Hysteric Blue?藍井エイルバックバ
ンドのドラマー?ヒプノシスマイクの
楽曲提供者?様々な顔を持つ【楠瀬拓
哉】という男の40年に迫る<後編>

ある時はアニソン、ゲーソン、2.5次元舞台音楽の作曲家。またある時はパンク、アイドル、声優などのサポート・ドラマー。そして1998年デビューのHysteric Blueを筆頭に、いくつものバンドでJ-POP/ROCKシーンに確かな足跡を残してきたミュージシャン。音楽家として千の仮面を持つ男、楠瀬拓哉の生誕40周年を記念した大イベント、「PARTY 40」(@Veats SHIBUYA)の開催が、いよいよ4月19日に迫ってきた。自ら参加する三つのバンド、Rest of Childhood、月蝕會議、MIMIZUQのライブをメインに、続々発表される多彩なゲストを交えた、それはまさにジャンルを超えた音楽好きのためのビッグ・パーティー。その開催を記念した、彼の半生を語るロング・インタビューの後編は、現在進行形の三つのバンドと、来るべき「PARTY 40」への思い、そして未来への情熱を熱く語る。音楽に人生を捧げた男の生き方、その目と耳で確かめてほしい。
――そして、Hysteric Blueからの盟友・Tamaちゃんとのバンド、Sab&atilde;oもおととし休止してしまう。と思いきや、新しいバンドがぼこぼこ生まれてくるという(笑)。
本当にそうなんです(笑)。たまたまタイミングが重なったんですけど、ほぼ同時進行ですね。どれが一番先だったかな? まず、OLDCODEXがランティスにいて、中村泰造くんがずっとベースを弾いていたので、よくライブを見に行ってたんですね。ドラムの山縣亮くんも、僕がShingをやっていた時によく対バンしていたfugerというバンドにいたんで、付き合いはめちゃくちゃ長いんですけど、ある時、山縣くんがたぶんINORANさんのツアーで、OLDCODEXのツアーに帯同できないことになって、トラ(エキストラ=臨時)で僕が行ったんですよ。そこでYorkeと知り合った。彼はけっこうロックな人なので、今だから笑って話せますけど、最初は僕のこと、「なんだこいつ、へらへらニコニコして、気合入ってんのか!」と思ってたらしい(笑)。
――アハハハ。言いそう。
2017年にイベント1本だけ入って、18年にツアーの前半をやらせてもらって、後半は亮くんにバトンタッチしたんですけど。その時にかなり親密になって、ドラムが好きで、バンドが好きなことをわかってもらった。そのツアーが終わってからミュージック・ビデオの撮影に呼ばれて、そこで「バンドやりたいんだよね」という話をされて、いい声だなと思ってたから、「手伝うからやろう」と言って、メンバーを探し始めたんですよね。
――それがRest of Childhood。スリーピースの、男っぽいロックバンド。
シンプル、ストレートですね。彼は今までギターを弾いてきた人じゃないから、そこから始めることにチャレンジして。プレイヤーは3人で、プロデューサーにSCHONというギタリストがいるんですけど、彼はMR.ORANGEというバンドにいたから、やっぱり昔からの知り合いです。そして彼が今、OLDCODEXのサポート・ギターです。だから、全部繋がってるんですよ。二十歳の時に全員会ってるんです。
――もう、運命というか何というか。
この年になってミュージシャンとして生き残ってると、それだけでリスペクトなんです。あの頃対バンした時は、「なんだこいつ、俺のほうがかっこいいだろ」とか、全部が敵。今は、全員がリスペクト。「まだやってたか。お互い大変やったなー」って、出会い直しになるんですよね。そういう仲間たちです。
――その次が、月蝕會議ですか。それともMIMIZUQ?
