地球ゴージャス二十五周年 岸谷五朗
・寺脇康文にきく、祝祭公演『星の大
地に降る涙 THE MUSICAL』への思いと

俳優の岸谷五朗と寺脇康文が主宰する演劇ユニット・地球ゴージャスが結成二十五周年を記念した舞台『星の大地に降る涙 THE MUSICAL』を2020年3月10日(火)から、4月13日(月)まで千葉・舞浜アンフィシアターで行う。同作は2009年に地球ゴージャス10作目として上演された作品で、再演を求めるファンの声が高かったことから「祝祭公演としてふさわしい」とアンコールに応えたという。舞台は岸谷と寺脇以外の全キャストを刷新。主演は岸谷が“才能にほれ込んだ”と語る新田真剣佑が務める。稽古に向けて脚本、演出のアイデアを練っている最中という岸谷と、寺脇に舞台の見どころなどを聞いた。
ーー「地球規模で世の中の人の心をゴージャスにしたい」と立ち上げた地球ゴージャスが25年目を迎えました。節目の公演に向けてはいろいろな構想があったと思いますが、新作ではなく、再演を選ばれたのはなぜですか?
岸谷:地球ゴージャスは、常にその先に行きたいと活動しているので、再演はしないと考えていました。25年の活動の間に、スタッフから「岸谷さん、何周年を迎えました!」とか「観客動員が100万人を超えました!!!」と言われても、毎回、それは通過点だからとあまりピンときていなかったのですが、25周年と言えば四半世紀ですし、お客さんに喜んでいただけること、一緒に盛り上がることができることは何だろうと考えるようになりました。熟考した結果、これまで何度も再演して欲しいと言われていた作品をやって、お祭り公演にしようと思い立ったんです。
岸谷五朗
ーーたくさんの作品の中で、三浦春馬さんが舞台で初めて主演を務めた『星の大地に降る涙』に光を当てたのはなぜですか。
岸谷:1994年に「世の中の人の心をゴージャスにしたい!」と僕と寺脇が立ち上げた地球ゴージャスでは、毎回「生きること」をテーマにしてきました。昨年上演した『ZEROTOPIA』まで数えると15作品。2020年に上演すると決めた『星の大地に降る涙』は地球ゴージャスの10作品目として、2010年に上演されたものでした。約10年前の作品なのですが、物語の中では国などルーツが違う者同士の争いを描いていて、日韓関係や日米問題など今の世の中にもつながる部分があると感じたんです。10年も前の作品なのに、問題提起している部分について、古くささを感じないし、むしろ緊張状態が高まっている今だからこそ、改めて考えて欲しいことだと思いました。
ーー前作は、ザージャ率いる少数民族のタバラ族が暮らす地に、記憶喪失の少年・シャチと、謎の男・トドの二人の倭人がたどり着いたことから幕を開けました。言葉が違うことから意思疎通が図れず、また文化の違いに戸惑っていた両者でしたが、音楽などを通じて、理解し合おうと歩み寄る姿に心を打たれました。岸谷さんは出演のほか、脚本、演出も手がけられています。改訂版はどんな作品になりますか。
岸谷:“反戦”というテーマはそのままに、作品をミュージカル化しました。前作も歌をたくさん取り入れていましたが、今回はミュージカル用に書き下ろした新曲もあります。前回は物語にとって大切な部分は「台詞」で表現していましたが、今回は「歌」が物語を動かす大事な役割を担っています。
岸谷さんの表情に注目!
