花村想太はなぜバンドプロジェクト・
Natural Lagを始動したのか? Da-i
CEでは見せない花村想太を探る

2020年1月から初の代々木第一体育館を含むアリーナ公演を行なう5人組ダンス&ボーカルグループ、Da-iCE(読み:ダイス)。このグループで、4オクターブのハイトーンボイスをパワフルに操るボーカルで人々を魅了してきた花村想太が、バンドプロジェクトを始動した。昨年はグループとして5周年を迎え、メンバーそれぞれにグループ活動と並行してソロプロジェクトを活発に行ってきた。その中で花村はNatural Lag(読み:ナチュラルラグ)というバンドを組み、1月22日に1stミニアルバム『ナチュラルストーリー』を発売した。バンド形態、さらには全曲自らソングライティングを行なって制作した今作から見えてきた、Da-iCEでは見せない花村想太を探ってみた。
――ソロを始動してみて、いまの感想は?
やるまでは不安しかなかったんです。けど、実際に始めてみると楽しいもので。自分のやりたかったこととか、見せたかったものをこれからもっともっと届けていく機会があるのかなと思うと、すごくワクワクしますね。
――なんでバンド形態にしたんですか?
そもそも一人で歌うのがそんなに好きじゃないんですよ。
――Da-iCEのライブのなかのソロコーナーでは、一人で歌う場面もありましたけど。
元々あそこは一人で歌う予定ではなかったんですよ。でもスタッフに「みんなはお前の歌を聴きたいと思うよ」といわれて。なら舞台のなかで作った曲(「最期の言葉」は花村想太主演舞台『PHANTOM WORDS』で花村自身が作詞・作曲を手がけたテーマソング)なら自分一人でも舞台の世界観として歌えるなと思って、一人で歌うことを決意したんです。今回も一人でステージに立つのは嫌だなというのがまずあって。それならバンドで仲間を作って一緒に上がろうと思って、バンドを組ませてもらいました。
――つまり、一人でソロをやりたいという気持ちはそもそもなかったと。
そうです。(大野)雄大君は“バラードが歌いたい”という気持ちが強いと思うんですけど、僕は自分がやりたい音楽性はDa-iCEでやれてて、それを歌って踊ってるだけで楽しいという充実感があったので、そもそもそれ以上のことは求めてはいなかったんですよ。でも、みんながDa-iCE以外のところで表現しだしたなかで“僕もしないといけないタイミングなのかな”と思って。
――ということは、他のメンバーがソロをやらなければ……。
僕はやってないと思います。もしくはもっと後にやりだすか。
――メンバーがソロをアグレッシヴにやりだしたことについては、どう思ってたんですか?
いいなと思ってましたよ。それに刺激されて、Da-iCE以外に自分がやりたいことを探しだして。一人は嫌だから、じゃあ仲間がいるバンドかなというのを考えて、約2年ぐらいかけてこのプロジェクトを実現させた感じです。
――ソロシンガーという選択肢は?
なかったです。僕がやりたいのはダンス&ボーカルですから。でも、それをソロでやるとなると、そこには西島(Nissy/西島隆弘)さんも三浦大知さんも、ISSAさんもいらっしゃる訳ですから。まだそのみなさんと戦えるほどの勇気が僕にはないです。
――きっぱりおっしゃいましたね。
ええ。なので、一人ではなくバンドという形態で、Da-iCEとはまったく違うベクトルの音楽を表現するのならいまの自分でもできるのかな、ということから生まれたのがこのバンドです。
Natural Lag/花村想太
自分がやりたい音楽性はDa-iCEでやれてて、それを歌って踊ってるだけで楽しいという充実感があったので、それ以上のことは求めてなかったんです。
――バンドメンバーはどうやって集めたんですか?
