あらゆる多様性があふれ、支え合う社
会を目指す「True Colors Festival」
次なるは「True Colors JAZZ – 異才
meets セカイ」~ディレクター松永
貴志「みんなで音楽という海に飛び込
んで泳ぐ」

日本財団では、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会を控え、「障害・性・世代・言語・国籍などのあらゆる多様性があふれ、皆が支え合う社会を目指し、ともに力を合わせてつくる」をコンセプトに、「True Colors Festival ―超ダイバーシティ芸術祭―」を開催しています。多国籍の障害者によるブレイクダンスチームが日本のトップダンサーとダンスバトルを展開した「True Colors DANCE―No Limits―」、サンディアゴ・バスケス、水曜日のカンパネラのコムアイ、大友良英らアーティストらが出演した「True Colors BEATS“Uncountable Beats Festival”」がフェスを盛り上げた。そして新年第1弾には「True Colors JAZZ –異才meetsセカイDirected by Takashi Matsunaga」が大阪・東京・熊本の3都市で開かれる。イベントディレクターを務めるジャズピアニスト、松永貴志に話を聞いた。
松永貴志は17歳でメジャー・デビューし、 ハービー・ハンコックとの共演をきっかけに世界のミュージシャンから喝采を集める存在になった。欧米、アジア各国でCD「STORM ZONE」発表、NYブルーノート・レーベルで最年少のリーダー録音記録を樹立した。またポーランド「Manggha館」設立20周年式典に招待され、大統領の前で演奏するなど輝かしい経歴を誇る。2017年には世界10カ国ツアーを開催した。
――松永さん、「True Colors Festival -超ダイバーシティ芸術祭-」での「True Colors JAZZ」に声がかかったときの思いから教えてください。
松永 ぜひやってみたいと思いました。僕自身、20代から社会に対するいろいろなかかわり方をしているので、その中でお声がけいただいたのはうれしかったですね。これまで、「大阪府障がい者芸術・文化コンテスト」の審査員をやらせていただいたり、スペシャルオリンピックス日本(知的障害のある人たちにスポーツトレーニングとその成果を発表する場としての競技会)のテーマ曲を書かせていただいたり、障害のある方とのかかわりが多かったんです。昨年は日本財団DIVERSITY IN THE ARTSの「サマースクール」、これはさまざまな障害のある方たちと5日間の合宿をしてみんなで曲を仕上げていくというものですが、そこでも講師をやらせていただいています。そういう流れで、国籍や世代、性などさらに多様性を広げた「True Colors Festival」のお話をいただいたことはうれしかったですね。今まで僕が出会い、培ってきた経験などを交えながら携わらせていただきたいと思います。
――そうした活動を始めるきっかけはあったのですか?
松永 いえ、僕自身は通常のコンサート活動と変わらないというか、特別なものという感じでやってきてはいないんです。すーっと活動の中に入ってきました。例えば文楽を見たことがない人は自分から見に行くことは少ないと思うんです。誰かが誘ってくれたから、出かけてみようかとなる。だから東京オリンピック・パラリンピックを機会にこうした活動と出会う方もたくさんいらっしゃるでしょう。いろんな人に知っていただくチャンスになると思っています。
――イベントディレクターということですが、どんなかかわり方をされたのですか?
松永 お話をいただいて、準備を始めてから1年ほど経ちます。どんなことをするか、場所はどうするか、当初からかかわらせていただいています。
 キャスティングについては、決してメインのフィールドがジャズの演奏家ばかりではないんです。そして全員が初共演。海外から参加してくださるアーティストは一流の人たちばかり。それもいろんな国から集まるというのも珍しいんです。だからライブだけじゃなく、一緒に移動や日常を共有することで情報交換もできますし、母国に帰ったときにインフルエンサーとなって、日本でこういうことがあったんだよと、いろいろ広めていただけたらうれしいと思います。
