【Official髭男dism インタビュー】
その時々の自分たちのやりたいことを
切り取って作っていった
「Pretender」「宿命」「イエスタデイ」と、発表する楽曲が配信チャートの上位に滞空し続ける“ヒゲダン”ことOfficial髭男dismが、満を持してメジャー1stアルバム『Traveler』をリリース。お馴染みのシングルや多数のタイアップ曲を含む2019年きっての話題作だ。
アルバム全体のコンセプトより
今やりたいことを思い切りやる
シングルや配信リリースしている曲が複数入っているのはすごく今っぽいスタイルだと思うんですが、アルバムというかたちにするのは難しかったですか?
藤原
コンセプトは付けづらいっていうところは正直ありますけど、そもそもコンセプトを決めなければいけないって決まりはどこにもないので、だったら“今やりたいことを思いっ切りやればいいじゃろう!”みたいなことを話して作ったアルバムだったことは、なんか記憶に残ってます。
小笹
2月〜3月に合宿を行なったんですけど、その頃からアルバムの全貌を見据えて曲を選んだり、アレンジを決めたりし始めたんですよ。
「Amazing」ができた時ですか?
小笹
そうです、そうです。その時、「Rowan」と「旅は道連れ」と「宿命」の欠片を生んだ感じですね。
時系列は分かりませんが、1曲目の「イエスタデイ」は「宿命」に続く蔦谷好位置さんのプロデュースですね。これはどういうところからできてきた曲ですか?
藤原
EPの『Stand By You』を出す時、チームの中に「Stand By You」リード曲反対派っていうのがいたんですよ。“曲が弱いからもうひと声!”みたいな。全然悪いことじゃないんですよ。それで“よし、次のリード曲に相応しいであろう曲を作ってみよう月間”にて生まれた楽曲のひとつが、この「イエスタデイ」のもとになる曲だったので。この曲は蔦谷さんがはまりそうな話をしてたんで、時系列的には実はこの「イエスタデイ」を先にお願いしていました。
“人の評価を気にせずいこう”っていう藤原さんの歌詞も印象的で。
藤原
そうですね。家族とか友達とか仲間みたいなものを守る時って、だいたい人のこと犠牲にしていかなきゃいけないから。このバンドでのし上がっていくって言っても、チャートの1位は1アーティストしか入れないわけだし、避けられない世の定めとしてあるので。そこと苦悩していくっていう歌ではありますね。これは『HELLO WORLD』って映画の主題歌なんですけど、その映画にも実は後々結び付いてくるようなコンセプトでもあったなと思ってます。
そして、今回のアルバムのひとつのトピックとして小笹さんと楢﨑さんの作詞作曲曲が入っているわけですが、小笹さん作の「Rowan」は意外な曲調でした。
小笹
そうですね。誰も予想だにしてない。パンクを作ってくるんじゃないかとみんなが予想してくれてたんですけど、全然違って。これは僕が上京して1年目くらいの時にすごい引きこもって(笑)、ドープな楽曲を聴いてる時期があったんですけど、そういうものに憧れがあったんです。今回、自分が1曲枠をもらえるということで、ちょっと好きにやってみようかなと思って。それで日本のヒップホップのワークスでも僕が一番カッコ良いと思う作品をたくさん作ってらっしゃったThe Anticipation Illicit Tsuboiさんと一緒に作業しました。
The Anticipation Illicit Tsuboiさんのどんなところに注目したんですか?
小笹
The Anticipation Illicit Tsuboiさんのワークスについてちゃんと調べたことはなかったんですけど、調べるとその中にPUNPEEさんとかJJJさん、KANDYTOWNとかがあって、僕が音がいいと思ったのは全部、The Anticipation Illicit Tsuboiさんだったので、録ってもらいたいと思って。しかもレーベルの人によると“アレンジも全部やってくれるらしいよ”みたいな話だったので、そこまでお願いしたほうが行くとこまで行けるというか、ヒゲダンの幅も広がるだろうし、僕のやりたいことに合致していたので、録りもアレンジもお願いしました。
藤原さん作の「最後の恋煩い」は素直にファンキーな曲ですね。
藤原
この曲のサビの部分はメロディーが持ってきましたね。
素直にアレンジしていった曲なんですか?
藤原
素直かどうかと言われると…素直なふりして裏ではちょっと舌出してるみたいな感じかなと思ったりしております。ちょっとサイケデリックな場所を入れてみたりとか、ちょっと茶目っ気を入れてみたりというのが、コーラスワークやオブリガードとかにあったり。
楽器の音はオーセンティックないい音ですね。
小笹
もうちょっとパーティーな仕上がりになるかと思ったら、意外と棹モノとかがどしっと音が鳴って。作りながら質感が変わっていきましたね。
藤原
まぁ、実機(フェンダー・ローズとウーリッツァー)を今年購入したので、張り切ってそれを弾いてみました。“やっぱりいい音だなぁ”と思いながら。
歌詞に関してはヒゲダンの“永遠の伴侶シリーズ”は続いていくんだなと思って。
“生前贈与”なんてワードも出てきますし(笑)。
藤原
わりとフックラインがいろいろ出てきて、《最後の恋煩いを始めよう〜》っていうラインがメロディーと一緒に出てきてくれたので、そこからパズルを埋めてくみたいに“じゃあ、どういうことにしようか。最後の恋煩いとはなんぞや?”とブレストしていったところはありますね。“生前贈与”もメロが連れてきてくれたんですよ。
(笑)。脳のどこかにあったんですね。
藤原
そういう仕事を僕が昔してたって話も絡んでくるんですけど。生前贈与の冊子っていろんな金融機関に置いてあるから、イラストなのか写真なのかは別として、お年を召した方々の考えることだから当然そういう方々が出てくるので、そういう歳になっても“まぁ、喧嘩しいしい仲良くしましょうや”っていう感じはすごくいいなと思って。