木下晴香、念願のタイトルロールに挑
む ミュージカル『アナスタシア』に
かける意気込みとは

ブロードウェイミュージカル『アナスタシア』が2020年3・4月に日本初演される。同名アニメ映画に着想を得て制作された本作。帝政ロシア時代の最後の皇帝ロマノフ2世ら一族が殺害されたが、皇女アナスタシアだけは生き続けている、という歴史上の伝説をもとにした物語だ。SPICEでは、自分の過去を辿る主人公アーニャ役を演じる葵わかなと木下晴香に取材を実施。数々のヒロイン役を立て続けに演じる気鋭のミュージカル女優・木下晴香が、本作にかける意気込みとは?
ーーアーニャ役に決まった時はどのように感じましたか?
とにかくうれしかったです。日本初演の作品に出演すること、主演を務めさていただくことが目標だったので、この作品で両方が叶えられて『アナスタシア』とのご縁を感じました。
木下晴香
ーー現時点で、アーニャをどのように捉えていますか?
オーディションを通して思ったのは、たくましい、という言葉がふさわしい女性だということです。アーニャは記憶をなくして一人で生き延びてきたという点で、いろいろな経験を通して強くなった子。オーディションでは演出の方から、もっと強く、男の子っぽくと言われました。たくましい、というのがわかなちゃんと共通見解ですね。そして、すごく明るい女の子でもあります。オーディションの時に「そのセリフはそんなに暗く言わなくていいんだよ、すごく楽しいセリフなんだよ」と仰っていただいて、自分が思うものよりもテンションを上げて、彼女の明るさを軸に持った上で向き合っていかないといけないなって思っています。
ーーオーディションはどのような感じだったのでしょうか。
相手役をしてくださる代役の方がいて、3シーンほどやりました。歌も3曲それぞれアドバイスをいただきながら歌って。少しですがダンスの審査もあったんです。私が一番言われたのは“明るさ”。私の解釈だと深くしみじみ受け取って返すような言葉を、アーニャはポンって返事をするようなところがあって。人生経験があって、自分の意見がしっかりしているからこそ、言われたことに対してすぐにレスポンスできる子なんだな、と思いました。
歌の審査は、発声法のことを細かく指導していただきました。アーニャは力強く生きてきた子だから、歌声も力強くあってほしい、とのことで。具体的に言うと、いつもだと裏声やミックスボイスで歌っている部分を、胸に響かせるチェストボイスでやってほしいとオーダーをいただき、どこまでできるかハラハラしながら歌いました。新しい挑戦なので、今すごく燃えています。
木下晴香
ーー『アナスタシア』の音楽の魅力を教えてください。
アーニャのソロ曲は、1曲の中で物語の波があって、ストーリーを運んで行くパワーがある曲なんです。初めて聞いた時は、徐々に盛り上がっていって、最後はロングトーンで決まって、本当に気持ちがいい曲だと思いました。「うわー、これを歌えたら気持ちがいいだろうな!」と他人事のように思っていたんですけど(笑)、いざ歌うとなると大変な曲で……。こうやってアーニャを演じる機会をいただけたので、自分が初めて聞いた時に感じた、湧き上がってくるような感動を日本のお客様にも届けたいなと思っています。
タイトルロールの誇りと覚悟を持って
ーータイトルロールを演じられます。舞台の真ん中に立つことをどう感じていますか?
『モーツァルト!』に出演した時に、ソロ曲で初めて舞台上に私一人しかいない経験をしました。そのシーンの舞台稽古を初めて行った時に、あの大きな空間を一人で埋めなければいけないということと、全ての視線が自分に集まることに圧倒されて、恐ろしくなってしまって。でも公演中にそれが気持ちいいって思える瞬間が来たんです。自信を持って舞台に立たないと空間は広がらないし、声も遠くまで届かないと気付いてから、ポジティブに考えるようになって、やりたい表現ができるようになっていったような気がします。『アナスタシア』ではまた新しい課題が出てくると思うんですけど、頑張って乗り越えて、一人でも迫力ある姿を新たにお客様にお見せできたらいいですね。​
ーー『ロミオ&ジュリエット』に続き、葵わかなさんと同じ役を演じられますね。
『アナスタシア』の出演が決まってすぐに、二人でオーディションの時の話をしました。わかなちゃんは自分の意見をしっかりと持っている人で、自分の意見と向こうの意見の相違がなくなるまで話して、一本通ずるものを持ってから演じるタイプ。私はまずやってみて、違和感を持ったら直していくタイプだから、そこが違うところですね。お互いに意見を交わしながら、切磋琢磨していけそうだなって思っています。
木下晴香
ーー木下さんだから知っている葵さんの一面を教えてください。
物怖じしない自分をしっかりと持っていて、それこそアーニャにぴったりという印象。それでいて、繊細で周りの物事にすごく気が付くタイプですね。自分の役のことだけじゃなく、この作品はっていう話がよく出るくらい、全体を考えている人なんです。同じ役を演じる上で、すごく心強いです。プライベートでも仲良くさせてもらっていて、わかなちゃんも私も寂しがり屋だから、よくお互いに連絡を取り合っているんですよ。​
ーー魅力的な出演者の方々が集います。共演が楽しみな方は?
みなさん楽しみなんですけど、個人的には石川禅さんとの初共演がうれしいです。まだ私が高校生だった頃に『レディ・ベス』の博多座公演を観た時、ミュージカル講座みたいなものが開催されていて、その講師が石川さんだったんです。客席でお話を聞きながらいつか同じ舞台に立ちたいなって思い描いていたのでうれしいですし、これからお話しするのが楽しみです。​
ーー最後に、『アナスタシア』で新たな挑戦だなと感じていることを教えてください。
ヒロイン役はやらせていただいてきましたが、主演として舞台の真ん中に立つ、という覚悟は、初めて。これまで出演した舞台の座長の背中ってすごく大きくて頼り甲斐があると感じていたんです。今回、先輩方に支えていただくことになると思うんですけど、カーテンコールの最後で、私がアーニャです! って誇りを持って出ていけるように、覚悟を持って頑張りたいです。これからお稽古で、もっとプレッシャーもかかるだろうし、責任も感じるだろうけど、頑張って乗り越えた姿を、劇場に観に来ていただきたいです。​
木下晴香
取材・文=永瀬夏海 撮影=中田智章

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