Da-iCEがスタートしたときから信頼しているスタッフがいて。僕の声をすごくかってくれてたので、そのスタッフと一緒に選びました。
――当然バンドメンバーもDa-iCEのキャッチフレーズを引き継いで“顔面偏差値”高めというのは条件だったんでしょうか?(笑)
「(プレイの)腕が確かなイケメンを」というのはスタッフはいってました(笑)。
――メンバーが集まり、楽曲はどんなものにしようと考えましたか?
雄大君に歌ってもらったり、メンバーにパフォーマンスしてもらうのは違うなというような歌詞。パーソナルで具体性があるものを歌おうと思ってました。音楽ジャンルはJ-POPだけどロックに寄ってる曲もあって。ポップすぎる音楽がいいなと思ってました。Da-iCEはダンス&ボーカルなので、最近は強めだったり大人っぽい曲が多いんですが、そこよりも年齢層を下げた音楽にしようかなと思ってました。
――Natural Lagというバンド名は想太さんがつけたんですか?
はい。時差ボケを意味するJet Lagから作った造語で。人間関係においては、そのLagというのがあるからこそ、人を好きになったり嫌いになったりするものなのかなということで、すべてのものに生じているLag。それを曲にできたらという意味でこのバンド名にしました。
――ロゴの“L”に付いてる細い棒にはどんな意味があるんですか?
秒針です。Lを時計に見たててLagを表現してるんだと思います。おそらく。
――ロゴが淡いブルーなのは?
コンセプトカラーです。僕のなかのNatural Lagのイメージが青春の青に深みが出てきて、グレーがかぶってきた頃なんですよ。明るくポジティブなだけではなく、そういうモヤモヤした時期が重なってくる時期を描けたら、という意味でこの色にしました。だから、衣装もくすみがかかった色の衣装を用意してもらったんです。

――楽曲はどうやって作ってるんですか?
キーボードの前で弾き語りをして。打ち込みと自分の声を重ねたものでデモを作って、アレンジャーさんにアレンジをお願いする感じです。歌詞はだいたい後からつけてます。「愛と恋」だけは同時にでてきましたけど。
――そうして出来上がった1stミニアルバム『ナチュラルストーリー』は、全、般的にポップで爽やかで、なによりも歌詞のリアリティーがすごかったです。
具体性がありますよね。
――一番最初にできた曲はどれだったんですか?
最初にできたのは「Trust Me」なんですけど、曲として一番最初に形になったのは「蜃気楼」ですね。「蜃気楼」はアルバム用に20曲ぐらい作ったなかで、スタッフと話し合ってこれをリード曲にしようと決めて。バンド名はすでに決めてたので、歌詞はLag、ズレを感じるものを書こうと思って。「蜃気楼」の1番は<遠くで見つめるその横顔>、<手の届く距離にいるのは誰だ>という歌詞で始まるんですが。男から見て、その手の届く距離にいる女性は特別な存在に見えてるんだけど、女の子からしたらただ友達としゃべってるだけっていう。ここは同じ現象のなかで生じているLagを表してて。<想いの差で現れる君は蜃気楼>というところは、相手を想う気持ちの度合いから生じるLagを表してて。“蜃気楼”という言葉も、この主人公のなかではロマンチックな言葉なんだけど、実際に辞書を引いて調べてみるとそこまでロマッチックな言葉じゃないというLagを意図的に表現していて。だから、Dメロの頭で<語彙力なんてないけど>と主人公はいってるんだけど。それを超えるぐらいの熱量で女性のことを好きなんですよね。この主人公は。
――“あぁ…”と歌ってる部分には主人公の好きの熱量が詰まってましたね。
そうですね。
――「Trust Me」は一番最初にできたということだから、Natural Lagの始まりの曲でもある?
