劇団水色革命『マイバラード』でアイ
スリボンの世羅りさが初脚本・初演出
、雪妃真矢が初舞台、主宰MARUも役者
で久々登場

今、アイスリボンが熱い! アイスなのにヒート! あ、いやいや、これは劇団水色革命の記事だ。先日、コルバタ公演で志田光と対談したMARUが率いる水色革命第19回公演『マイバラード』には、「プロレスでハッピー!」を掲げ、後楽園ホール大会を定例化、横浜文化体育館でのビッグマッチも成功させるなど、業界最大の人気を誇るようになった女子プロレス団体アイスリボンの現役チャンピオン「AzureRevolution」が参戦! まさに旬、ピッチピチの現役王者を取材できてしまうのは、演劇が世界への窓、魔法の入口だからこそ。わからない方は文化庁「劇場,音楽堂等の活性化に関する法律」を読んでみそ! 趣味と実益を兼ねてる、職権乱用と言われようが構わない。劇団主宰で久々に女優として舞台出演するMARU、劇団員でもあり初の脚本・演出を担当する世羅りさ(インターナショナルリボンタッグ王者)、初舞台となる大人の魅力を兼ね備えた才女・雪妃真矢(ICE✕∞王座、インターナショナルリボンタッグ)のてい談をお届けする。
撮影協力:Theater新宿スターフィールド
――まず驚いたのは、現役のプロレスラーが脚本を書いたということです。どういうきっかけでそんな展開になったのでしょう?
世羅 最初、MARUさんから「世羅の演出で舞台をやらない?」と提案していただいたので「ぜひやりたいです」とお返事したんです。そしたら「脚本どうする?書く?」というLINEが来たので、てっきり「書け」ということかなと思って「じゃあやります」とお返事したんです。
MARU 私としては、脚本はさすがに書かないだろうと思ったんです(苦笑)。だから「書きます」と返事が来たときは、「お、できんのか?」って。
――いや、脚本を拝見したんですけど、破綻がまったくなくて、すごくよく書けていたので驚きました。
世羅 本当ですか、ありがとうございます。
世羅りさ 撮影:二石友希
――MARUさんの脚本は、奔放に場面転換があるのが特徴ですけど、世羅さんのはすごく丁寧に物語が構成されているし、言葉が丁寧だし。書いてみていかがでしたか?
世羅 最初、プロットはポンポンポンと出てきました。こういう子たちが登場したらいいなという感じで、日常のシーンはすぐに書けたんです。ただ起承転結で言えば「承」「転」が浮かばなくて、最初は「考案中」だらけの台本だったんです。
――結構、書けるもんだなって感じ?
世羅 いえ、もっと書けると思ったんですけど(笑)。全然書けなかったです。
――どんな内容にしたいと思ったのですか?
世羅 青春を書きたかったんですよ。
――電流爆破マッチとか、「人毛デスマッチ」「春夏秋冬デスマッチ」「蛍光灯デスマッチ」をやっている世羅さんの世界とは思えませんでした。とてもさわやかで(笑)。
雪妃 世羅さんはリングが上がると狂いますけど、普段の生活から狂気は感じませんよね。
世羅 (苦笑)それで青春と言えば部活動。私は剣道をやっていたので、最初は剣道の話にしようか考えたんですけど、スターフィールド(旧タイニイアリス)の天井が低いから、さすがにできないなあと。それで学生時代に楽しかったことを考えたら合唱だったんです。合唱ならやっていない人はいないし、誰もが気持ちがわかる。ある日、雪妃に脚本の相談をしたときに、「何か一つの歌をストーリーにしたらどうですかとヒントをくれたんですよ。
MARU お、すごい!
世羅 それでテーマとなる曲をつけようと思って、「マイバラード」や「十七歳」といった既存の曲を想定したら書き進めることができたんです。
雪妃真矢 撮影:二石友希
雪妃 私は、自分のCDを出させていただいたときに、作詞もしたんです。そのときは世羅さんとのストーリーを書きました。私は歌詞にストーリーを乗せたんですけど、歌をテーマにストーリーを書くこともできるのかなと思って、何気なく言ったんです。
――ちなみにMARUさんが最初に台本を書いたときはどうでした?
MARUもう10年くらい前だから、、、忘れちゃいましたね。でも最初は苦労しませんでした。今はすごく苦労してますけど。
世羅 なにも知らないから書けるんだと思います。いろいろわかってしまうと、ああしなきゃこうしなきゃって縛り出てくるんじゃないですか、きっと。私の場合はなんとかなるだろうと思ったらなんとかなったという感じです。
――演出のことは考えて書きました?