どっちが早いんだろう? この二つのバンドはすごく面白くて、繋いでくれたのが同じ人なんですよ。杉本善徳くんという、Waiveというバンドのギターなんですけど、彼がけっこうクセモノで(笑)。頭が良くて、僕は独立した時からすごく尊敬していて、仲がいいんですね。で、彼と同じくらいクセモノのエンドウ.(GEEKS)さんという人がいて、自分でアンプを作る、エフェクターを作る、挙句の果てに自分で木をくりぬいてギターも作る(笑)。この間はオノを作ったとか、カブトムシを孵化させたとか、無添加の石鹸を作ったとか、ジャンルレスなオタクなんですよね。エンドウ.さんと杉本さんが仲がいいことは知っていて、たまたまエンドウ.さんと会う機会があったんです。僕が曲を提供している声優の佐藤聡美ちゃんのライブを見に行ったら、バンマスがエンドウ.さんだった。「音がめっちゃいいギターがいるぞ」と思って、「これがエンドウ.か」と。楽屋に行ったら、めっちゃ男前な奴が出てきて、声がでかくて、圧が強い人やなーと思ったのが第一印象でした。そしたら杉本さんが「エンドウ.がバンドを作りたがっていて、ドラムはたっくんがいいと言ってるんだけど」って、繋いでくれたんですよ。それで改めて会いに行ったのが、月蝕會議の始まりです。
楠瀬拓哉
――ドラマですねえ。
エンドウ.さんの作家プロジェクトとして、今で言うコライティングみたいな「全員が作曲できる集団にしたい」と。しかもバンド形式で、曲を作ったところから全国ツアーまでパッケージできるものはどうだろう?と。で、ドラムで曲を作れるのは?って探したけど、あんまり見当たらなくて、僕に白羽の矢が立ったみたい。二つ返事でOKしましたね。最初はエンドウ.さんと僕と、ベースの鳥男さんの3人だったかな。キーボードの岩田アッチュ(ex.NILGILIS)は僕が推薦したんですよ。「絶対この中に、子供か女性か外国人を入れたほうがいい」と言って。
――ほおー。
少年ジャンプのマンガに出て来る、能力者集団みたいな感じで。ばーんと見開きになった時に、おっさんばかりじゃ面白くないから、まず鳥男は飛び道具としてOKで、あとはどこかの国から流れ着いた外国人か、子供か、女がいないとインパクトがないだろうと。それか、相手に触れずに倒せる能力を持った老人とか(笑)。そこでふと思いついたのが「そうだ、アッチュがいるわ」と。作家として声優さんにも曲提供してるし、寺島拓篤(声優/佐藤聡美の夫)くんとも一緒にやってるなと思って、久しぶりに連絡しました。それで「やらへん?」って聞いたら、子供が生まれたばっかりだし、ライブは無理だけどと言われて、「別にライブする予定もないし、おるだけでええから」って。エンドウ.さんも「みなさん忙しい方なので、やれる範囲でOKです」ということで、アッチュが入ってくれた。時を同じくしてBillyさんと知りあって、ちょうどTRUSTRICKをやめるタイミングだったので、彼も二つ返事でOKしてくれて、今のメンバーが集まったんですね。我ながらいいメンツやなと思います。みなさん才能がすごいし、僕もここにいれることが幸せです。
――MIMIZUQは?
MIMIZUQは、これも杉本善徳さんが「たっくん、バンドに入る気持ちある?」と言ってきて。杉本さんと一緒にやるなら面白そうと思って「何でもやります」と言ったら、「いや、俺じゃないんだけど」って(笑)。それで聞いた話が、Psycho le CemuのseekくんとAYAくんが、Mix Speaker’ s,Inc.というバンドをおととしまでやってたんですけど、それが解散することになって、「新しいバンドをやりたがってる」と。僕は、解散してPsycho le Cemuに集中すると思ってたんですけど、新しいバンドを作って、ボーカルがCASCADEのTAMAさんだと。そのドラムに「たっくんがいいと言ってる」と杉本さんに言われて、すごい面白いメンツやなと思ったんですね。Hysteric Blueも含めて、みんな90年代のバンドたちで、だけど今まで僕はその人たちと面識がない。seekくんと杉本さんと一緒に飲むことはあったんですけど、サシで会ったことはなくて、でもここで僕のことを思い出してくれるのはすごくうれしいし、活動時間に制限はあるかもしれないけど「やりたいです」と答えて、了解してもらった。その頃はSab&atilde;oもあったから、4つのバンドが同時進行していたんですけど、結果的に今、一番まめに動いてるのはMIMIZUQですね。その全部が、ちょうど2年前ぐらいに立ち上がりました。
――しかも今動いてる三つは、いい感じにキャラクターが全然違う。
そうなんです。MIMIZUQはV系に近くて、月蝕會議はアニソン、ゲーソンを得意としつつも何でもできる、そしてRest of Childhoodはストレートなロックンロール。ここにSab&atilde;oがあればガールポップという、バンドで言うと全方位を網羅するということになると思います。さらに僕は2.5次元舞台の曲も作ってるから、何でもいいから音楽で食っていきたいと思っていた、若かりし頃の僕の夢は、ここに集約されているんでしょうね。「どこでも行きます、いっちょがみさせてください」ということで。
