『フロム・ザ・リーチ』は
豪華なゲストを迎えた
サニー・ランドレスの会心作
素晴らしいタイミングで
来日したジョン・ハイアット
中でも、来日の少し前にリリースされたライ・クーダー、ジム・ケルトナー、ニック・ロウをバックに従えた『ブリング・ザ・ファミリー』('87)は、風格すら感じさせる仕上がりで、これまで陽の目が当たらなかったハイアットであったが、このアルバムの曲が多くのアーティストにカバーされ、一躍ルーツロックの申し子として認められることになる。そのアルバムがまだ話題となっていた時期だけに、彼の日本公演にライ・クーダーが来るのではないかと多くのファンは期待していた。しかし、来日メンバーが発表されると、知らないメンバーばかりでがっかりすることになるのである。この時、ハイアットのバックメンバー「ザ・ゴナーズ」の一員として参加していたのが、まだ無名のサニー・ランドレスだ。
手品のようなランドレスの
スライドプレイ
このコンサートのあと、彼のアルバムを探すリスナーは増え、中古専門店に彼のコーナーができるほどであった。かく言う僕も彼の1stソロ作『ブルース・アタック』('81)と2nd『ウェイ・ダウン・イン・ルイジアナ』('85)を入手し、特に『ウェイ・ダウン〜』は聴きまくった。このアルバムは、彼のルーツであるルイジアナのケイジャンやザディコ臭が強く、ランドレスならではのサウンドに満ちている。生音に近いスライドプレイは、すでに彼のスタイルが完成しつつあり、指弾き・スライドともにハイレベルのテクニックが聴ける作品だ。
ランドレスのトレードマークとも言える重厚なスライドギターが聴けるようになったのは、ソロ3作目(メジャー移籍1作目)の『アウトワード・バウンド』('93)からで、この作品以降、そのプレイには磨きがかかり超絶技巧の連続である。ソロ4作目の『サウス・オブ・1-10』('95)ではアラン・トゥーサンやマーク・ノップラーをゲストに迎え、ランドレスのケイジャン・スワンプ・ロックと呼ぶべき独自のアメリカーナ・サウンドを確立する。この頃から多くのセッションに参加し、スライドギタリストとしてデュアン・オールマンやライ・クーダーと並び称される存在となる。