世羅 いや、全然考えていません。役者さんの声を聞いてからじゃないとイメージが湧かなかったので、役者さんたちに助けられています、演出の方は。
MARU 頼もしいんですよ。脚本に関してはメールやLINEの文章がうまいので、会話も書けそうだとは想像していました。演出は、演出している姿がカッコいい。意外とパッパパッパと指示も出せるし、演出としてどこを見なければいけないのかがわかっているんです。
MARU 撮影:二石友希
――劇団主宰がちゃんと育ててきたということですね?
MARU いやいやいや(笑)。
――劇団の代表としてのMARUさんはどうですか?
世羅 劇団の代表としては、、、、
MARU なに、笑っているんだよ!
世羅 フフフ。行動力はあって頼りになるんですけど、おっちょこちょいで天然なところがかわいらしいです。私がなんとかする!というタイプなんですけど、ちょっと抜けてる。でもそういう魅力が人を惹き寄せるのかな。
MARU うれしいやら、うれしくないやら(苦笑)。
――それぞれの役について教えてください。
MARU なつみという役です。合唱が好きで声を使った仕事をしたいと考えている主人公、高校生の美咲のお姉ちゃんです。妹の美咲は劇団員の岩井杏加が演じるんですけど、普通の幸せな家庭で、妹とすごく仲が良くて、愛くるしい役です。
世羅 私は美咲が憧れている、ラジオのパーソナリティですね。ちょっとだけ出ます。雪妃に出ていただくのに、絡みがないのもへんなのでググッと自分の役を押し込みました。
雪妃 私は美咲の担任の神川先生です。私は昔、合唱団に所属していて、ずっと歌をうたいたかったんです。もしくは声を使った仕事をしたいと思っていた。でも気づけば親の言う通りに学校も出て、銀行に就職してた。そうやってずっと生きてきたんですけど、あるときから銀行が嫌で嫌で仕方がなくなって、「向いてない、絶対無理」と思うようになったんです。そのときにプロレスが好きで見ていて、やってみたいなあ、面白そうだなあって。両親には最後のわがままとして一度だけ夢に向かってみたいと伝えてプロレスラーを目指したんです。それでダメなら再就職すればいいんだし。神川先生も歌が好きでそういう仕事を目指していたんだけど、声をダメにして親に公務員になりなさいと言われて先生になった。自分も夢に挫折しているから、美咲に対して、そんなに甘いもんじゃないぜってドライに見ているところもあり、でも熱く応援もしたい気持ちがあるんです。たぶん、自分と重ねているからこそ親身になったんでしょう。私自身とも似ているんですよね。私も試合で声を潰して、前みたいに歌えなくなっちゃって。
世羅 ありがとうございます、雪妃のことを書きました。
左から雪妃真矢、世羅りさ、MARU 撮影撮影:二石友希
――ところで世羅さんと雪妃が舞台に出ると聞いた一方で、9月に団体のトップを懸けた横浜文体でのタイトルマッチで壮絶に戦ったじゃないですか? 大丈夫か、関係が壊れないかと心配になりました。僕はプロレスを素直に見るんで(笑)。
MARU 私もヒヤヒヤしてました。もう知ぃらないって思ってた。
雪妃 私たちが特殊かどうかはわからないんですけど、今までも何度か試合をしていても関係が悪くなったことがないんですよ。絶対勝ってやろうと思って、結構ひどい攻撃をしてケガさせちゃったこともあった。だから文体も私は不安はなかったです。たぶん殴り合って私が瀕死の状態になったとしても信頼は揺るがないと思います。
世羅 私も雪妃ならなにをされても許せる。右腕が逆肘になったりしたこともあって、
MARU ヤダヤダヤダー
――あなたも元プロレスラーでしょうに。
世羅 そのあと一緒に病院に行って、しゃぶしゃぶを食べて帰りましたからね。左手でしか食べられねえよって。
雪妃 ごめんね、世羅さんとか言いながら。
世羅 だからって恨むことも嫌いになることもないです。戦った方が仲良くなるよね。
雪妃 そうかもしれないです。一対一のシングルマッチをするたびに仲良くなっている。
――いや、まあ、相手によるかもしれないですけどね。
雪妃 そうかもしれないです。
――テレビでも拝見しましたけど、相当エグい技をやってましたよ。
雪妃 あのときはエグい攻撃したしされたし。コーナーの上から、頭から落とされました。
世羅 なんかマットがへこんでいたらしいよ。
MARU やー
雪妃 みんな雪妃が消えたって思ったらしいです。
二人 あはははは!
