充電期間を終えた復帰作は“WAHAHA流
”歌舞伎 喰始・柴田理恵・佐藤正宏
・大久保ノブオ クロストーク

2017年に閉幕したWAHAHA本舗全体公演が、2020年に帰ってくる! 『ラスト』(13年)、『ラスト2』、『ラスト3』のラストシリーズをもって、充電期間に入っていたWAHAHA本舗。『王と花魁』と題した次回作は、和の世界を取り入れたエンターテインメント作品になるというが……。劇団主宰の喰始、看板女優の柴田理恵、劇団創設から携わる佐藤正宏、WAHAHA本舗二代目座長の大久保ノブオの、爆笑必須クロストークをお届けする。
ーー2017年に『ラスト3』で幕を閉じたWAHAHA本舗全体公演ですが、再び上演することになった経緯を教えていただけますか。
喰:久本(雅美)と柴田がね、うるさかったの。絶対に終わらせない!って。
一同:(笑)
佐藤:それはいつの話ですか?
喰:『ラスト3』をやっている時だね。「本気で終わらせるわけじゃないでしょうね!」って。
柴田:そうでした。
大久保:移動中のバスの中でずっと言ってましたよね。
喰:WAHAHA本舗を立ち上げた時に、一人でもやりたい人がいたら続けるって決めていたので。「まだやりたい」って言ってもらえるのは、こちらとしてはうれしい悲鳴でした。
柴田:私と久本だけじゃなくて、みんながそう思っていたから、代表して言っただけ。みんな同じ気持ちだったでしょ?
佐藤:うん。
大久保:僕もそう思ってましたよ。
喰:そういう声があったものですから、新体制でまた始めるよ、もう一回やりたい人この指止〜まれ!って言ったら、ほとんどの人が止まってくれたんです。
左から 喰始、柴田理恵、佐藤正宏、大久保ノブオ
ーー前回、一度幕を下ろそうと決意した理由は?
喰:スケジュールが決まっている生き方に飽きてきてしまったんですよ。演劇公演の場合はどの作品でもそうだと思うんですが、具体的に何をするか決まる前から、まず劇場を押さえないといけない。とりあえず劇場を押さえて、来年もありますって告知するわけだけど、ちょっと消化試合みたいな気持ちになってきてしまったんですね。改めて勢いをつけるために、一度気持ちをリセットしなきゃいけないと思ったんです。
柴田:そうね。
喰:本当は『ラスト』(13年)の時に、そうするつもりだったんだけど、お客さんが許してくれなかった。
佐藤:『ラスト』って1、2、3とあるけど、1の時は1ってついてなかったですよね。
大久保:1回で終わらせるつもりだったから、ついてませんでしたね。『ラスト2』(16年)、『ラスト3』(17年)は、2、3と銘打っていましたけど。
喰:今回の全体公演も、実は三部作を予定してるんですよ。1回目は歌舞伎、その次はミュージカル、3本目は今のところはっきりとは決めてないんだけどお祭りというか、フェスティバルのような賑やかな感じを考えています。
柴田:お〜!そうなの?!
佐藤:それは初耳!
大久保:僕らも初めて聞きました。
喰:僕は最年長で70歳ですから、いつまでできるか分かりませんけど。今回のシリーズの3本目まではなんとか健康でいよう、そこまでは頑張るぞ!っていう気持ちなんです。
ーー歌舞伎、ミュージカル、フェスティバルだなんて盛り沢山で楽しみです。
大久保:と言っても全部“WAHAHA流“ですからね。今回もWAHAHA流歌舞伎。
柴田:そうですよ、本物じゃないから。
喰:昔、佐藤君と梅垣(義明)が歌舞伎漫才っていうのをやったんですよ。
佐藤:あ〜ありましたね。
柴田:35年くらい前じゃない?
佐藤:もうそんなに前か! 歌舞伎の『助六』を元にして、助六と揚巻の漫才をする内容だった。
喰:バンバンっと見得を切ってね。
佐藤:歌舞伎の口調を取り入れたんですよね。
喰:今回も大体そんな感じになると思います。
左から 佐藤正宏、柴田理恵、大久保ノブオ
ーーズバリ、“WAHAHA流“とはどんなものでしょうか?
喰:これはやっちゃいけないっていうものに縛られないものです。例えば、WAHAHA本舗では『ライオン・キング』を歌舞伎にしたこともあるんですよ。アフリカ歌舞伎って言うんだけど。
柴田:あれは25年前くらいかしら。
佐藤:アフリカのある部族が出てきて。
柴田:『ライオン・キング』みたいな、そんなような話なのよね。
喰:いろいろな要素を入れて、歌舞伎風に表現するって言うのは今までもやってきているんです。こんなものが歌舞伎になるの?!って言うのが案外よかったりするんですよ。これは歌舞伎ではないけど同じ和の世界だと、獅子舞がマイケル・ジャクソンの曲で踊るっていうのもやったことがありますね。
佐藤:さあ、タイトルはなんでしょうか!
