パンクロックにも影響を与えた
ドクター・フィールグッドの
白熱のライヴ盤『殺人病棟』
本作『殺人病棟』について
パブを渡り歩いてきた彼らにとって、その本質がライヴにあるのは当然だろう。本作には観客の熱狂も収められていて、臨場感は抜群だ。スタジオ盤と比べると荒削りではあるが、やはりライヴアクトとしての魅力が詰まっている。チャック・ベリー、ボ・ディドリーといったロックンロール・ナンバー、ソニー・ボーイ・ウィリアムソンのブルース曲、ソロモン・バークやルーファス・トーマスのソウルナンバーなど、第一次ブリティッシュ・インベイジョンのグループが取り上げそうなカバー曲はどれも熱気に満ち、パブを回るうちにアレンジが仕上がったのだろう。どの曲も贅肉が全くなく、これ以上削ぎ落とせないぐらいのシャープさである。
特筆すべきは、全編にわたって響くウィルコ・ジョンソンの骨太のギタープレイで、テレキャスターの乾いた音を効果的に使いながら、究極の“キレ”を聴かせる。彼の一見古臭く感じるスタイルこそが実は普遍的であり、パンク〜ポストパンク〜オルタナティブに至るまで、多くのギタリストに影響を与えている。ご存知の人も多いと思うが、彼は日本で最も愛されたギタリストであり、毎年のように来日している。
本作はパブロックを代表するアルバムというだけでなく、ブリティッシュロック界を代表するアルバムでもある。これからも、何年経とうが聴き続けていける名作だと思う。