スライドギターの概念を変えた
デビッド・リンドレーの
『ウィン・ジス・レコード』は
時代に左右されない作品だ

リンドレーの不思議な音楽性

デビッド・リンドレーはアメリカ西海岸に生まれ、幼少期からギターだけでなく、バンジョーやフィドルも習得、ロサンジェルス北部の有名な「トパンガ渓谷バンジョー・フィドルコンテスト」でブルーグラスのプレーヤーとして5回の優勝を誇る。彼のバンジョーはCD『Feuding Banjos』(Legacy International, 1995)に3曲収録されているので、興味のある人は聴いてみてほしい。

ここまでは普通の経歴である。ブルーグラス出身のロックミュージシャンなどブルース出身と比べてもそんなに変わらないぐらい多い。66年、彼はカレイドスコープを結成する。このグループはサイケデリックロックのテイストを感じさせながら、ワールドミュージックを探求する不思議なグループであった。リンドレーに似た資質を持つクリス・ダーロウ(のちにニッティ・グリッティ・ダート・バンドに加入、脱退後はマルチ・インストゥルメンタル奏者としてソロで活動)や、トルコ育ちでフラメンコギターの心得があり、ウードでベリーダンスの伴奏をしていたという訳の分からない経歴を持つソロモン・フェルトハウスなど曲者揃い。

カレイドスコープはアシッドフォーク&エスニックロックというスタイルで4枚のアルバムと数枚のシングルをメジャーレーベルからリリースしている。カレイドスコープの音楽性は高く、他のロックグループより数段進みすぎていたがゆえにリスナーは付いていけず、まったく売れなかった。リンドレーが主導権を持った3枚目の『Incredible Kaleidscope』(‘69)では、彼の指弾きのハードなロックギター、サイケデリックなバンジョーやフィドルが聴ける秀作だと思う。

余談だが、ジミー・ペイジがレッド・ツェッペリン時代にギターをバイオリンの弓で弾くパフォーマンスはよく知られているが、これはリンドレーがカレイドスコープ時代にライヴで披露していたのをペイジが観て真似たものである。

ジャクソン・ブラウンとの出会い

カレイドスコープ解散後、リンドレーはイギリスに渡りテリー・リードのバックギタリストとして『River』(‘72)に参加、ちょうどジャクソン・ブラウンもレコーディングのためロンドンに滞在しており、そこでブラウンはリンドレーに一緒にやろうと誘い、彼はブラウンのバックを務めることになった。そもそもふたりは69年に、ロスのクラブ「トゥルバドール」にて、ジャクソン・ブラウンが新人のショーケースで出演していた頃に出会っている。すでにカレイドスコープで活動していたリンドレーがたまたまブラウンのバックを務め、お互いに好印象を持っていたから話は一気に進んだ。

リンドレーが参加したのはブラウンの2ndアルバム『フォー・エブリマン』(‘73)からである。リンドレーの豪快なラップ・スティールと味わい深いフィドルは、このアルバムに深みとダイナミックさを与えることになるのだが、この作品は録音状態が悪く、音がこもっている上にスニーキー・ピートのペダル・スティールが参加しているために、リンドレーの凄い演奏が聴き取りづらかった。
そして、冒頭で紹介した3rd『レイト・フォー・ザ・スカイ』(‘74)の指弾きの名演で、一気にリンドレーは注目されることになる。続く『プリテンダー』(’76)、『ランニング・オン・エンプティ』(‘77)でもリンドレーは名演を残し、アメリカで最高のギタープレーヤーのひとりと言われるようになる。

この時期はブラウンのバックだけでなく、クロスビー&ナッシュの『ウインド・オン・ザ・ウォーター』(‘75)、『ホイッスリング・ダウン・ザ・ワイアー』(’76)(このアルバムでは、1曲目の「スポットライト」のラップ・スティールが最高!)、トム・ヤンスの『子供の目』(‘75)(ここでは、珍しく指弾きのギターソロが聴ける)などのほか、油の乗ったリンドレーのプレイが聴けるアルバムは数多い。

OKMusic編集部

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