ーー獅子舞……、マイケル……、『獅子舞ケル・ジャクソン』ですか?
佐藤:正解です!
柴田:ちょっとばかばかしいタイトルだけど、意外とかっこいいんですよ。
喰:獅子舞と洋舞を組み合わせたんです。評判も良かったですね。
大久保:要は全部パロディーなんですよね。歌舞伎と何かをくっつける、みたいな。
柴田:既存のものをアレンジして、さらに面白いものにしていくのがWAHAHA流なんです。
喰:非常にバカバカしいこともやれば、コンテンポラリーなこともする。そんなことをずっとやってきたんです。
ーー1984年に劇団を立ち上げてから、長きにわたり愛され続けているのがすごいですね。
喰:劇団を始めた最初の頃は一応ストーリーがあったんですけどね、2年くらいした頃に物語を手放しちゃったんですよ。
柴田:物語にするのをやめて、ネタだけにしたんです。
喰:そうしたら物凄く評判が良くて。小さい劇場だったけど満員になったんです。その評判を聞いてある日タモリさんが突然観にきてくれたんですけど、受付のスタッフが「満員です!」って言って追い返しちゃった。
柴田:そんなこともありました。
喰:WAHAHA伝説の一つです。
柴田:そういえば、井上陽水さんが稽古場に遊びにきてくれたこともありましたね。
喰:場内アナウンスをやってくれたんだよね。
佐藤:WAHAHA本舗では、場内アナウンスを毎回色々な方がやってくださるんですよ。
喰:他には、樹木希林さんとか……。
柴田:岸田今日子さん、名古屋章さん……。
佐藤:徳光和夫さん、西田敏行さん、藤田弓子さん、などなど。
喰:そうそうたるメンバーです。今回、ポスターにも大物が出てくれるんですよ。前に和田アキ子さんが「私は出ません」ってコメントと共に、ポスターにだけ出てくれたことがあって。今回もポスターだけの大物ゲストがいますので、楽しみにしていてください。
左から 佐藤正宏、柴田理恵、大久保ノブオ
ーー長く続けていらした皆さんだからこそ知っている、喰始さん作品の魅力を教えていただけますか?
柴田:誰にでも分け隔てなく、どこまでもばかばかしいところ。それでいておしゃれなところですね。
佐藤:ふふふふ、そうだね。
柴田:WAHAHA本舗は過激とか下ネタとか言われますけど、私たちは生半可な下ネタはやらないんです。やるのは品のいい下ネタ。
佐藤:一度逮捕寸前まで行ったこともありましたから。
喰:劇場に警察が来ちゃったんだよね。こんなことやっていいのかって。
佐藤:観に来たお客さんが、警察に通報しちゃって。
柴田:でも、結局警察の人たちはちゃんと公演を観て、楽しんで帰ったのよ。
喰:中には、私にはこんな下ネタは合わないわっていう人もいるじゃないですか。WAHAHA本舗は面白いっていう評判を聞いて来てくださるんだろうけど、実際観たら違ったっていう人もいるんですよね。
柴田:いまだに、途中で帰ってしまう方がいらっしゃるんです。でも、それが私たちの誇りなのかもしれないよね。中には好きになってくれない人もいるけど、それでもやりたいことをずっと貫いているわけだから。
佐藤:そうだね。
大久保:僕はWAHAHA本舗の公演を観てこの劇団に入ろうと決めた人間なんですが、観客として観た時は驚きましたよ。自分の中の芝居、お笑い、ダンスなどの既成概念を全部壊されて、どんどん壊していく演者のエネルギーに魅力を感じました。WAHAHA本舗独特のこの世界観は他では観られないと思います。
柴田:そうなんですよね、他にないんです。
喰:そういえば見た事がないことと言えば、今度やりたい事があってね……。
佐藤・柴田:出ました!また初耳シリーズ!
喰:ホーミーっていうのがあるんだけど。
大久保:高い声と低い声が一人の人から一緒に出るやつですよね。
喰:そう。でも、ホーミーを二人羽織でやろうかと思って。
一同:(笑)
左から 佐藤正宏、柴田理恵、大久保ノブオ
大久保:ホーミーの掟破りじゃないですか。
喰:二人いたら面白いかなと思って。こんなようなアイデアを、ふとした瞬間に思いつく事があるわけなんですよ。
佐藤:それは今思いついたんですか?
喰:モンゴルに行った時だね。ホーミーを見て、これは一人じゃ無理だけど、二人ならできるなって。
大久保:モンゴルから持ち帰ってきたとは!
