【ナノ インタビュー】
新たなスタートライン
となるベスト盤
ナノの活動上、このベストアルバムは
一番大きなマイルストーンになる
このタイミングでのベスト盤リリースも、きっと自然に導かれた結果なんでしょうね。
本当に自然な流れでベストの話が出て、しっくりきたという感じです。ナノ自身、もっと自分のハードルを上げていきたい、自分の世界を変えてみたいっていう想いが、ここ1年くらいで芽生えていたんですよ。そこで気持ちを切り替えるきっかけとして、何か目に見えるものを提示したほうがファンの人たちとも足並みを揃えられるんじゃないかと思ったんです。だから、このベストは8年間のフィニッシュラインではなく、ナノ、ファン、そしてこれから新しく出会う人たちとのスタートラインなんですよね。2ndシングルの「No pain, No game」にある《今 終焉(はじまり)のEYES》という歌詞の通り、“ここからまたみんなで走り出そう!”っていう始まりの合図なんです。
これまでの集大成というよりは、ここで仕切り直していこうというひとつのマイルストーンだと。
ほんとにその通りですね。ナノの活動上、一番大きなマイルストーンがこのベストになるんじゃないかな。だから、初めてのオリジナル曲である「magenta」を再録したんです。ナノの本当のスタートはこの曲だから、これなしではナノだけでなく、きっと今まで応援してくれたファンの方たちも納得しない。でも、原曲を入れるのもちょっと違うと思ったんですよ。一番大事な曲だからこそ今のナノとして新しくみんなに表現してみたい…今のナノが歌ったらどんな「magenta」が生まれるのかチャレンジしたくて、それでアレンジし直したんです。ただ、原曲と同じような路線でやっても意味がないし、みんなが好きでいてくれてる要素はキープしつつ度肝を抜くようなアレンジを目指さなきゃいけないってすっごく悩みましたね。めちゃくちゃハードルが高い一曲になりました。
結果、原曲とは何が一番変わって、何が変わりませんでした?
新しい「magenta」は彩り豊かなんですよ。当時はタイトルの通り、マゼンタ1色にモノクロしか入ってない感じだったのが、“タイトルを変えなきゃいけないかも!?”ってくらい色が豊富で。ミュージシャンもそれぞれ自分の個性をガンガンにアピールしてくれているから、決まりや束縛から解き放たれた「magenta」になってます。逆に変わってないのは、やっぱり“ナノ”であることですね。デビュー時の「magenta」に込めていた“ゴールは分からないけど、とんでもないところまでみんなと行ってやる!”っていう、その懐かしい気持ちがスタジオで歌っていて戻ってきたんですよ。なので、歌い方だったりは多少変わっていても、音ではない信念の部分…曲のソウルは変わってないんじゃないかと思います。
ナノであることは変わらないと。それでアルバムのタイトルも“I”?
いろんなミュージシャンだったり作曲家さんが関わってくださっているとはいえ、やっぱり全てが“ナノ”というフィルターを通しての楽曲ですからね。これまで自分が背負ってきた曲たちだし、これからもこの曲たちを背負っていくという、その責任感を感じた上で“I”しかないと。あとは、今まで応援してくれた人たち、このアルバムを手に取ってくれる人たちへの“愛”という意味も、もちろん込めました。ディレクターさんに“クサいかもしれないのは承知で、“I”って付けさせてください!”って言ったら半笑いされましたけど、押し通して良かったですね。“ナノ’s BEST”とかだと、ちょっと距離を感じてしまうから。
では、Disc 2に収録されているカバー曲も、あくまでも“ナノ”のフィルターを通したもの?
はい。カバーを入れるか最初は悩んだんですけど、ネットに上げたカバー曲をきっかけにディレクターさんと出会い、デビューに至った経緯があるので、そこへの最大のリスペクトを示すためにもカバーを入れる決断をしました。デビュー前から応援してくれてるファンの人たちが望んでいたことでもあるし、「ECHO」は海外のファンからのリクエストで選びました。原曲が英詞なのもあって、以前から“ナノバージョンで聴いてみたい”という声をいただいていたんです。もう1曲の「ロキ」はカラオケの邦楽ランキングでも上位に入っている曲で、こちらは自分で英訳しました。両方ともわりと最近の曲でボーカロイドが原曲なんですけど、せっかくの機会だから新しいことをしたかったんですよね。
なるほど。アコースティックギターでのアレンジは爽快感があって新鮮でした。
自分は洋楽育ちなので、アコギでのアレンジって大好きなんですよ! 日本人はわりとピアノが多いですけど、洋楽アーティストってセルフカバーとかもアコギでやることが多いんですね。原曲へのリスペクトを表すためにも、カバー曲は楽しまなきゃ意味がないと思ったし、ほんとに楽しかったです。まるで自分の大切なオリジナル曲のように歌えたから自信を持って発表できるし、この8年間でそういうメンタル面も変わったのかもしれない。特に「ロキ」はスタッフみんな“大好き”って言ってくれてますね。
5月からは全国5都市を回るワンマンツアーもスタートしますが、そちらも『I』の収録曲が中心になるんですよね。
それは最初から宣言しておきます。ベストに入ってる曲をみんなで楽しむためのツアーなので、なるべく全曲やりたいですし、そこで今までやったことのないサプライズも入れ込みたい。なので、あまり難しいことを考えずに来てほしいですね。このベストアルバムを出せること自体、8年間進んでこれた証なのでめちゃくちゃ嬉しくて、ここまで来れたのもひとりじゃなく、ファン、スタッフ、ナノチーム、バンドのみんながいたからなんだってことを、今回の制作で痛いくらいに感じ取れたんですよ。だから、今は本当に“ありがとう”の言葉だけ。その想いをこのツアーとアルバムに込めて、次につなげていきたいです。
取材:清水素子