【樋口楓 インタビュー】
樋口楓のこれまでとこれからが
ギュッと詰まっている
VTuberが広がる未来のために
自分ができることをしていきたい
そんな中、このメジャーデビューシングル「MARBLE」で樋口さんの活動に、さらなる広がりが出そうですね。まさに今後に向けてのスタートにぴったりな曲ですし。
ありがとうございます。樋口楓のこれまでとこれからがギュッと詰まった一枚になりました。というのも、「MARBLE」の歌詞には、これまでの私のオリジナル曲の中から汲み取ったフレーズが入れ込んであるんです。そこにみなさんの応援があって今があるし、CDも出せるし、これまで以上に大きくなっていける可能性も出てきた、そんな想いも込めて歌わせてもらいました。
全体的に力強く、“これから何があってもみんなと一緒に進んでいく!”というような気概も感じました。
この曲にはこれからの樋口楓の覚悟みたいなものも詰め込みました。《かかって来いよ》っていう歌詞なんて、まさにその表れで。
そんな楽曲のレコーディングはいかがでしたか?
難しかったし、感動しました。
感動?
これまでの作品はいわゆる宅録で、その場でのディレクションもなく、クリエイターさんとファイルのキャッチボールを経て作品を完成させていたんです。
今回はがっつりとしたバンドサウンドですもんね。
実際にバンドのレコーディングも見学させていただいたんですが、“うわっ、やっぱりプロってすごい!”ってなりました(笑)。デモ音源をそのまま演奏するのではなく、その場で自分たちのアイデアを盛り込んでくれたりして。デモですらかなり良かったのに、そこに各個人のアレンジが加わって、“こんなにも色付いて、ブラッシュアップされるんだ!?”と感激しました。その分、私も“頑張ろう!”ってなったし。
対して、難しかった面というのは?
私、今までは自己流で思った通りにただ歌っていたんです。だから、“果たしてこの歌い方でいいのか”と悩んじゃって。“そんな歌い方で想いが伝わるのか”と自問自答や試行錯誤に陥ってしまったのですが、いろいろアドバイスをいただき…時間は非常に掛かりましたけど、この歌にもっとも合う自分のスタイルに至れたかなと。
“これから行くぞ!”感や“足掻いてでも進んでいく!”的な歌詞に樋口さんの過去と今後を感じました。
ここに至るまでの道のりは、決して楽しいことだけではなかったですからね。さっきのVTuberとしての偏見しかり、自分なりに落ち込んでいた過去や、歌がどうしても上達しないジレンマ…みなさんもいろいろな苦悩や葛藤がおありでしょうが、私にもそういうものがあって。VTuberもリアルなアーティストさん同様、傷付いたことや挫折があって今があるので、その辺りも歌に込めています。未だに二次元などに抵抗がある方に、VTuberもリアルな方々と同じように生きているんだと伝えたかったし、偏見の目もなくしてもらいたい。それらも含め、この歌詞は今の私の気持ちにぴったりでした。なので、気持ちを重ねて歌わせてもらいました。
M2の「Sugar Shack」はライヴでのお客さんの光景やいろいろなシーンが浮かんでくる曲ですね。
1曲目がギターが中心のバンドサウンドだったのに対して、こちらはシンセやキーボードのラインを前に出したくて。あと、ライヴ映えする曲も欲しかったし。だから、煽りも入れたい、ラップもしたい、盛り上げたい、歌もしっかり歌いたい…など、私がリクエストした要素を一曲に集約していただきました。
むちゃくちゃ楽しく盛り上がれそうな曲ですもんね。
歌も楽しく録れました。かなり目まぐるしいですが(笑)、みなさんと一緒に作り上げる空間が楽しみな曲でもあります。
打って変わって3曲目の「For you」はミディアムバラードで。歌詞はファンも交えて作られたそうですね。
作曲は影山ヒロノブさんにしていただきました。それを配信でみなさんに聴いていただき、それに合った感じで私が歌いそうなフレーズを募って、私の作った歌詞をもとに幾つか入れ込まさせていただきました。
そこではさぞかし素敵なフレーズの応募があったのでは?
私にはそぐうでしょうけど、楽曲にはそぐいそうもないものもあって…。
例えば?
私的にはファンのみなさんに感謝の気持ちを伝える歌詞にしたいと思ってたんですけど、《バトルしようぜ》とか《ホームランを打て》とか(笑)。
なるほど(笑)。では、今作でメジャーデビューということで、これからのビジョンを教えてください。
やはりVTuberが広がる未来のために自分ができることをしていきたいです。とにかくこれまでのVTuberができなかったことをやってみたい! その中のひとつに野外イベントがあって。
みなさんの形態を考えると、かなりハードルが高そうですが。
でも、やりたいですね。できれば甲子園球場で! 関西出身だし、野球が好きということもありますが、高校野球の応援に行った時、グラウンドでもスタンドでもみんなが輝いていたのがとても印象深かったんです。特にグラウンドが。なので、私もそこに立って歌ってみたいなって。そこでやったとなったら、“VTuberっていうのが甲子園でライヴをやったらしい!”“屋外で3Dが動いてライヴをやったんか!?”“そもそもVTuberって何なん?”と話題になって、VTuberのことを知ってもらったり、広まるきっかけになるかもしれないし。だから、いつか実現させたいです!
取材:池田スカオ和宏