【ライブレポート】ZOOCO×鈴木桃子
×国岡真由美、歌姫たちの紡ぐ90年代

ZOOCO、鈴木桃子、国岡真由美らが出演したライブイベント<FLASHBACK 90’s Vol.1>が、9月9日(月)東京・高円寺JIROKICHIにて開催された。
ZOOCO(ex. エスカレーターズ)、鈴木桃子(ex.COSA NOSTRA)、国岡真由美(ICE)という90年代の音楽シーン、渋谷系ムーブメントの一翼を担ったシンガー達が一堂に会し、<FLASHBACK 90’s Vol.1>と銘打ったライブが、去る2019年9月9日(月)高円寺JIROKICHIにて行われた。その他、ボーカル&ギターに“GATZ”こと中沢ノブヨシ、演奏陣にはフラッシュ金子(米米CLUB/BIG HORNS BEE)をはじめとする錚々たるメンバーがバックを支え、濃密かつ豪華な共演による至福極まる一夜となった。

ステージのフロントにセッティングされた3本のスタンド・マイク。そのいで立ちに開演を待つオーディエンスが胸を高鳴らせる中、プレイヤー陣が各ポジションに着き、続いて3人の歌姫達が登場すると場内が歓喜の拍手に包まれる。
オープニングはインコグニートのカバー「スティル・ア・フレンド・オブ・マイン」。スムース&グルーヴィーなサウンドに桃子・ZOOCO・真由美、そしてGATZの4声が流麗に入れ替わり折り重なり、瞬時に時空を超えて別世界へといざなっていく。
曲終わりでは本公演を迎えられた感謝の意を述べつつ、「皆さんと一緒にフラッシュバックしたいと思います!」といったZOOCOのMCに続いて「Perfect Baby」「Girl Talk」「Soul Of Joy」とシンガー各々が属したユニットのナンバーを披露。これらの楽曲は年月を経ても、今もなお歌い続ける彼女たちによって鮮やかなインプレッションを生み、そのパフォーマンスと表現力の高さ、しなやかにアップデートを遂げてきた現在進行形の姿に魅了される。また、“誰かがメイン・ボーカルを歌う際にはふたりがコーラスを担当”というスタイルが全編で貫かれ、贅沢かつバッキングにおいても光るそれぞれのボーカル・スキルに心底聴き惚れてしまう。
続くMCでは、本イベントの発起人が“90’s Musicのネクスト・ジェネレーション”のGATZであることや、その趣旨が「90年代にデビューしたシンガーの皆さんと、90年代に青春を謳歌したオーディエンスの皆さんと、ただのファンで当時キッズだった僕たちの集まり」だということが明かされた。そのほかにも、ベーシスト大神田智彦がエスカレーターズのファンクラブに入会するほど熱烈なリスナーだったエピソード等により、演者も観客も同時代を過ごした共感が呼び起こされ、実に楽しげでハッピーな雰囲気に皆笑顔になる。
ここからは当時を象徴する洋楽ヒットソングのカバーを連投。ZOOCOが「クラブに遊びに行くといろんなアーティストがやって来て、来日した彼らもライブ終わりに現れて一緒にセッションしたり……90’sはそんな時代」と語り、ブラン・ニュー・へヴィーズ「Never Stop」を披露。続く国岡真由美はカーディガンズ「カーニヴァル」、鈴木桃子はメイヤ「How Crazy Are You?」を演奏し、アシッド・ジャズ~スウェディッシュ・ポップと振れ幅広く心くすぐる選曲で、インターネット普及前夜、FM局や外資系大型CDショップを席巻したヒットチューンがここに蘇る。煌めく時代感と高揚感が満ちていく中、1stステージの幕が閉じた。
2ndステージでは、GATZが音楽好きのキッズだった自身の90年代をユーモラスに振り返りつつ、彼のリード・ボーカルで披露するのはジャミロクワイ「スペース・カウボーイ」。確かな演奏陣が繰り出す思わず腰が揺れるグルーヴ感にGATZのセクシーかつジェイ・ケイを彷彿とさせるソウル・オリエンテッドな声が相まって、センセーショナルにクールな90’sの空気感を一気にもたらしていく。
続いて歌姫達が順に呼び込まれる形で、COSA NOSTRA「Share Your Love」、エスカレーターズ「If I Ever Lose This Heaven」、ICE「Get Down, Get Down, Get Down」と、それぞれの代表曲であり、CMソングやFMでのパワープレイ、クラブ・シーンを賑わせた楽曲達がめくるめく繰り広げられ、オーディエンスを心地良い恍惚と陶酔へと導いていく。
さらに追い打ちを掛けるように、COSA NOSTRA「Jolie」、ICE「Kozmic blue」、エスカレーターズ「Fly High」と、まるで選りすぐりの楽曲群で構成された極上のコンピレーション・アルバムが目前で紡がれているような心躍る展開に、場内のムードは最高潮に達して2nd ステージを終えた。これらの曲が時代を経ても鮮烈に、また普遍的に聴く者の心にフィットし鼓舞するのは、彼女達及び属するユニットが高い音楽性を備え、洋邦の垣根を取り払う傑出した音楽センスに裏打ちされた良質な作品を生み出してきたからこそであろう。
そしてアンコールは、エスカレーターズがカバーした「Oh Happy Day」だ。オーディエンスのシンガロングと共に場内が一体となり、誰しもが魅惑的な90’s Musicの魔法に掛けられたような多幸感に包まれる中、終幕となった。
この夜はソールドアウトゆえ、このコンセプトとラインナップのステージを見逃して悔しい思いをしたリスナーも多い事だろう。公演タイトルに“Vol.1”とあるように、本イベントは今後も進化し継続される予定で、90’sの音楽とグルーヴを今この時代に肌で感じ、共感や新たな視点によって90年代音楽シーンの良さを再発見する好機が到来しそうだ。

文◎上田優子
写真◎山本“リンダ”祐子

■<FLASHBACK 90’s Vol.1>

2019年9月9日(月)東京・高円寺JIROKICH
[出演]
ZOOCO(Vo)/鈴木桃子(Vo)/国岡真由美(Vo)/中沢ノブヨシ(Vo,G) /星川薫(G)/フラッシュ金子(Key)/大神田智彦(B)/高田真(Dr)

[セットリスト]
▼1st Stage
Still A Friend of Mine(Incognito
Perfect Baby(Escalators
Girl Talk(COSA NOSTRA)
Soul Of Joy(ICE)
Never Stop(Brand New Heavies
Carnival(The Cardigans
How Crazy Are You(Maja)

▼2nd Stage-
Space Cowboy(Jamiroquai)
Share Your Love(COSA NOSTRA)
If I Ever Lose This Heaven(Escalators)
Get Down, Get Down, Get Down(ICE)
Jolie(COSA NOSTRA)
Kozmic blue(ICE)
Fly High(Escalators)

-Encore-
Oh Happy Day(Escalators)

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