世羅りさ 撮影:二石友希
――ところでMARUさんと、世羅さんは元々女優としての顔も持っていながらプロレスをやられていたじゃないですか。
世羅 私は先に役者業をやっていて、映画のオーディションの話がきて、オーディション会場に出かけたら「プロレスデビューが絶対条件だよ」ってだまされて(笑)。でも楽しくなって今でも続けています。
MARU 同じです。でも私はだまされたわけではなく、芝居をやめて自分からレスラーになろうと思ったんです。
――プロレスをやったことで女優としてプラスになることは?
MARU やっぱり見せ方ですか。週に何回も何回も試合をして、人前に出てましたし、どう自分や試合を魅せるかは常に意識してますから。あと声が大きくなった(笑)。
世羅 共通するのは人前に立つことですよね。だんだん緊張もなくなって、なんでも見てくれってさらけ出せるようになる。舞台は特殊なセットではない限り、正面にお客さんがいるじゃないですか。それなのに舞台でも四方から見られることを意識しちゃう。難しいですよね。
――雪妃さんは今回、女優さんとして本格的に役名のある役を演じるというは初めてじゃないですか(過去にキンタロー主演舞台『リングリングリング』でプロレスラー役として出演経験あり)、結構やれるぜみたいな感じですね。
雪妃 難しくて、難しくて、難しくて(苦笑)。考えすぎるタイプなんですよ。小さなことが気になったら、取り憑かれちゃう。セリフを言っているときに自分の立ち姿が気になったらもう動かずに入られません。元の性格だと思います。プロレスの試合でも新人のときは、何かミスったらバタバタバタって、心が折れてダメになるようなタイプだったんです。舞台も言ってみれば新人ですから。難しいです。試合のときはコスチュームを着て、メイクをして、入場ゲートに入って、私は雪妃真矢、私は雪妃真矢、私は雪妃真矢と思うから大丈夫なんです。舞台でも私は神川先生、私は神川先生、私は神川先生と唱えれば大丈夫だろうと思います(笑)。
雪妃真矢 撮影:二石友希
――演出家から見て、雪妃さんはどうですか?
世羅 いや、何も言うことがないくらい完璧です。間の取り方、セリフの言い方、ニュアンスとか、立ち姿とかステキですよ。
雪妃 世羅さんは普段からダメ出しはしないんですよ。ここが良かった、ここが良かったと言うタイプ。だからLINEで今日のお稽古で私がダメだったところを教えてくださいとお願いすると、やっとちょっと指示してくれるみたいな感じです。
MARU 雪妃、すごいよね。本当に舞台経験ないの?っていうくらい堂々としているしオーラもある。
世羅 雪妃は見て研究しているんですよ。プロレスはもちろん、お芝居もミュージカルも映画もなんでも見るから吸収が早い。どうしてそんな間になる?みたいなことがまったくないんです。
MARU 撮影:二石友希
――では最後に意気込みを。
MARU 世羅の初の脚本・演出ということで、劇団集大成のつもりで取り組んでいます。最高の作品に仕上がるように頑張ります。あとは久しぶりの役者を頑張らないとですね。
雪妃 世羅さんはタッグパートナーとして大事な存在なので、そういう方が初めて手がける作品なので大切にしたいですね。立場はゲスト出演ですけど、経験がないからと迷惑をかけちゃいけないので、気合を入れて臨みたいです。プロレスラーではない雪妃真矢をお見せできるように頑張ります。
世羅 このたび、初めての脚本、初めての演出、ちょっとだけ出演ということでどうなることかと思ったんですけど、素敵な役者さんに囲まれて、最高の思い出が、
雪妃 思い出かい!
一同 ハハハハハ!
世羅 私はまだ27歳と若輩者ですが、若い皆さんの活力になればいいなと思います。世羅が書けるなら、自分でも何か挑戦してみようと思っていただけたらうれしいです。勇気を持って踏み出してほしいです。劇団の若手にも、そうやって育ってもらえるように。
MARU 私も27歳だよ、脚本初めて書いたの。
世羅りさ(右)と雪妃真矢 撮影:二石友希
撮影=二石友希
取材・文=いまいこういち

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