漏らすOTOに、「今日はお足元の悪い中、来てくださってありがとうございます。そしてsomeno kyoto、2周年おめでとうございます~! それをお祝いすべく、最高の音楽を届けていきたいと思うので、よろしくお願いします」とAnlyが続けた後は、NEIGHBORS COMPLAINの普段のバンドセットとも、OTOのソロとも異なるここだけのアレンジで、京都の夜に架けられた「Aurora」。Anlyの歌声とアコギのカッティングも相まって、アダルトでスリリングな男女のかけひきを描く楽曲に、新たなエピソードが付け加えられるかのように新鮮に響く。Anlyのつまびく力強いフレーズから始まった「太陽に笑え」も、OTOのピアノと歌声によってよりドラマティックに響く。そう、この企画、両者にとっても観る者にとっても刺激と発見しかないような相乗効果で、『Sing N' Play』の醍醐味を序盤からまざまざと感じさせていく。通常のイベントのようにそれぞれの持ち時間があって最後にセッション、とは一線を画す内容だけに、それ相応の準備が必要であっただろう2人だが、そのために費やした時間が今、オーディエンスに宝物のような景色をプレゼントしてくれている。
「まだまだ楽しんでいきましょう!」(OTO)と投げかけた「Gotcha Feelin’ 」では、「この京都でSpecialな君とそう♪」と歌詞の一部をもじりながら、鍵盤上をドライブするOTOのピアノが抜群にグルーヴィー! Anlyの新曲「We'll Never Die」では彼女の「もっと聴かせて! Keep On Singin’ !!」との呼びかけにオーディエンスも声を上げ、soemno kyotoがグッドヴァイブに包まれていく。
「楽しんでますか? 皆さんの笑顔がよく見えます。someno kyotoはすごく距離が近くてドキドキするんですけど、今日は私の中で大事な曲を、あまり歌ったことのない新曲に近い曲をやろうと思います」(Anly)と語ったその曲は「Sleep」。曲に込められた地元沖縄の幼少期の風景とこれからもっともっと行きたい場所があるという想いを語り、OTOのピアノとボイスパーカッションに乗せしっとりとクールに歌い上げるAnly。そのままジャジーなイントロから、「OH, Honey。ああ、今日は素敵な夜さ~someno kyotoで~♪」(OTO)と誘った「Babygirl」では、Anlyとのかけ合いもひときわスウィート。まさに『Sing N' Play』ならでは、この2人ならではの絶妙な空気感で魅せていく様には、会場からも大きな拍手と歓声が上がる。憂いを帯びたアコギの響きとコーラスが導いた「DREAM ON」では、ループペダルの匠の技とアイデアを活かした世界照準のサウンドとソングライティングで、Anlyの底知れぬポテンシャルをこれでもかと見せつける。OTOのトークボックス使いもさすがで、楽曲のクオリティをさらに格上げするかのよう。
「京都、最高ですね。ここでカバーを1曲披露しようと思います。僕の大好きなバンド、インコグニートの「Still A Friend Of Mine」を、今日はAnlyとやってみようと持ってきました」(OTO)と語ったこの曲も、2人にかかればまるで音楽の魔法にかかったように豊潤に胸に沁みわたる。そして、「ここからは弾き語りで1人ずつお送りしていこうと思います。僕らにも「Moonlight」という曲があって、それをお届けしたいなと」(OTO)、「私は「愛情不足」という曲を。上京してから感じたこと、東京にいないと書けなかった曲だなと。皆さんのハートがガラスで、愛が液体だったとしたら、どれくらい愛情が注がれているか考えたことがありますか? 私の音楽で、少しでも愛を注げられたら、そんな皆さんに寄り添えられたらいいなと思って歌います」(Anly)と、この日唯一のソロコーナーへ。
ここでは一転、ループペダルを駆使せず歌とギターのみで、歌詞の世界観を切々と伝えていくAnly。この試みは大正解で、彼女のメッセージが優しくもグッと胸に迫りくる。そこから流れるような美しいピアノに招かれ出番はOTOにスイッチ。『Sing N' Play』は本当によく練られた脚本のようにどちらのファンも飽きさせることなく見せ場が移り替わる構成で、OTOの儚くもエモーショナルな歌声が、心の芯まで訴えかけてくるよう。そんな美しいシーンの連続には、2人が優れた表現者であることを改めて感じさせられる。
MCでは、「一昨日、2人でリハーサルした後に、座禅を組みに行ったんですよ。もうね、煩悩だらけ(笑)。難しいんですよね、呼吸だけに集中するのが。Anlyはどうだった?」(OTO)、「眠かった(笑)。(その様子を見た)和尚さんに笑われた(笑)」(Anly)と場を和ませ、「ここからは盛り上がっていこうと思ってるんですけど、準備はいいですか? 京都のパワー、最後に出していいですか? 楽しんでいきましょう!」(OTO)と、いよいよ『Sing N' Play』もクライマックスへ。
「LST/D」では自ずとクラップが巻き起こる盛り上がりで、バンドセットの曲を2人で表現しても物足りないどころか新たな魅力すら感じさせるのは、楽曲にブレない個性と志が宿っているからであろう。「カラノココロ」では湧き立つシンガロングでsomeno kyotoに絶景を作り出したかと思えば、「There For You」では胸を締め付けるようなOTOのラブバラードに心から満たされる。ラストの「Venus」では、その名の通り女神のような気高さとスケールでsomeno kyotoを包み込むAnly。
そして、オーディエンスが幸福な余韻に浸る中、「みんないい顔してるね。本当にめちゃめちゃ楽しくて、昨日の初日の打ち上げでも盛り上がって、11月14日(木)、名古屋でも『Sing N' Play』が決定しました!」(OTO)、「ホントに昨日決まったもんね(笑)」(Anly)と、2人から何とも嬉しい報告も。ステージを去った後もアンコールを求める拍手がいつまでも鳴りやまない光景が、この夜の最高の続きを約束しているようだった。
文=奥“ボウイ”昌史 撮影=森好弘

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