藤田麻衣子

藤田麻衣子

【藤田麻衣子 インタビュー】
等身大の自分と
向き合えるようになった

シンプルさを目指して“原点回帰”しつつ、新しい試みにも果敢に挑んだアルバム『necessary』。そんな新作に込めた想いや“必要なもの”という意味のタイトルを掲げた背景、さらには楽曲作りに対する気持ちの変化などについて語ってもらった。

“温もり”“視線”“会話”は
今までの人生で大切にしてきたこと

1年振りのニューアルバムがリリースされましたが、今作のテーマは?

去年の秋頃にたくさん曲を書いていて、表題曲の「necessary」もその頃に書いたひとつでした。歌詞の中に“温もり”や“視線”、“会話”が大切だということが出てくるんですけど、それは今に限ったことではなくて、私自身が今までの人生の中で大事にしてきたことだって改めて思ったんです。そんな自分の核となることが書けたということで、スタッフに次のアルバムのタイトルを“necessary”にしたいと伝えて、そこからアルバムに入れる曲を集めていく感じでした。

変わらない信念を再確認できたことでアルバムの方向性が決まり、いろんな想いが凝縮された楽曲が今作に収められているということですか?

はい。今言っていただいた“凝縮”って言うんですかね。そういう書き方ができた曲が多い気がします。それは年齢的なものもあるのかもしれません。今、36歳なんですけど、30代後半に入った今って新しいスタート地点なのかなって思うんです。どう見ても大人ですし(笑)、“どんな40代になりたいのか?”って考えるようにもなりましたし。

年齢によって考え方が変わってきますよね。確かに、30代前半はまだ20代の気持ちが残っていたりしますけど。

分かります! 30代前半の頃は見た目もあわよくば20代に見せたいという気持ちがありました(笑)。それはそれで素敵なことだと思いますけど、30代半ばになると20代に見せたいと思っても無理なので、30代の自分を受け入れるというか、いい意味で等身大の自分と向き合えるようになりました。その気持ちの変化とともに考え方も変わってきたような気がしています。

具体的には?

20代の頃はファンの方に応援してもらっているという気持ちがすごくあったんですけど、今はファンの方に支えられる以上に、ファンの方を支えたいという気持ちが大きくなりました。“どうしたら包めるかな?”や“どうしたら笑顔になってもらえるかな?”って、相手のことをより思うようになって、それまでは目の前の瞬間、今見えていることだけを歌ってきた自分がいたんですけど、今回のアルバムに入っている歌は目の前のものを見ているけど、今までずっと思ってきたこともそこに重なっているものが多くなっていて。歌詞の文字量はこれまでと比べると少なくなっているんですけど、込めた想いの量は増えているので、まさに“凝縮”という言葉がぴったりだと思います。

なるほど。曲順はどんなふうに決めましたか?

最初は自分で並べてみて、それを見ながらスタッフと話し合って決めました。スタッフから“シングルになるぐらいの曲を頭からパパパッと並べたい”と提案されて、そういうのもありかなって。これまでもシングル曲を頭に持ってきたことはありましたけど、ほとんどは1曲目にイントロっぽい曲を持ってきていたので“それ、やってみよう!”という感じで。

そんな1曲目の「その声が聞きたくて」はスッと耳に入ってくる感じがしました。

この曲は以前からデモテープがあって、結構お気に入りの曲だったんです。“大事な時に出したいね”ってスタッフとも話していて、今回のアルバムを作る時に“MVも作るような大事な推し曲にしたい”と思ったのでブラッシュアップして完成させました。やっぱり出すタイミングって重要じゃないですか。これまでに何度か歌詞を書き直してたりして、“出そうかな? いや、まだそのタイミングじゃないか”っていろいろ思ったりもしたんですけど、今回は“アルバムに入れたい!”という強い気持ちがあったので、新しくDメロとかを付け足したりしましたけど、歌詞は最初のものがいいと思って、数年経ってもとに戻りました(笑)。

タイミングと言えば、「chapter」も“新しい章の幕開け”という意味では、今だから作れた曲なのかなと思ったのですが。

そうですね。自分の見え方とか気持ちが変わってきたのを感じて、そのまま素直に書き始めました。私、明るい歌も一応ありますけど暗い歌が多いので(笑)、こんなふうに振り切った歌は書いていてすごく気持ち良かったですし、歌っても気持ち良くて、こういうのもいいなって感じました。

「それぐらいでいいよね」も曲調は明るいですよね。

この曲はAメロのコード進行とか、これまで自分の曲で一度も使ったことのない進行で作ったりしています。聴いてもらうと緩い感じの曲なんですけど、歌詞の中には真剣に伝えたいメッセージを込めていて…疲れたり、頑張りすぎて限界を感じている人とかにストレートな応援ソングが必要な時もありますけど、頑張ってるからこその緩さ、遊びが必要な時もあると思うんですね。私自身、これまでは頑張って苦しい時はさらに頑張るという選択をしてきちゃったんですよ、性格的に(笑)。それだとだんだんキツくなってきて、疲れ果てて嫌になってしまうところまで行き着いた時、頑張るんじゃなくて一旦休憩したり、一度遊んでみたりしたら良かったってすごく思ったんです。私は詞先なので歌詞を先に書いたんですけど、そんな気持ちを伝えたいと思ったので、曲は緩い感じにしてみたんです。プロデューサーも理解してくれて、♪ドゥビドゥバ〜というコーラスとか今までやってなかったことをやったり、楽しいレコーディングでした(笑)。

“10個のうち3つもできたらいい”というメッセージに気持ちが楽になりました。

そう感じてもらえたら嬉しいです。例えば、アルバムを聴いたりすると最初はドラマチックな曲とかが好きになってもらいやすいと思うんです。この曲みたいなタイプって最初は聴き流していたけど、すごいメッセージが込められていることにふと気づくっていうか。別にその通りにならなくてもいいんですけど(笑)、そんな曲であってほしいという気持ちを込めて10曲目に入っています。

11曲目の「おやすみ」は、やっぱり最後の曲という雰囲気ですね。

そうですね。最初、アルバムは10曲ぐらいがいいかなということを話していたんですけど、曲が出揃ったあとに軽い気持ちで“こんな曲もできました”って「おやすみ」を聴いてもらったんですね。“これはないな”って言われると思っていたら“いいですね!”って反応だったので、最後にボーナストラックみたいな感じで入れることなったんです。
藤田麻衣子
藤田麻衣子
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OKMusic編集部

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