ですね。いわれてみて、いま気づきました。……あっ! だから、歌詞は“ゼロからスタートするからいまから頑張っていきます”みたいなものにしようと思ってたんだ! けど、書いたら全然違う歌詞になってたんですよ。“死にたい…”とか思ってる子を助けたい歌詞になっちゃってて、それにビックリしましたね。自分が。
――ある意味、想太さんのなかでLagが生じた訳ですね。
そう。無意識のうちに。だから“なんで?”って思いました。
――“生きろ”って歌ですもんね。これ。
そうですね。逃げることさえ正しいといってるのは、自分が生きてるなかで逃げたくなることって絶対あって。僕自身も逃げてきたことはいっぱいあるんですよ。でも、そこで逃げたからこそ“いま”があると思ってて。いまを生きていれば過去に逃げたことも正解になる。失敗もそう。“あのとき失敗したからいまがある”って絶対いつか思えるときがくるので。それまでは死ぬな、と。それがいいたくて書いたんだと思います。
――個人的にはこれが一番Da-iCEではまったく見たことがない想太さんを見た気がして、感動しましたね。
僕もそう思います。一番これがやりたかったことで、こういうことが歌いたいんです。たぶん、これがDa-iCEではできないことだと思うんです。こういう歌詞こそ、それを書いた自分が一人で歌って意味が出てくるのかなと思うので。
――そうですね。Da-iCEのステージでキラキラ輝いている想太さんのイメージとのギャップ、Lagがあるからこそ、想太さんの人間性に触れられた気がとてもしました。
たしかにLagはありますね(笑顔)。この曲は一番早くレコーディングが終わりました。後半なんて一発録りですから。魂こもってるのか、聴き終わったあとにズシッとくるかなと思って曲順も最後にしたんですよ。
――歌詞も曲調もですけど、歌い方もDa-iCEとは全く違うんですよ。
爽やかさゼロですもんね(笑)。ロックな曲調なので、歌詞とか見ないで、ライブのように無意識で歌ったらこうなりました。

真面目なところ見せられる機会なのかな。僕の音楽で一人でも助かる人がいてくれたらなという思いはあります。
――「ファイティング・ソング」もロック調の曲で。こちらのポイントは2番の<純平は来年自分の店を出すらしい>、<永井はもう来年に2人目のパパだ>というフレーズ。これ、実際にいる方たちなんですか?
ええ。純平は土木系の仕事をやってて今度独立するんですよ。永井は1年ぐらい前に2人目のパパになってます。僕はビールは飲まないんですけど、このなかではビールを飲んでて。僕の人生のパラレルワールドを書いた歌詞ですね。
――いまの人生を生きる想太さんと、自分とは別世界で生きる純平や永井を出すことで、想太さんがDa-iCEをやらないで普通の人生を歩んでいたら? という姿がよりリアルに想像できる。これは本当にうまいなと思いました。
僕は歌詞を書くとき、主人公が行動していくのを箇条書きして書いていく感じなんですよ。だからどうしても歌詞が具体的になるんです。
――どれもちゃんとストーリー性があって、ドラマのようですもんね。
そうなんですよ。
――「ファイティング・ソング」はクラップ音とかも楽しかったですね。
メンバーと一緒に仲間内で打ち上げしてるような声を入れたり、ワイワイしながらクラップをしている音も入ってるので。ライブではお客さんがクラップをしてるなかで曲が始まったりしたら面白いかなと思ってます。

――「無愛想なベル」はどんなベル音をイメージして書いたものですか?
