トム・ジョンストンの
パワーが炸裂する
ドゥービーブラザーズの
『キャプテン・アンド・ミー』

ドゥービーブラザーズの歩み

1970年、ギター&ヴォーカルのトム・ジョンストン、同じくギター&ヴォーカルのパット・シモンズ、ベースのデイブ・ショグレン、ドラムのジョン・ハートマンの4人組で、第1期ドゥービーブラザーズはスタートする。フォークロックタイプのデビュー作『ドゥービーブラザーズ・ファースト』(‘71)をリリースするが、ジョンストンとシモンズの音楽性をうまく活かせずに鳴かず飛ばずの結果となった。

デビューアルバムをリリース直後、ベースのショグレンの代わりに、シモンズの旧友のタイラン・ポーターを迎え、2人目のドラムにマイケル・ホサックが加入、大人しいフォークロックから大音量のアメリカンロックグループへと大幅な方針転換を行ない、多くのファンを持つ黄金期とも言える第2期ドゥービーブラザーズが誕生する。この時期は曲によってジョンストンのダイナミックさとシモンズの繊細さを分散させることで、良い結果を生むことになる。2nd『トゥールーズ・ストリート』(‘72)からは「リッスン・トゥ・ザ・ミュージック」(全米11位)、カバー曲の「ジーザス・イズ・ジャスト・オールライト」(全米35位)やシングルカットこそしていないが代表曲のひとつである豪快なアメリカンロックナンバー「ロッキン・ダウン・ザ・ハイウェイ」を収録するなど素晴らしいアルバムとなっている。

なお、第2期にはキーボードでリトル・フィートのビル・ペインが参加しており、第2期ドゥービーブラザーズの成功になくてはならない存在であった。ペイン自身もドゥービーブラザーズには愛着を持っており、何度も正式メンバーにと誘われたのだが、人気はドゥービーブラザーズには劣るがリトル・フィートの高い音楽性が彼をとどまらせたようだ。

熱いロックと
フォーク(カントリー)ロックの
バランス

ドゥービーブラザーズのグループとしての魅力は、対照的なふたりのソングライター&ヴォーカルが雰囲気の違う曲を書くことにあった。トム・ジョンストンのパワフルで荒削りのハードなナンバーと、パット・シモンズのフォーキーで繊細なナンバーが初期ドゥービーブラザーズの特徴であり、その絶妙なバランス感(誰もが長続きはしないだろうとは考えていたが)が素晴らしかった。カントリーロックタイプの「リッスン・トゥ・ザ・ミュージック」とハードなアメリカンロックの「ジーザス・イズ・ジャスト・オールライト」の2曲がヒットしただけに、ジョンストンとシモンズは自分たちの役割を明確に認識したはずである。そして、その役割がピッタリはまったのが、続く3作目のアルバムとなる名曲揃いの『キャプテン&ミー』(‘73)なのである。

本作『キャプテン&ミー』について

収録曲は全部で11曲。前作と比べ、演奏面でもヴォーカル面でも格段にパワーアップしており、ツインリードギター、シンセ、パーカッション、マウスハープなどの使用が適材適所であり、アレンジ面にかなりこだわったことが分かる。1曲目の「ナチュラル・シング」から4曲目の「ダーク・アイド・ケイジャン・ウーマン」まではジョンストンがソングライティングを務めていて、リードヴォーカルも彼が担当している。この4曲どれもが名曲・名演で、特に「ロング・トレイン・ランニング」(全米8位)と続く「チャイナ・グローブ」(全米15位)は、ロックの醍醐味がしっかり味わえる傑作である。

他にもハードロックンロールの「ウイズアウト・ユー」(珍しく、ハートマンとホサックの共作)と「イーヴル・ウーマン」(これも珍しいシモンズによるハードロックナンバー)や、ドゥービーブラザーズの代表曲のひとつとして知られるカントリーロックの名曲「サウス・シティ・ミッドナイト・レディ」では、当時スティーリー・ダンに在籍していたジェフ・バクスターがペダルスティールで参加しており、これがきっかけとなり、のちに彼もドゥービーブラザーズのメンバーとなる。サザンロック風テイストの「ユカイア」は隠れた名曲だと思う。タイトルトラックの「キャプテン・アンド・ミー」はジョンストンの曲だがシモンズが得意とするタイプのナンバーで、組曲風の展開を見せる。ここでは「リッスン・トゥ・ザ・ミュージック」と同様、バンジョーが効果的に使われているのだが、なぜかどちらもクレジットがない。弾いているのはシモンズで間違いないだろう。

その後のドゥービーブラザーズ

本作は全米チャートで7位となり、イーグルスと並んでウエストコーストロックの代表グループとして彼らは全盛期を迎えることになる。この後にリリースした4th アルバム『ドゥービー天国(原題:What Were Once Vices Are Now Habits)』(‘74)では、シモンズ作の「ブラック・ウォーター」で念願の全米1位を獲得するなど充実した活動を展開するのだが、ジョンストンの体調不良(ドラッグによる)などで、5th作の傑作『スタンピード』をリリース後にマイク・マクドナルドと入れ代わるかたちで休養を余儀なくされ、ジョンストン時代のドゥービーブラザーズは一旦幕を下ろすことになるのである。

前述の『ノー・ニュークス(ミューズ・コンサート)』に登場するドゥービーブラザーズは、マイク・マクドナルド加入後のAOR路線を突き進んでいる時で、全米1位を獲得した8thアルバムの『ミニット・バイ・ミニット』(‘78)が爆発的にヒットした頃に当たる。

TEXT:河崎直人

アルバム『THE CAPTAIN AND ME』1973年発表作品
    • <収録曲>
    • 1. ナチュラル・シング/NATURAL THING
    • 2. ロング・トレイン・ランニン/LONG TRAIN RUNNIN'
    • 3. チャイナ・グローヴ/CHINA GROVE
    • 4. ダーク・アイド・ケイジャン・ウーマン/DARK EYED CAJUN WOMAN
    • 5. クリア・アズ・ザ・ドリヴン・スノー/CLEAR AS THE DRIVEN SNOW
    • 6. ウィズアウト・ユー/WITHOUT YOU
    • 7. サウス・シティ・ミッドナイト・レディ/SOUTH CITY MIDNIGHT LADY
    • 8. イーヴル・ウーマン/EVIL WOMAN
    • 9. オコーネリー・コーナーズ/BUSTED DOWN AROUND O'CONNELLY CORNERS
    • 10. ユカイア/UKIAH
    • 11. キャプテン・アンド・ミー/THE CAPTAIN AND ME

OKMusic編集部

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