長谷川京子、シルビア・グラブ、吉田
栄作、三浦涼介ら出演 森新太郎演出
の舞台『メアリ・スチュアート』製作
発表レポート
2019年12月10日(火)、本作の製作発表会見が開かれた。演出の森新太郎、出演者の長谷川京子、シルビア・グラブ、三浦涼介、吉田栄作、鷲尾真知子、山崎一、藤木孝が出席し、意気込みを語った。会見の様子を写真とともにお伝えする。
森:ドイツの文豪シラーの代表作『メアリ・スチュアート』をイギリスの詩人のスペンダーという方がぎゅっとエッセンスを凝縮して、よりドラマチックに脚色したものがこの作品になります。私の所属する演劇集団「円」には、今までやってきた台本の書庫があるんですね。読んだら返さなくてはいけないんですけど、若い時の私が読んで、そのまま返さずにいたのが、この作品でして(笑)。当時気になったんでしょうね。よく覚えていないんですけど、この作品はちょっとネコババしておこうと思って。
コインランドリーに行った時に、時間を潰さなくてはいけない時があって。この本を1冊持って行って読んだら、なんてすごい戯曲なんだろう、と。乾燥機が終わっても読みふけっていたんですけれども(笑)、とにかくこれは今の日本の話じゃないかと驚愕しまして、すぐ、世田谷パブリックに電話して、「これを今すぐやらせてくれ」と言ったら、さすが世田谷パブリックさん。「今すぐやりましょう」となって、自分の今一番気になっている作品をやれる幸運にめぐり合いました。
それにプラスして、男たちにかき乱されている2人の女王が、男社会で生き抜くことにおいては、多分お互いにお互い以上の共感者が見当たらないぐらい、まさにお互いの立場が一番分かり合える存在でありながら、最後の最後まで一番分かり合えない、許し合えないという状況が皮肉だと思いましたし、これは現代と重なるなと思いまして。
それと、今回は、基本的には権力者たちばかりでてくる話で、舞台上には出てこないんですけれども、とても民衆の存在が大きな意味を持っています。特にエリザベス女王がすごく権力を持っているんですけれども、常に民衆の存在にビクビクしている。気ままな民衆の世論というものにビクビクしながら、この人たちの顔色を常に伺いながら、自分の政治を決めていく。そういうところも、とても読んでいて胸が痛くなるぐらい、なんて今の話なんだろうと思います。
実際にシラーが書いたのは200年前のドイツですし、題材としては400年前のイギリスの話なんですけれども、見てくださったお客さんは、僕と同じで、これ、今の日本の話だろうと間違いなく思ってくれるだろうと思います。本当に僕がやりたい一心で選んだ本ですので、喜びと同時に覚悟を持ちながら、演出にあたっていけたらと思います。
非常に人間関係が面白い話で、掘れば掘るほど、二人の女王、プラス周りでうごめく男性たちのキャラクター設定がすごく楽しくて、女性の私が言うのもどうかと思うんですけど、ちょっと滑稽に見えたりとか、権力というものに対して、男の人たちが目を光らせて動いている感じとか、確かに現代と全く変わらないなというところと、実はこの女王2人が一番男前だったというところに落ち着くなと思っていて、非常にそれは面白いなと思っています。
稽古の中では森さんに色々ご指摘頂いて、自分の癖であったりとか、本当に細かいところ、今まで何となくごまかしやってきたところ、痛いところを毎日つかれていて。心が折れないように毎日精進して頑張っています。あと稽古期間が1ヶ月強ありますが、身を引き締めて、体力もつけて、きちんとした格好いいメアリ・スチュアートになるように仕上げていきたいと思いますし、周りの芸達者な方たちにここはちょっと甘えさせて頂いて、いろんなアドバイスをいただいて、みんなで仲良く楽しくやっていければいいと思います。よろしくお願いします。
長谷川さんがリラックスするために3日間稽古が行われたと言われたんですけど、長谷川さんのためではなく、いやいや私のためだろうと思って。色々感謝しているんですけど、すごいキャストの中に自分入っちゃったな、すごく嬉しいけど今はただ単に怯えている状況です。森さんもこの作品を一番やりたかったと仰ったので、私も覚悟を決めて、どれだけ厳しい状況にも耐えていこうかなという今日この頃です。本番が怖いけど楽しみです。