新幹線の新大阪から東京に行くまでの発車音です。僕は実際は車で上京したんですけど、もし新幹線で上京してたらあの音はすごく無愛想に聞こえただろうなという妄想なんですが。それも、上京した後、最終的に夢を叶えたらその無愛想なベルもすごく自分のことを祝福してくれる音に、感じ方が変わるんだろうなというLagと。<涙の意味が変わるまで>という歌詞は、いままでの人生のなかでどんなに悔し涙を流してきてても、成功すればあのとき泣くぐらい頑張ってよかったなと思える。そこで悔し涙の意味が変わるというLagを表現しました。
――このなかで気になったのが2番の<家族がくれたカレンダー~>からのパート。
これはね、本当の話なんですよ。
――ですよね? ここだけホログラムみたいに歌詞が浮き上がってリアルに耳に飛び込んできましたから。
だはははっ(笑)。これは実体験で。僕は1月に上京したんですけど、そのときに家族からカレンダーをもらったんですね。それをなにげなく開いたら、おとんとおかんと妹が月ごとに“もうすぐ誕生日やな”とか“暑いけど頑張ってるか?”とか“飯食ってるか?”とか書いてるんですよ。1年間それを見て当時の僕は頑張れたので、もう上京して10年ですけど、いまだにそのカレンダーは捨てられないです。ありがたくて。機会があったらこれをファンのみなさんに見せたいなと思う、思い出の代物ですね。
――いいお話(感動)。もちろんこの曲はご家族に一番最初に。
聴かせてないです(笑)。小っ恥ずかしくてなかなかねぇ。これは僕の実体験ですけど、これを聴いて家族との思い出のもの、自分だったらこれかなというのを感じながら聴いてもらえたら幸せです。
――「愛と恋」はバラードでしたけど。
これは夜の9時頃に遊びに行こうって友達と約束してたとき、家を出たら急に、ふと“いま曲書いた方がいい”ってなったんですよ。
――お告げ的なものを感じたということ?
ええ。そういうのってほぼないので、これはヤバい!と。絶対いま書いた方がいいと思って、速攻で家に戻って。友達に「いまから曲作る。できたら迎えに行くから家で待ってて」っていって、キーボードの前に座ったら、一瞬で詞曲同時に出てきて、1番が書けたんですよ。僕にとっては一瞬やったんですけど、時計を見たら夜中の2時で、遊びに行くのはやめました(笑)。でも、そうやってできた曲なので、この曲は絶対入れようと思いましたね。
――そうやって生まれた曲がなんとも悲しいラブソングで。
悲しいですよね。愛と恋って近いけど、<愛して欲しい>と<恋して欲しい>というフレーズでは重さが違うじゃないですか? 主人公が同じ“好き”でもそこにLagがあること。それに気づいてしまった瞬間を書いた、ザ・恋愛ソングです。これは初めて女性目線で書いた歌詞なので、歌うときにデモからキーをわざと2つ上げたんです。ギリギリ感、必死さがでたほうがせつないやろうなと思って。3つと悩んで2つにしました。
Natural Lag/花村想太
――Da-iCEのメンバーはNatural Lagを聴いてどんな反応だったんですか?
まだ誰にも聴かせてないです(※取材は2019年12月中旬に実施)。全曲本チャンのものが仕上がってからにしようと思って。
――聴かせてよ、とはいってこなかったんですか?
いってきましたね。雄大君とかは。「はい」って返事したけどまだ聴かせてないです(笑)。
――アルバム発売前に初のライブ(1月8日、Zepp DiverCityで開催する『西日本豪雨復興応援プロジェクト MUSIC BOX~音楽の力~』出演)、さらにはアルバム発売に合わせたインストアイベントも決まっていますが。
1月8日はバンドでやるので楽しみですね、自分自身。インストアはソロで回ることになるんですが。今後はバンドでやるライブをやっていけたらなと思ってます。
――Natural Lagではどんな想太さんを見てもらいたいですか?
真面目なところ見せられる機会なのかなと思いますね。わりと真面目なタイプなので、そういう飾らん言葉で真っ直ぐなところ。「Trust Me」じゃないけど、僕の音楽で一人でも助かる人がいてくれたらなという思いはあるので。Natural Lagの音楽を通して、聴いてくれた方になにかしらの影響を与えられたらなと思います。
――Da-iCEの活動は今後も?
もちろん続いていきます。Da-iCEが一番大事ですから。

取材・文=東條祥恵 撮影=森好弘
Natural Lag/花村想太

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