THE YELLOW MONKEYの生涯をかけたロ
ックショー『GRATEFUL SPOONFUL』ツ
アーを振り返る【さいたまスーパーア
リーナ Day2】

THE YELLOW MONKEY SUPER JAPAN TOUR 2019 -GRATEFUL SPOONFUL-

2019.7.7(日) 埼玉 さいたまスーパーアリーナ
4月27、28日に静岡エコパアリーナから始まった『THE YELLOW MONKEY SUPER JAPAN TOUR 2019“GREATFUL SPOONFUL” 』が、9月21、22日、グランメッセ熊本で遂にファイナルを迎えた。19年ぶりにリリースしたニューアルバム『9999』の楽曲を中心に、公演ごとに用意された全く異なるセットリストは、それぞれ「♠」「♦」「♥」「♣」の記号で分けられた豪華メニュー4コース。あの素晴しいツアーをもう一度。さいたまスーパーアリーナで行われた7月6日(♦)と7日(♥)の2公演の、2日目の模様ををレポートする。
さいたま2日目は日曜日、開演は16時。昨日と同じく「ボナペティ」の軽快なビートが鳴り響いたあと、エマ(Gt:菊地英昭)の神々しいギターの音が聴こえ……ずに、爆走ロックンロール「天道虫」からのド派手な幕開け。真っ赤なライトがぐるぐる回り、スクリーンには紅蓮の炎、大量の火花が飛び散る中で、4人は最初から全力疾走状態。「ALRIGHT」でエマとヒーセ(Ba:廣瀬洋一)が早くも花道へ飛び出し、「今夜はTHE YELLOW MONKEYの第二のバースデーだぜ!」と吉井(Vo)が叫ぶ。「Love Communication」は、サビのほとんどを2万人の歌声に委ね、“もっと来い!”と言わんばかりに煽りまくる。ダークな深みを強調した昨日の「♦」公演とは何もかもが違う、明るくはじける「♥」公演の幕開けだ。
「今夜はTHE YELLOW MONKEYがまた集まったきっかけの日。記念すべき……夕方(笑)。まだ夜じゃない。最高の記念日に、最高のロックンロールを、最高のTHE YELLOW MONKEYと、最後まで堪能してください」
吉井のMCもご機嫌そのもの。「Love Homme」の、ヒーセの重低音ベースは昨日よりも激しく重く、「楽園」のエマのソロも気合満点。エマのギターの音量が昨日よりもはるかにパワフルに聴こえるのは、たぶん気のせいじゃない。「Love Sauce」のソロも、力の入り方が普通じゃない。気持ちもプレイも毎日違う、だからライブ。スクリーンに映る壮麗な星空をバックにした「Stars」の輝き、“こんなに激しい曲だったっけ?”と思うほど、ギラついた熱気ほとばしる「パール」。このペースで走り続けて大丈夫か?と、嬉しい反面心配になるほど、ここまで8曲は全て攻撃的ロックンロール。30年を超えるキャリアを持つバンドが、そんなんできひんやん普通。THE YELLOW MONKEY、半端ない。
そこへ、絶妙のタイミングで挿入されるミドルロックバラード二連発。レーザーとスモークによる幻想的な空間の中で歌われた「Changes Far Away」、そして20年前、解散を前にした時期の混沌と激情とが埋め込まれた「SO YOUNG」。本日絶好調、エマの万感迫るソロが素晴らしい。麝香猫が登場するキュートなアニメ映像からの「Balloon Balloon」は、アニー(Dr:菊地英二)の猪突猛進ドラム、ヒーセの徹頭徹尾ワンコードで攻めるベースが凄い。60’ sグループサウンズをTHE YELLOW MONKEY流に再解釈した「追憶のマーメイド」は、いつ聴いても若く懐かしくかっこいい。ソロを弾くエマに寄り添う吉井が愛おしい。明るい開放感がスーパーアリーナを包み込む。
「バンドって面白いね。昨日来てくれた友達が、今はバンドをやめちゃってるんだけど、ライブを見て“またバンドやりたくなった”って。一番嬉しい言葉でした」
