本当の怪物は誰? ミュージカル『フ
ランケンシュタイン』ゲネプロレポー
ト 柿澤勇人×小西遼生ver.

二人の男を中心に展開する悲劇的なストーリーは、時に熱く、時に切なく、観る者の心を震わせる。2020年1月8日(水)、ミュージカル『フランケンシュタイン』が東京・日生劇場で待望の再演を迎えた。同日昼に本公演2度目のゲネプロが行われ、ビクター・フランケンシュタイン/ジャック役を柿澤勇人が、アンリ・デュプレ/怪物役を小西遼生がそれぞれ演じた。本記事ではその模様をレポートする。

(前日に行われたWキャストの中川晃教加藤和樹ver.のゲネプロレポートは別記事参照)

※ストーリーに関するネタバレあり 当日の楽しみにとっておきたいという方はご注意ください。
前回のゲネプロレポートでは1幕を中心にレポートしたが、今回は2幕にスポットを当てていきたい。
【あらすじ】
19世紀ヨーロッパ。科学者ビクター・フランケンシュタインが戦場でアンリ・デュプレの命を救ったことで、二人は固い友情で結ばれた。“生命創造”に挑むビクターに感銘を受けたアンリは研究を手伝うが、殺人事件に巻き込まれたビクターを救うため、無実の罪で命を落としてしまう。ビクターはアンリを生き返らせようと、アンリの亡き骸に自らの研究の成果を注ぎ込む。しかし誕生したのは、アンリの記憶を失った“怪物”だった。そして“怪物”は自らのおぞましい姿を恨み、ビクターに復讐を誓うのだった…。
写真提供/東宝演劇部
2幕は怪物がビクターの前から逃げ出して3年が経過。自分が生み出してしまった“失敗作”に怯え続けるビクターの前に、ついに怪物が復讐すべく姿を現す。憎しみに満ちた目で創造主ビクターを見下ろす怪物は、これまで過ごした地獄のような日々を語り始め、回想シーンへと場面転換する。
写真提供/東宝演劇部
写真提供/東宝演劇部
3年前、死に物狂いで逃げ延びた怪物はやがて闇の闘技場の者に捕らわれ、賞金稼ぎの道具として戦いに繰り出されるようになる。血も涙もない欲にまみれた主人たちが仕切る闘技場で、密かに自由を夢見る女がいた。闘技場の下女のカトリーヌだ。誰よりも人生に絶望し、同時に誰よりも生に執着しているカトリーヌを、音月桂が振り切った演技で表現していた。

人がいない自由な世界へ逃げ出したいと願うカトリーヌと怪物は、すぐさま心を通わせる。怪物の無垢な笑顔が垣間見える数少ないシーンだ。自分のことを恐れず対等に接してくれるカトリーヌのおかげもあって、怪物は徐々に言葉を取り戻していく。前回公演で話題となった「クマ、オイシイ」というセリフもお聴き逃しなく。
既に登場している怪物とカトリーヌのように、闘技場のシーンではプリンシパルキャスト全員が1幕とは別の役として登場する。どの役も全くの別人で見どころたっぷりなのだが、特筆すべきは露崎春女演じるエヴァと柿澤勇人演じるジャックだろう。
写真提供/東宝演劇部
写真提供/東宝演劇部
露崎は本作が初のミュージカル出演とは思えない程の貫禄で、闘技場の女主人エヴァを好演。1幕の悲壮感漂うエレンとは対照的に、ドスの効いた声で闘技場を仕切り、力強い歌唱で怪しくも華やかなショーを見せてくれた。
同じく闘技場の主人ジャックは、不気味な笑みを浮かべながらさも楽しそうに怪物をいたぶる姿が印象的。ジャックが艶っぽくささやくように歌う『お前は怪物だ』は、その甘いメロディに似つかわしくない狂気的なナンバーだ。柿澤のジャックはとにかくハイテンションで、サービス精神旺盛なエンターテイナー。いくつもの声色・キャラクターを使い分け、何度も客席を沸かせていた。相島一之演じる悪どい金貸しフェルナンドとの掛け合いも、初演に引き続きアドリブ満載だ。
写真提供/東宝演劇部
闘技場でまるでゴミのように扱われる怪物の姿に、友達想いで誠実なアンリの面影はない。小西演じる怪物は、常に悲哀に満ちた目をしていた。自分はなぜ生まれたのか、なぜ生きているのか・・・・・・ツギハギだらけの自分を生んだ創造主への憎しみが溢れ出すビッグナンバー『俺は怪物』は、まさに絶唱。囲み取材で小西が語っていた「魂が抜けるくらい全身全霊でやる作品」だという話にも納得できる。

写真提供/東宝演劇部
写真提供/東宝演劇部
本作はビクターとアンリ/怪物の物語ではあるが、要所要所で物語を大きく動かしているのはアンサンブルキャストが演じる群衆だ。フランケンシュタイン一族を忌み嫌う村の人々、噂を盲信して犯罪者を罵る人々、怪物をゴミのように扱う闘技場の人々……。本当に恐ろしい“怪物”は群衆なのかもしれない。そう思わされる再演だった。

本公演は1月30日(木)まで日生劇場で上演が続く。その後は場所を移して愛知、大阪と2月末まで上演予定だ。初演を観たという方も、初演を見逃してしまったという方も、ぜひ今の『フランケンシュタイン』を観るために劇場へと足を運んでほしい。

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