【THE CHERRY COKE$ インタビュー】
バンドの力強さやタフさ、
しぶとさが詰まった一枚
20年の時を経なかったら
できなかった作品かもしれない
あと、今作はこれまで以上にアイリッシュパンクを基調に、さまざまな国の音楽性を取り入れているのも特徴的かなと。ミュゼット、バルカン、クレズマー、ロシア民謡、ブルース、カントリーにラスティック、和的で雅やかなところもあったりするし。
MASAYA
より自分たちの音楽性とブレンドさせて、その辺りは上手く出せるようになった感は自分でもありますね。「Flame」ではロシア民謡の「カチュウシャ」や「トロイカ」の名フレーズを取り入れたりしたし。やはり各国の持つ民謡の哀愁が好きなんでしょうね。気付いたらブレンドしていたっていう場合がほとんどで。
KAT$UO
民謡性もですが、各曲の持つキャラみたいな部分ですかね。そこはなるべく明確に各曲作っていきました。
TOSHI
ドラムやリズムに関しても、これまでになかったタイプのものを入れたくて実践させてもらいました。その分、ライヴでは大変になって、自分の首を絞めるかもしれないことは覚悟の上で(笑)。
MASAYA
とにかく今回は制作の時間がなかったんですよ。それが逆にまとまりやバンド感を生み出したのかなと。いつもはきっちりデモテープを作っていくんですけど、そこまでの時間が取れず…。だから、弾き語りや鼻歌をヴォイスメモで録ったものをメンバーに聴いてもらい、そこからレコーディングしていく感じでした。
KAT$UO
その鼻歌の適当な歌詞にキャッチーで耳に残るものもあったんで、そのまま採用させてもらった箇所もあったり(笑)。でも、だからこそ各人が各人なりのアレンジや肉付けができた感もあって。なので、より全員で作った感が増しました。
MASAYA
それもあって、自分では想像も付かなかったり、これまでなかった要素も楽曲に加味されましたね。俺が素材だけ持って行って、あとはメンバーで各々が調理していくんですけど、ちゃんとTHE CHERRY COKE$の楽曲として成立するという。“おおっ、これぞバンドで作っていく楽曲だ!”と実感しながら制作してました。
ところで、どうして今回はそんなにタイトなスケジュールになっちゃったんですか?
KAT$UO
今年は20周年ですからね。そこに合わせてアルバムを出したかったんですよ。でも、すごかったのはLFさんやTOSHIちゃんで。レコーディングってまずはドラムとベースから録るじゃないですか。その段階ではみんながどんなものを乗せるのかも、どのような歌詞や歌が乗るのかも、まったく分からないわけで。でも、ちゃんと完成形を想像して演奏してくれたんですよ。しかも、これまでのチェリコの系譜や音楽性を熟知しているから、それをしっかりとブレンドさせた上で。“この能力はすごい!”と改めて感心しましたね。
TOSHI
各曲の完成形が自分なりに想像できたんですよ。あと、各人の手癖とか…例えば“ここできっとMASAYAさんはチャカチャーンって弾いてくるだろうな”とか(笑)、そういうのも想像しながら、今回はあえて最初に入れ込めるだけの音を入れ込んでみました。必要と思われるものはとりあえず全部突っ込んで、あとから全体を見つつ不必要なものを抜けばいいっていうか…そんなドラムの録り方でした。でも、音決めにはかなり時間を使わせてもらいましたね。各曲に合うチューニングや機材をいろいろと試して、しっかりと決め込んでからレコーディングに臨んだんですよ。だから、より各曲が違って響いてくれたのかなって思いますね。
MASAYA
TOSHIちゃんの予測力や対応能力はすごいですよ。ちゃんとチェリコの歴史を重んじてくれている。
“歴史を重んじる”と言えば、この20年、紆余曲折や試行錯誤を繰り返してきた、歴代のTHE CHERRY COKE$の良い部分が要所要所で取り込められていて、しかもそれが各曲を成立させている印象も受けました。
MASAYA
まさにそこなんです! この20周年、かつて在籍してくれたメンバーもそうだし、これまでの音楽性もそう。あと、せっかくのこの機会なので、“昔は聴いていた”っていう方ももう1度取り込みたくて。THE CHERRY COKE$を通って来てくれた全ての人、その人たちに再び集まってもらいたかったんです。なので、新しい人に興味を持ってもらえて、バンドを昔から知っている人にも納得してもらえる、そんな要素を散りばめてみました。実は、どの曲も仮タイトルは過去のチェリコの楽曲に近いテイストのタイトルを付けていたんです。“この曲ってあの時のあの曲みたいだよね”って。
TOSHI
結果、個人的には一番カッコ良い頃と肩を並べるぐらいのアルバムになったかなと。懐かしさもあるけど、今だからこそできる曲もありますからね。なので、20年の時を経なかったらできなかった作品かもしれない。内容に関しては、もう完全にこれは売れたなって(笑)。
MASAYA
これで売れなかったらどうしようもないし、もう成す術がない。そこまでの作品が今回はできた自負があります。
KAT$UO
間口も広いし、全体的にかなり良い意味で自分たちらしさをキープしつつ、聴きやすい作品になりましたね。昔聴いていた人、これから聴いてもらえる人…などなど幅広い人に聴いてもらい、ぜひライヴでみなさんとお会いしたいですね。20年間、紆余曲折ありながらも前を向いて進んできたバンドの力強さやタフさ、しぶとさを魅せてやりますよ。その辺りが詰まった一枚かな、今作は。
取材:池田スカオ和宏