【工藤晴香 インタビュー】
自分の意志を反映させないと、
自分の作品とは言えない
“自分のために楽しく生きる”が
自分の中にテーマとしてある
最後を締め括るのは華やかかつアッパーな「Memory Suddenly」ですが、この曲については?
この曲は「アナタがいるから」とちょっとテーマが似ているんですけど、「アナタがいるから」は感謝の気持ちを歌っているのに対して、「Memory Suddenly」は“自分が経験してきた嫌なこととか、忘れたい記憶とかもあなたの一部なんだよ。それも今のあなたを形成している要素なんだよ。だから、全てを肯定して生きていこう”という歌詞です。それは自分自身にも言えることですし、相手にも言えることなので、“受け入れることで前に進む”というか。それがテーマです。
よく分かります。例えば、男性は女性に“初めて”を求めることが多くて、真っ白だった頃のこの人と出会いたかったと思ったりしがちですが、真っ白だった頃の相手は別人なんですよね。
そうなんですよ。良いことも悪いことも経験して今のその人になっている。だから、惹かれる人の過去を否定するのは違いますよね。それは見た目とかも同じだと思います。例えば、好きになった人に対して“あと5センチ背が高かったら完璧なのに”と思うことがあったとしても、もし5センチ背が高かったら、その人の人格は違っている気がするんですよ。だから、相手の“今ある姿”を受け入れることが大事だし、自分が経験してきた嫌なこととかも受け入れてほしい。そのほうが人生は楽しくなる…「Memory Suddenly」はそういう歌です。
いいですね。工藤さん自身が歌詞を書かれて、本当に良かったと思います。
ありがとうございます。歌詞は大変でしたけど、出来上がったアルバムを聴いて、自分で書いて良かったと思いました。これからも歌詞は自分で書いていきたいという気持ちになっています。
楽しみです。もうひとつ、アルバムの制作に合わせて「MY VOICE」のMVも撮られましたね。
まず先にゲームセンターとビリヤード場でアルバムのジャケットを撮ったんです。それで、MVもそこで撮ろうということになりました。ゲームセンターの暗くて、明るくて、ゴチャゴチャしている世界観は出してほしいと思っていたので、それがちゃんと活かされていて嬉しかったです。私はゲームセンターがすごく好きでなんですよ。密閉された空間で朝か昼か夜かも分からなくて、時間を忘れて楽しめる場所だから。そういう世界観が伝わってくるゲームセンターのシーンもあれば、ヘリポートにいるシーンとか車に乗っている昼間のシーンとかもあって、それぞれが交差していてすごく気に入っています。
退廃的な雰囲気があると同時に美しさもあって、強く惹き込まれるMVになっています。では、MVの撮影はいかがでしたか?
ゲームセンターのゲーム機の間を歩いてリップシンクで撮っているところとか、撮られている時は“これはどんなふうになるんだろう”とか“どういう意図なんだろうって、ずっと疑問を感じていたんです(笑)。だから、完成したものを観た時、“めっちゃカッコ良い! 良かったぁ〜”と思いました(笑)。すごく素敵なMVになっているので、ぜひ「MY VOICE」は曲と併せてMVも観ていただきたいです。
同感です。さて、ソロデビュー作となる『KDHR』を完成させて、どんなことを感じていますか?
たくさんの人に届けたいという気持ちがすごく芽生えています。リスナーさんのことを考えたりしつつ歌詞を書きましたけど、こうやって完成してみると普段応援してくださっているみなさんはもちろん、私のことを知らない人とかにも『KDHR』を聴いてもらいたいです。私の曲を聴いて元気になったり、悩みがあったけど背中を押してもらえたというような人がいるといいなという想いがあるので。そういう力を持った作品になっていると思うので、より多くの人に届くことを願っています。
工藤さんの人柄や意欲、想いが詰め込まれたアルバムなので、必ず多くのリスナーに響くと思います。では、今後はソロアーティストとして、どんな存在を目指していきますか?
芯の強い女性であったり、みんなを導いてあげる存在でありたいなということはすごく思っています。クラスの同級生にいてほしいとか、そういう感じではなくて、憧れの女性になりたいですね。女の子、男の子を問わず、年下の子に“姉さん”と頼られるような存在になりたいんですよ。私はラジオとかSNSで悩みとかを相談されることが多いんですけど、そんな道に迷っている人たちを導いてあげたいと思うんです。ただ、“強い女性”と言っても強さの押し付けではなくて、変に着飾らずに、ありのままの自分でいたいですね。私の中には“誰かのため”とかいうことではなく、“自分のために楽しく生きる”ということがテーマとしてあるんです。そういうスタンスで生きている自分の姿が誰かの背中を押したり、ちょっと勇気を与えることにつながると嬉しいので、それを実践していこうと思っています。
取材:村上孝之