吉井の言葉が、いつも以上に親密にストレートに響く。直後、ヒーセのべースにトラブルが発生し、時間を持て余した吉井の「エマ、踊る?」という無茶振りに、思わず「パンケーキ食べたい」のダンスで反応してしまうエマ。「アニー、物まねする?」という振りに、笑って拒否するアニー。今日はなんだかステージ上の空気が優しい。「Titta Titta」での、ローリング・ストーンズばりのエマのソロに、「飛び出し坊や!」「トニー・アイオミ!」など、陽気な掛け声を飛ばす吉井。「LOVE LOVE SHOW」で勢い余って、いや確信犯的に客席に飛び込んでファンを狂喜乱舞させる吉井。タオルをもらったりバラの花をもらったり、その薔薇の花をエマのギターネックに飾ったりする吉井。「♥」公演のコンセプトは、明るく開放的なロックンロール、派手な演出、ロックスターの自由奔放なパフォーマンスにあると見た。そしてデヴィッド・ボウイへのオマージュをたっぷりと盛り込んだ「SUCK OF LIFE」の、今日の決めゼリフは「THE YELLOW MONKEY is your life!」だった。なんという自信、なんというファンへの愛情。
「昔と変わらないところも、変わったところもあるけれど、THE YELLOW MONKEYは、日本にちゃんとあっていいバンドだと思っています。もう解散しませんので(笑)。これからもTHE YELLOW MONKEYをよろしくお願いします」
我々はまだまだ小僧っ子です――。そう言ってから歌った「I don’ t Know」の引き締まったグルーヴと洗練された歌の表情に、昨日感じたのが集大成だとすれば、今日感じたのはここが始まりというみずみずしさ。日々変わる感性と演奏、これがTHE YELLOW MONKEYの、生涯をかけたロックショー。
アンコール。1曲目は、エマらしい繊細な歌詞とメロディを持つミドルロックチューン「Horizon」。夜の闇から抜け出した美しい雲がやがて朝の光に包まれる、壮麗な映像と音との見事なコラボレーション。
「あらためて、みんなと一緒に、バラ色の日々を探しに行きましょう」という、完璧な導入からの「バラ色の日々」の、なんという多幸感。「悲しきASIAN BOY」で登場する、ギラギラ輝く電飾と巨大なセットの回転も、昨日とは全く動きが違う。吉井、エマ、ヒーセが寄り添って決めのポーズを作る。「We are No.1 R&R band of asia!」、吉井の声が一層明るく輝いて聴こえる。
「2016年からずっとサポートしてくれているツルちゃん、鶴谷崇。精密な時計のような、THE YELLOW MONKEYのエンジン、アニー、菊地英二。ミックにキースが、ボウイにミック・ロンソンがいたように、吉井和哉には菊地英昭がいる。ポール・スタンレーにジーン・シモンズが、ヴィンス・ニールにニッキー・シックスがいたように、吉井和哉には廣瀬洋一がいる」。吉井のメンバー紹介には愛しかない。そしてヒーセの「今や日本の宝です。オンボーカル、吉井和哉!」という紹介を受け、「おまえたちには吉井和哉がいる!」と叫ぶ吉井。すぐに「おまえって言ってすみません(笑)」と落とす吉井。
ラストチューンは、昨日の1曲目だった「この恋のかけら」だ。エマの艶やかなギターが広いスーパーアリーナに響き渡る。吉井の優しい歌声が幸福な1日を締めくくる。「♥」公演ならではの、愛に溢れた大団円。残念ながら体感できなかったが、「♠」公演にも「♣」公演にも、その日そこにしかない幸福があったはずだ。メンバーが去った後、「ボナペティ-2」をフルコーラス、字幕付きでもう一度。THE YELLOW MONKEYの長いヒストリーに新たなページを刻んだ『GREATFUL SPOONFUL』ツアーの、これは忘れがたい1日の記憶。その記憶だけでしばらくいい夢が見られるような、素晴らしい2019年の思い出と、THE YELLOW MONKEYの栄光の未来へ祝杯を。
取材・文=宮本英夫
撮影=Mikio Ariga
>>【ライブレポート】2019.7.6(土) 埼玉 さいたまスーパーアリーナ

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