 また、日本財団と東京大学が進める「異才発掘プロジェクト」ホーム・スカラーに選ばれたピアニストの紀平凱成さん、車椅子のシンガーである小澤綾子さん、10歳で世界のミュージシャンとの共演を重ねるドラマーのよよかさんという若いゲストアーティストには、場を体験していただきたい。音楽ではどういう人と共演したかがその後の活動に大きな影響をもたらしてくれるんです。ただひたすら練習するよりも、一度海外の方と演奏することでパッと開けることがあるので、彼らにはそういう挑戦をしてほしいですね。
――お名前が出た紀平さん、小澤さん、よよかさんに期待していることを教えてください。
松永 よよかちゃんは10歳ですごく技術もしっかりしていて、すでに国内外のさまざまなアーティストとも共演しているんですけど、ジャズは形にとらわれない柔軟性のある音楽。今回の企画に飛び込んでしまえばジャズもロックも関係ないということがわかるし、新たな発見をしてほしいです。小澤さんは昨年の「サマースクール」にも参加してくださった方ですが、彼女は徐々に筋肉が衰えていく筋ジストロフィーという病気なんです。彼女自身も自分が持っている時間をわかっている。その歌声はとても素晴らしくて、伝える力がすごい。その歌を皆さんにも味わっていただきたいですね。紀平さんはもうめちゃくちゃピアノが好きで、気がつけばすぐにピアノのところに行って弾いている。18歳ですけど柔軟性がすごくて、技術がしっかりしています。たとえば僕とピアノの連弾をする、しかも即興でするみたいなことをやろうと思っています。
紀平凱成(かいる)
小澤綾子
よよか
――アーティストがさまざまな国からやってくる、世代もキャリアも幅広い、その初共演となればかなりチャレンジングな企画ではありませんか?
松永 そうですね(笑)。これがジャズの不思議なところであり、魅力なんですけど、曲があってもなくても、人が集まってしまえば、始まってしまえば一気にハジけることができる。チャレンジングと言えばチャレンジングですけど、ミュージシャンたちも非常に楽しみにしてくれているんです。その楽しみにしてくれている感覚を、非常にフレッシュな形でお客さんに届けることができるんじゃないかと思います。もちろん譜面のまま演奏するのも素敵ですけど、今回はみんなで海に飛び込んで泳いでいくイメージ。それを楽しんでいただけると思います。
 ジャズは自由。でも、いろいろな国から来るので、それぞれの自由の感覚が少しずつ違うと思うんです。その少しずつ違う自由が組み合わさったときに、どんなことになるのか、それは僕も楽しみですね。一人がバーっと走っていってもいい。そこにみんなが、さあどうしようみたいな感じになる。音楽は最終的に崩壊しないところが強み。最後に曲としてどうまとめ、どう仕上げていくか、そこは僕がディレクターとしてしっかりとした形に持っていかれたらいいなと思いますね。ドキドキワクワクします。それはミュージシャン同士も、お客様も同じだと思います。きっと見たことのない景色が見られると思いますよ。
――最後に改めてコンサートへの思いをお願いします。
松永 1年前から準備をしてきて、いよいよ来月に本番を迎えることになりました。僕自身イベントディレクターという形は今までなかったことなので、かなり力を入れてやってきました。せっかく日本に来てくださるので、海外のミュージシャンの方にも楽しんでほしいですし、お客様にも楽しんでほしい。「True color JAZZ」にかかわったすべての方に楽しんでいただけたらうれしいですね。イベントが行われれば、そこに人が集まります。そのイベントを通して、皆さんに何か少しでも気づきがあればそれもとてもうれしいです。
取材・文:いまいこういち

SPICE

SPICE(スパイス)は、音楽、クラシック、舞台、アニメ・ゲーム、イベント・レジャー、映画、アートのニュースやレポート、インタビューやコラム、動画などHOTなコンテンツをお届けするエンターテイメント特化型情報メディアです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着