その話の最後はメアリが断頭台で処刑されるところまで行くんですけど、映画の中では、説明されている物語から、最後の断頭台まで飛んでいるなという部分があった。まさにその飛んでいる部分を今回の劇でやりますので、映画を見てから、来ていただいてもいいのかなと思いました。僕の役は、二人の女王の心を掴んだであろう男を演じますので、ぜひお楽しみに。よろしくお願いします。
でも、そこにはそれなりの生きてきた、ハンナはハンナなりの理由があって、一生懸命生きている。私は今回のテーマは、いかに、メアリを愛せるか。愛して愛して愛し抜けるか。私の大テーマであります。本当に身勝手な男ばかりの中で、私はメアリを愛したいと思っております。どうぞ皆様劇場に足を運んでください。お願いいたします。
ーー長谷川さんにお伺いします。2012年以来の舞台出演となると思うのですが、このタイミングで舞台に出演されようと思われた理由と、改めて舞台への思いをお願いします。
長谷川:よくよく過去を振り返ってみると2012年以来なんですけども、私としましては、ずっと舞台は切望していて。なかなかご縁に至らなかったというだけで、いつでもすごいウェルカムな状態だったんです。今回いただいたお話が、いきなりこんな大役だったので、一瞬、どうしようかなと思ったんですけど、もともと自分の性分的に、山を越えないという選択肢はないし、やはりお話をくださった方の気持ちに応えたい、おごっているような感じですけれど、やれると思ってキャスティングしてくださっているのなら、絶対できるという、自分の中の根拠のない自信もあって、今回は挑戦をさせていただくことになりました。
舞台の魅力については、それは私よりも皆さんに聞いていただいた方が確実な答えが出てくると思うんですけど、私の浅い経験感で言わせてもらうと、本当に観客の方が目の前にいて、そこで観客の方の反応、空気を吸い取りながらお芝居をするのは、テレビや映像などいろんな種類のお芝居があると思うんですけど、何よりも(舞台は)鍛錬だな、訓練だなと思っています。
森:セリフは、さすがシラーが書いただけあって、多分シェークスピア劇とかあの辺を想像してくださるとよく分かると思います。とても比喩とか語彙が豊かで、でもシェークスピアとちょっと違うところはすごく議論劇だなと感じていますね。ものすごい理屈なんですよ。その知性というのがちょっと興奮に繋がるんじゃないかなと思いながら、今稽古していますね。
なので、すごく難しいんです。ハートも大事なんですけど、同時にものすごいクールな脳みそが要求される芝居だなと思っていまして、ここに登壇されている俳優の皆様にも、稽古の中でも言っていますし、これからも言っていかなくてはいけないなと思います。
どうしても日本人は情の芝居になりがちなのですが、それだけだとこの面白さは通じない。要はみんなが、どれだけ自分が正当か、私の意見がどれだけ正当かというのをぶつけ合って、多分見ているお客さんは、どっちも正しいし、どっちも間違っているんじゃないかと思うと思うんですけど、実際にこれが今世界中で起こっていることで、それゆえにお互い妥協点を見いだせないというか。そういうところを楽しんでいただけたらなと思います。
(舞台に関しては)色々考えたんですよね。演出家としては驚かしじゃないですけど、見たことのない美術をバーンと持ってくるとか、色々考えたんですけど、読み合わせをやればやるほど、何もいらないような気がしてきておりまして。実は長谷川さんからはじめに「まさか何もないって言うことはないですよね?」って釘を刺されていました。私は『HAMLET−ハムレット−』(2019)という芝居をやって、あまり道具がなかったんですよ。それを見に来てくださった長谷川さんの第一声が「私の時には大道具がありますよね?」ととても不安がっていて、僕も安心させるために「もちろんですよ」と言ったんですけど、多分あれ以上に道具がなくなっているような……(笑)。
前作は盆が回ったり、今思えばあったなと言う。まぁ、何日か後に全貌を知ると思うんですけど、本当に舞台上に助けるものは何もなく、役者の肉体とこの頭脳だけになるのではないかなと。逆にそこまでストイックにものを作っていきたいと思っているところです。
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