パンクロックにも影響を与えた
ドクター・フィールグッドの
白熱のライヴ盤『殺人病棟』

ザ・バンドに大きな影響を受けた
パブロックのグループたち

パブでの演奏は、ほどほどの音量・最低限の機材使用・その店に集まる客層によって演奏曲が決まる等の決めごとがあるので、出演バンドの多くがブルース、ロックンロール、カントリー、フォークロック、誰もが知っているヒット曲などをレパートリーにしていた。68年に登場したザ・バンドはルックスをはじめ、当時流行していたロックとは一線を画したグループである。

彼らは今で言うルーツロックやアメリカーナ的なスタンスを持っており「30歳以上は信じるな」という言葉が語られていた時代に、デビューアルバム『ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク』の見開きジャケット内側では両親や親戚を並べた写真を確信犯的に載せ、自分たちのロックが時流に乗っていないことを意思表明していた。

流行とは無縁で、かつ大音量でない、使用機材はシンプル、ブルースやカントリーをベースにしているというザ・バンドの音楽を、パブロックシーンで活動していた多くのグループが模範としたのである。

エッグズ・オーバー・イージーの訪英

アメリカではさっぱり売れず、1971年にイギリスへと渡ったルーツロックグループのエッグズ・オーバー・イージーもまたザ・バンドに影響を受けており、彼らがパブで演奏し始めるとパブロッカーたちの注目を集めることになり、彼らの存在がパブロックサウンドのひとつの流れになった。というか、本場のアメリカから来たグループでザ・バンドの影響を受けているとなれば、パブロックのヒーロー的な存在になるのは仕方がないだろう。

その後、ブリンズレー・シュウォーツ、ダックス・デラックス、カーサール・フライヤーズ、ドクター・フィールグッド、キルバーン&ハイローズ、グレアム・パーカー、ニック・ロウ、イアン・デューリーらがそれぞれ独自の音楽を打ち出し、70年代中頃にはパブロックの全盛期を迎えるのである。

流行に左右されないサウンド

1975年、ドクター・フィールグッドのデビューアルバム『ダウン・バイ・ザ・ジェティ』がメジャーレーベル(ユナイテッド・アーティスト)からリリースされた。そのサウンドはR&Bをベースにしたシンプルかつ力強いもので、初期のストーンズを骨太にしたようなスタイルは、パブロックの存在を知らしめると同時に多くのフォロワーを生んだ。ステレオ録音が全盛の時勢にあって、オールモノラルでミックスされたこの作品には異様な迫力があった。

リー・ブリローの渋いヴォーカルとウィルコ・ジョンソンのカミソリのような鋭いギターワークはカッコ良く、流行に左右されないアルバムに仕上がっている。2作目の『不正療法(原題:Malpractice)』(‘75)も1枚目と甲乙付け難い出来である。全英チャートで17位となり、世界中にドクター・フィールグッドの名を知らしめる作品となった。

OKMusic編集部

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