ーー岸谷さん、寺脇さんは前作と同じ役で出演なさるんですよね。
寺脇:はい。僕はザージャ。岸谷さんはトド役で出演します。同じ役ではありますが前と同じようにではなく、一から作り上げていこうと思っています。ザージャは自分が所属しているタバラ族を愛している男で、「タバラだ」と豪語する場面があるのですが、10年経って、58歳になった僕が言うパワーアップした「タバラだ」を楽しみにして欲しいですね。「来年空けたら、すぐに稽古だぞ」と大先生(岸谷)に言われているので、成長を見せたいです。
ーー芝居、笑い、歌、ダンス。さらに岸谷さんは津軽三味線、寺脇さんは和太鼓の演奏もあり、その迫力で観客の度肝を抜きました。
岸谷:そう……。また三味線の稽古が始まるが憂鬱です。すごい大変なんですよ。
寺脇:前作では、(木村)佳乃がしの笛を吹きましたが、佳乃はフルートを吹いた経験があって、すぐに音を出すことができたんです。だけど僕らはもう必死で練習をしていて……また頑張りたいと思います。
ーー若手実力派の新田真剣佑さんが、記憶をなくした青年・シャチを演じます。岸谷さんがその才能にほれ込んだとうかがいました。
岸谷:彼は前作の『ZEROTOPIA』にも出演してもらっていて、磨けばいい役者になると感じていました。春馬が演じた『星の大地に降る涙』を観て、ゴージャスのことを知ったと話してくれたのですが、そんな彼が時を経て、今作の主演を務めるのが『星の大地に降る涙 THE MUSICAL』になる。ゴージャスの魂をしっかりと受け継ぐ気負いを持って臨んでくれると期待しています。
寺脇さんもお茶目です
ーー役者としての新田さんに、お父様の千葉真一さんの姿は重なりますか?
寺脇:動きは天性のものがあって、やっぱり千葉真一さんのDNAはすごい! としみじみしました。後ろ回し蹴りなんて、動きが見えませんから……。親子なので父親と比較されることも多いと思いますが、マッケン自身も空手で全米3位に入賞していて、すごいんです。踊りも歌もうまいし、芝居はこれからの部分もありますが、勘がよくて素直なので、どんどん伸びていくと思います。
ーー新田さんとのエピソードは何かありますか?
岸谷:前作の舞台のとき楽屋にいたら、マッケンが「ちょっとあいさつしたいと言っている人がいるのですが、いいでしょうか」と入ってきて、「何? うん。いいよ」と伝えたら、千葉さんが「よろしく頼むよ」と入ってこられたことがありました。寝そべっていたのですが、驚いて飛び起きて、「ははーーっ!! こちらこそ、よろしくお願いいたします!!!」とひれ伏すような感じだったことがありました。あれは冷や冷やさせられました。
ーー前作では激しいダンスもありましたが、今回は?
岸谷:あります。そのために、ロードワークが欠かせないんです。ウォーキングから始まって、ランニング、ストレッチと2時間くらいでしょうか。
寺脇:うん。それでその後、焼き鳥屋でしょう。お酒を飲んで、カラオケに行って。
寺脇康文
岸谷:そう。全部で10時間くらいかかります(笑)。
ーーハードワークですね(笑)。前作ではEXILEのATSUSHIさんが、岸谷さんの原案をもとに、劇の主題歌「愛すべき未来へ」を書き下ろされました。同曲はミュージカルでも主題歌になっています。大切な曲だと思いますが、お二人にとって“愛すべき未来”はどんな未来でしょうか。
岸谷: 55歳になりましたが、50歳を過ぎた頃から自分とは血縁関係などがない子どもを見ても、「この子たちの将来を守るために。平和な世の中を」と常に考えるようになりました。飢えているとき、演劇は役に立たないかもしれないと無力さを感じることもありますが、衣食住が満たされたとき、心を豊かにするものは演劇だと信じて、真面目に真剣に演劇を続けていこうと決意したんです。世界情勢など複雑に絡み合うので、簡単に口にすることはできませんが、“子どもたちが夢を見ることができる平和な未来”が愛すべき未来だと思います。
寺脇:地球上にはさまざまな人が暮らしていて、いま僕たちが話しているこの瞬間に、ご飯が食べられなくてつらい思いをしている子がいるんですよね。物語の中で「国を作るのではなく、大きな家族を作ろう」という台詞がありますが、地球人として仲良くなるためには「大きな家族を作るんだ」という気持ちで他者を理解することが大事かなと感じます。国や肌の色、宗教ではなく、一人ひとりの人間として向き合うことができる将来が、愛すべき未来になればいいなと思います。
ーー舞台は舞浜のアンフィシアター(千葉県浦安市)で2020年3月10日から4月13日まで。続けてフェスティバルホール(大阪市北区)で5月3日から5月14日まで上演されます。
岸谷:物語の舞台である北海道蝦夷(えぞ)の壮大さを表現することができるのは、この2つの劇場しかありませんでした。奥行きやダイナミックさを伝えるために最高の小屋です。激動の時代を生きる人々の姿をぜひ、劇場に体感しに来てください!
地球ゴージャス結成二十五年、仲の良いお二人でした!
取材・文=Ayano Nishimura 撮影=池上夢貢

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