柴田:すごいね〜。こういうところが喰さんの良さなんですよね。発想がおおらか。
佐藤:WAHAHA本舗の面白いところは、喰さんの発想と考え方なんですよね。変なことを言って、変な格好をするから面白いんじゃないんですよ。
喰:刺激の元になるのは映画とか、外国の舞台とかなんです。僕らはただ変なことをやりたいだけじゃない。大笑いできるのに、どこか泣けるものってあるじゃない? そういうのがやりたいんです。
佐藤:今回はWAHAHA流歌舞伎だけど、本物の歌舞伎役者が観に来たら喜んでくれそうだよね。
柴田:そうね。くだらないな〜って笑いながらね。
喰:この前歌舞伎座に三谷幸喜さんの三谷歌舞伎を観に行ったら、こんなことやっていいんだってことばっかりやってたの。すでに本物の人たちがあれこれやってたから、僕らはもっとそれ以上に壊さなきゃいけないんだと思って!
ーー今回の『王と花魁』もすごいモノが観れそうです。現段階の構想を少し教えてください。
喰:大久保とタマ(タマ伸也)がヘヴィメタルを歌舞伎にしたら面白いんじゃないかって言うから、今回の公演用にKISSの格好をして歌舞伎風の写真を撮ったんです。それが面白くて。でも二人だと人数が少ないから、大勢の花魁がみんなヘヴィメタル風で、イェーイ!ってやったらもっと面白いんじゃないかと思って。
柴田:面白そう!
喰:WAHAHA本舗の役者で、元々はデザイナーで漫画家のなんきんってのがいるんだけど、彼はすごい痩せてるんです。最近の当たり役はキリストでね。
佐藤:あとガンジーとかね。
喰:痩せすぎて体力がないから、あんまりたくさんは出られない。何かないかなって考えた時にスーパー歌舞伎を思い出して。こっちはスーパースター歌舞伎です、ということで、「ジーザス・クライスト・スーパースター」の曲を流しながら、キリストの格好をしたなんきんが通り過ぎたら面白いんじゃないかと思って。
柴田:いいね〜!
喰:そんなことをたくさん考えているんです。
左から 喰始、柴田理恵、佐藤正宏、大久保ノブオ
ーー一見関係のないものをコラボレーションさせる発想が次々と湧いてくるんですね。
喰:ただし、それが通用するかは、蓋を開けてみないと分からない。いざ初日にやると、客席がシーンとしちゃうこともあるしね。初日まで何が起こるか分からないんです。
佐藤:初日に上演時間が4時間超えちゃって、翌日から1時間カットになったこともあったよね。
大久保:だから、通なお客さんは初日を観て、あと何度か観に来るんですよ。どう変化したか確認しにいらっしゃる。
喰:お客さんの反応を見てどんどん変えていくから、カットする場合もあるし、逆に長くすることもあるしね。芝居は初日、中日、千秋楽を観て分かるってよく言うけど、WAHAHA本舗は毎日観ないと分からないですよ。
佐藤:あと地方公演もですね。
喰:地方公演だとご当地ネタサービスもありますからね。
柴田:私たちの劇団は、お客様へのサービスが多いんです。
喰:梅垣が「WAHAHA本舗はサービス業だ」ってよく言ってるけど、本当にそうだよね。
ーー最後に、SPICE読者にメッセージをお願いします。
喰:僕はまだまだ観られると思って、美空ひばりさんのステージに行かなかったことを後悔しているんです。まだ大丈夫だろうって思っていたら、倒れられて亡くなってしまった。僕もいい歳だし、WAHAHA本舗もいずれ観にいけばいいやって思っていたら、どうなるか分かりませんよ!
柴田:本当に何事もそうです。
喰:興味がある人はまず観にきてください。来て気に食わなかったら、次は来なくていいから。もし気に入ってくれて、まだチケットがあったら千秋楽も観に行こうかなって思ってもらえたらうれしいです。WAHAHA本舗の舞台は他では観られないものだからね。
柴田:ミュージカル、ダンス、歌舞伎、色々な分野を取り入れているけど、WAHAHA本舗はWAHAHA本舗というジャンルだと、ご覧になった方には思ってもらえるかと。ただただ楽しいものですから、遊びにきて欲しいです。
大久保:僕らはお客さんに楽しんでもらうことを第一に考えてやっているので、花火大会を見るような気持ちで、構えずに来ていただけたらいいですよね。
柴田:そうね。
佐藤:子供の頃は毎日たくさん笑っていたはずなのに、大人になって笑うことが減ったっていう人が多いんじゃないかなと思うんだよね。だけど、WAHAHA本舗を観にきたら、すっごくたくさん笑えると思う。自分ってこんなに笑えるんだってことに気づくんじゃないかな。新たな自分の一面を見つけにWAHAHA本舗の公演に来て欲しいです。10年分くらいたくさん笑って、この値段なら、かなりお安いと僕は思いますよ!
取材・文=永瀬夏海 撮影=福岡諒祠

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