菅野祐悟「今までとは違う、新しいア
ニメコンサートになる」 『PSYCHO-
PASS サイコパス IN CONCERT』

2020年1月、2月に、アニメ「PSYCHO-PASS サイコパス」シリーズ、初のコンサート『PSYCHO-PASS サイコパス IN CONCERT』が東京・大阪にて開催されることが決定した。本コンサートは2012年にスタートしたTVアニメ第1期シリーズ、第2期シリーズ(2014)、「劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス」(2015)、劇場版3部作「PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System」(2019)、TVアニメ第3期シリーズ(2019年10月17日放送開始)の全シリーズで音楽を担当する菅野祐悟と、同じく全シリーズで音響監督を務める岩浪美和プロデュースにて行われる。
劇伴を担当する菅野は「踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望」(2012年)や連続テレビ小説「半分、青い。」などをはじめ、多くの映画、TVドラマ、アニメ、ドキュメンタリー等幅広い音楽制作で活躍している。また、作曲とは別に、オーケストラによるコンサート活動を何度も開催している。
そんな菅野に、念願だったという『PSYCHO-PASS サイコパス IN CONCERT』がどんなコンサートになるのか、話しを聞いた。
ーーアニメ「PSYCHO-PASS サイコパス」の第3期シリーズが放送中ですが、2012年に始まった第1期作の劇伴を制作する際、作品に対してどんな印象を持たれましたか。
9年ぐらい前のことなんでもう忘れちゃいました(笑)。一から話しますと、『踊る大捜査線』の本広監督(本広克行)にお声がけいただいて、関わることになりました。最初の印象は、とにかく話が難しい。今はそんなに難しいとは感じないですし、とても楽しく拝見していますが、最初はそんな印象でした。どうして難しかったかと言うと、キャラクターの名前がぜんぜん読めなくて(笑)。鈴木さんとか、田村さんとかじゃないじゃないですか。狡噛(こうがみ)とか、宜野座(ぎのざ)とか、あまり見たことのない名字のキャラクターばかりで……。それが、劇伴を作る入口としてはとっつきづらいなっていうのは正直ありました。ですが、最初の打ち合わせで、どういうテーマや世界観の作品なのかということを本広さんを筆頭に、塩谷監督(塩谷直義)や音響監督の岩浪さん(岩浪美和)からいろいろと詳しくお伺いして、作品を理解しました。そこで、ようやく音楽の制作に入ったという感じです。
菅野祐悟
ーー菅野さんは音楽活動として、作曲とは別にコンサート活動もされています。作品を作ることとは別に、コンサート活動に力を注ぐ思いはどんなところなのでしょうか。
劇伴は、本来、聴くための音楽じゃなくて、BGMとして絵を盛り上げるための音楽だと思うんです。歴史的にもバレエ音楽とか、オペラとかにしても、本来、劇を伴奏するための音楽として作られてきました。ですが、今は形が変わり、曲だけが演奏会などで披露されている。それは劇がなくとも、曲だけで十分聴くに堪えうる素晴らしい楽曲だからということでもありますよね。
それを踏まえてですが、例えばドラマなどで僕の曲が流れて、見ていた人が「何だろうこの曲は?」と気になって調べて、演奏会があることを知って、コンサートのチケットを買って、会場に来てくれる。それは、ものすごく熱量が必要だと思うんです。会場が近くじゃないことも多いですからね。だから、コンサートは観客が生で聴いてみたい、と思える熱量のある曲を自分は書けているかどうかということを試す場でもあると思っています。代表曲や定番曲も演奏しますが、基本的にはその年に発表された作品の楽曲を中心に構成することが多いので、そこで自分の今年1年の出来を観客に評価してもらおう、という気持ちもあります。
ーー10年以上、コンサート活動をされていますが、続けていて心の変化などはありましたか。
変化は、ありましたね…そういう意味では。ドラマとかアニメの映像を一切使わず、コンサートをしてきましたが、最近自分を試すとか、お客さんと対峙するとかではなくて、楽しければいいんじゃない? もっと楽しんじゃっていいんじゃない? みたいに思っています。アニメとだって一緒にやりたい。やればいいと思うし、それによって楽しんでくれるお客さんがいるのなら、どんどんしたい。人前でファンと音楽を共有して、喜びを感じることができる職業(=ミュージシャン)だからこそ、そういうことをこれからも発表したい、という想いが出てきました。