楠瀬拓哉
――いろいろやってきたけど、振り向けば道はまっすぐだった、みたいな気がしますね。
でも40代はたぶん、そこまで「何でもやります」ではなくなると思うんですよね。今までと同じ勢いではやれなくなってくると思うし、あるものの中から大事なものを取捨選択したり、今の年齢なりにやれることも考えていくと思う。そう考えると、こんなに雑多な何でもありの状態が全部動いてるのは、もう今しかできないと思ってるのが、4月19日の「PARTY 40」なんですけど。
――ですね。
僕は本当に、人との出会いでしか仕事を取ってきていないので。今まで出会ってきた人と、作って来たもので形成された、僕の世界がポンと出たらうれしいなと思ってます。今発表されてるのは3バンドですけど、これから追加されるゲストは、演劇のほうに関係の深い方もいます。雑多な方が駆けつけてくれるとうれしいです。
――それにしても、よくスケジュールが合ったと思いますよ。もうそれだけで奇跡。
そうなんですよ。それをわかっていただいてありがとうございます(笑)。こんな日、絶対ないんですよ。鳥男なんて、スケジュールが全然取れないんですけど、その鳥男の19日が取れた。僕の誕生日は12日なんですけど、その日Psycho le Cemuは札幌にいて、でも次の週ならやれると言ってくれてる。YorkeもOLDCODEXで忙しいけどその日はあいてて、奇跡的にスケジュールが取れたので、「これはやらなきゃな」と。それから「ハコ押さえてください」ってお願いしたら、Veatsという最高のハコが取れたという。
――新しい、いいハコですよね。
「取れました」という連絡をもらった時、渋谷のスタジオでリハーサル中だったんですよ。場所だけ確認しようと思って、帰りに寄ってみたら、中が暗かったから、行けるかなと思って中に突っ込んでいったんですよ。内覧しに。
――アハハハ。アポなしでいきなり内覧。
一瞬、不審者が来たという目で見られましたけど(笑)。その日はメンテナンス日だったんですけど、「実はこういうわけで、今度使わせてもらうことになって」という説明をしたら、「ああ、今連絡してましたよ」と言って、その場で内覧させてくれた。で、そこの店長さんがその昔、新宿のRUIDO K4にいた人で、綾野剛くんのバンドのサポートをやっていた僕が出てたのを「見てましたよ」と言われて、十何年ぶりの再会だったんですね。その時、「このハコで間違いない」と思いました。これは運命だなと。
楠瀬拓哉
――いやー。全部繋がってる。
これだけ幅広く雑多に、いろんな人に年中会ってると、それぞれが疎遠になってしまうんで。その縁繋ぎの場でもありますね、「PARTY 40」は。ゆかりのある人はみんな来てほしいし、ライブはいいから打ち上げをみんなでやりたい(笑)。「最近どうなの?」って、久しぶりに会話して、飲んで、それがしたいです。そして僕を介して、アーティストさん同士の交流があればいいと思います。
――お客さんもそうですよね。それぞれの時期、それぞれのバンドと出会った人がここで一つになる。
自分の思っている「楠瀬拓哉像」でいいと思うんですね。何の僕として知ってるのか、それぞれ違うと思うし、それが一つの場で見れちゃう。僕はエンターテイナーとして、みんなを楽しませることを仕事にしているから、肩ひじ張らずに、自分が見たいものを見に来てくれたらいいなと思います。「音楽にはいろんな形があるんだな」というものを、2時間か3時間の間にいっぱい感じてもらえると思うし、僕はロックを根本としてるけれど、ロックにもいろいろやり方があるんだなとか、スタイルの違いとかを楽しんでもらえると思います。
――タクヤさん、たぶん出ずっぱりでしょう。相当頑張らないと。
それは全然苦じゃないです。清春さんのライブに比べたら(笑)。この間、大晦日にカウントダウン・ライブをやったんですけど、11時から始まって、終わったのが5時でした(笑)。そこでスタミナは鍛えてもらってるんで、2時間3時間ぐらい何でもないです。もちろん頑張りますけどね。切り替えながら、楽しみたいと思います。…でもこうやって過去を振り返ると、自分でもびっくりしますね。「そうか、ここでこうやって繋がってたんだ」とか。
――まさに。一つ一つが、未来への布石になってる。
その布石を打つ時って、打ったことに気づかないんですよね。布石の回収が2週間後なのか、7年後なのかがわからない。続けてたからこそわかれたし、相手側もそうですよね。お互い続けてたから会えたということが、長く続けていると増えてきて、すごくいいんですよ、ロマンがあって。ミュージシャンという仕事は、あんまり儲かるものではないかもしれないけど、ロマンがめっちゃあっていいんです。そういうものをどんどん見せて、それを買っていただく仕事だと思うんですね。それを1曲3分間の歌に凝縮して、演劇だったら2時間にして、そういうことをし続けたいと思います。

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