ーーそれは、きっかけがあったのでしょうか。
僕が、もともと実写作品の人間で、当初はアニメというものに対してあまりにも無知だったんです。ですが、ここ10年ぐらいかな、多くのアニメに関わらせていただいて、関連イベントとかにもお誘いいただいたりして、観に行ったりとかして。そこで、アニメファンの方たちのアニメに対する熱量をとても感じました。音楽はもちろんですが、演者だけじゃなく、スタッフに対するリスペクトや楽しみにしていただいているところがわかったっていうのは大きいかもしれません。そんなファンと作品の音楽を、同じ空間で喜びを共有できる機会があるなら、どんどんやってみたいなという想いが生まれました。そういった経緯があって、今回「『PSYCHO-PASS サイコパス』のコンサートをやりたいんですけど……」という話を持ち掛けたら、ソニーさんから「じゃあ、ぜひやりましょう」って言っていただいたので、実現することができました。
菅野祐悟
ーーなるほど。それが『PSYCHO-PASS サイコパス IN CONCERT』開催の流れなんですね。コンサートのプロデュースは、アニメで音響監督をされている岩浪美和さんですが、岩浪さんとはどのようなお話しをされているのでしょうか。
まず、僕と岩浪さんは音楽制作において、役割分担がすごくはっきりしています。僕が曲を書き、それを岩浪さんが音響効果や台詞と合わせたりして、バランスを取るようなプリプロダクションと言われる作業をしてくださっています。その作業に関して、僕は岩浪さんを100%、200%信用して、一切口を出していません。それはどうしてかと言うと、岩浪さんは僕が「ある子供(音楽)を育てた。この子はこういう子です」と詳しく説明しないで、「この子を見れば、どういう育て方をしていたか理解してくださる」方だからです。岩浪さんに任せれば、僕の子供(音楽)をさらに素晴らしく育ててくれると確信していますので、僕は曲を作るところまで行い、その後はお任せしています。岩浪さんとは愛のリレーというか、ラブレターの交換みたいなことをやっているような感じなのかもしれません(笑)。
今回のコンサートも岩浪さんに演出をお願いしていますが、アニメの楽曲作り同様、信頼関係の元に、すごく良い仕事ができているのではないかなと思います。アニメコンサートの多くは、映像とオーケストラの楽曲がコラボレーションする、というところが見どころですが、映像があるとお客さんは映像に意識を取られがちですよね。今回ももちろん映像は入れるんですが、音楽にフォーカスできるよう、今までとは異なる映像の使い方をしたいと考えています。映像とセリフをきっかけにして、音楽で「PSYCHO-PASS サイコパス」の世界にグッと引き込むような作りを目指そうとしています。
ーーそれは面白いですね。人間には視覚の方の印象が強いので、映像があるとどうしても見てしまう。ですが、映像をきっかけに「PSYCHO-PASS サイコパス」の世界に入ることができるなんて……。
面白いものになると思います。皆さんをワクワクさせるものになるのではないかな。フルオーケストラではないですけど、30人ぐらいの演奏家が出演する予定です。生音も入れるし、打ち込みも入れる。ただ、いわゆるなんとかシンフォニーやなんとか交響楽団みたいな方々とやるような楽曲でもなかったりするので、そこは新しいものになると思います。ドミネーターの曲とかはオーケストラで表現するのは難しいですから(笑)。僕のオーケストラコンサートだと、エレキギターやベース、ドラムがいる。そして、僕がDJをやって、スクラッチでオーケストラをバックにこすってみたいなこととかもやっています。だから、もしかしたら今回もDJコーナーみたいなのがあったりするかもしれません。
ーー「PSYCHO-PASS サイコパス」の好きな方は絶対楽しめますね。
必ずそう思っていただけるものにします。音楽という今までとは異なる切り口で「PSYCHO-PASS サイコパス」を楽しんでいただくことで、作品の新たな見方も生まれてくると思います。『単独で聴いても意外とエモいじゃないか』ということとかもきっとわかっていただけると思いますし。僕自身もすごく楽しみでワクワクしていますので、アニメのファンはもちろん、興味がある方は同じ空間で「PSYCHO-PASS サイコパス」の世界を楽しみましょう! 会場でお待ちしています。

菅野祐悟

インタビュアー=加東岳史 撮影=敷地沙織

アーティスト

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