【吉田山田 インタビュー】
今回のベストアルバムを出すことが、
すごく新鮮に思える
新曲「いくつになっても」は
次のアルバムに向けてのいい接着剤
そして、今回のベストアルバム『吉田山田大百科』。5周年の時はシングル集(2014年12月発表の『吉田山田シングルズ』)だったから選曲に悩むことはなかったと思うのですが、今回は悩んだのでは?
吉田
めちゃくちゃ選曲が難しかったです。楽曲の思い入れを言い出したら切りがないんですよ。そんなのは全曲にあるし、到底選べないから、僕らふたりとスタッフ5人の多数決にしました。“この曲はセットリストに入っててほしいよね”も含めて、基本的に“吉田山田と言えば!”という曲を選んで、そこにプラスして“この曲だけは入れたい”というものを選びました。
スタッフ案で意外だった曲ってあります?
吉田
「Color」ですね。別にシングル曲でもないし、アルバムの中の一曲なんですよ。ライヴではお馴染みになってて、すごく盛り上がる曲なんですけど、一般の方からしたら“知らないよ”という曲だから、僕だったら選ばないですね。でも、最近の吉田山田をすごく表しているから入れようってなりました。
山田くんは?
山田
僕も「Color」ですね。“あっ、この曲を入れるんだ”って。
山田
他に意外に思うものがなかったし(笑)。でも、「もやし」を入れてくれたのは嬉しかったです。
「しっこ」じゃなく?
山田
「しっこ」か「もやし」(笑)。逆に「花鳥風月」はシングルにもなってない、1stアルバム『「と」』に入っている曲なんですけど、これは僕らが選んだ…僕らはすごくいい曲だと思ってるので、改めて聴いてほしいと思って入れましたね。
いい曲ですよね。個人的には一番意外な曲でしたけど。
吉田
“もっと評価されていいだろう”っていう作者の想いが出てますね(笑)。
スタッフに選んでもらったとのことですけど、ファンに選んでもらうという選択肢はなかったんですか?
吉田
ほぼ初めてなんですけど、中野サンプラザの時にやっていて、その時の順位を1位から50位くらいまでを教えてもらいました。中には“えっ、これ?”ってのもありましたね。だから、それも参考にはしていますけど、今回は吉田山田チームで決めていいかなって。
中野サンプラザではそのリクエストのトップ3、「ララバイ」「希望とキャンディ」「水色の手袋」が披露されましたけど、その曲は入ってないんですよね。
山田
気持ちは分かるんですけど、コアなファンによる投票結果だったので(笑)。
1位の「ララバイ」は音源になってない曲ですし、「水色の手袋」は「ガムシャランナー」のカップリングにしか入ってないですからね。
山田
あの投票結果を見て、いつかは音源化したいと改めて思いましたね。
新曲も収録されているのですが、「いくつになっても」は今回のために作った曲になるのですか?
吉田
いや、少し前に出来上がっていた曲で…昨年の『47都道府県ツアー ~二人またまた旅2019~』を回ってる時かな。なんかね、気持ち良くできた曲なんですよ。山田がデモを持って来てくれて、それをアレンジャーの涌井啓一くんと3人で、その場で基本のかたちを作っていったんですけど、“あっ、これからの吉田山田の曲の作り方ってこうなのかもしれない”と思えた曲ですね。ボーナストラック盤にもう1曲ありますけど、曲調も含めて今回のベストアルバムの最後に入れるのはすごくいいなと思って入れました。
そうなんですね。曲調がすごくフォーキーじゃないですか。吉田山田のデビューの頃もフォーキーだったし、そこに《いくつになってもバカしたい》という歌詞が乗るのは、まさにこのタイミングならではの曲だと思ってました。勘ぐりすぎましたね。
山田くんはどんな曲を作ろうと?
山田
『証命』を録ってる段階あたりからフォークソングっぽいものが増えてきてて、その後半ぐらいにできた曲だったんですけど、作りながらも“ずっと歌ってたいな”と思ってたんで、それをかたちにした感じですね。この時期って難しいことを言うんじゃなく、シンプルな言葉が出てきていたし、歌うことがすごく楽しかったんで、いつまでも歌っていたいっていう単純な想いを歌にしただけというか。AメロとBメロはよっちゃん(吉田の愛称)が書いてくれて。このベストアルバムに入る新曲ってめちゃくちゃ大事じゃないですか。だから、候補に「ララバイ」も挙がったんですけど、この曲が今の自分たちと今後の自分たちにフィットしたので、次のアルバムに向けてのつなぎじゃないですけど、いい接着剤になる曲だなって。
歌詞にしてもファンと一緒に“次に行こう!”的なところもありますしね。以前にも言ったかもしれないですけど、山田くんが昔は“押し出せ、押し出せ。ネガティブ、押し出せ”と言ってけど、今はネガティブも受け入れて次に行こうとしているので、そういう10年後の姿勢が出てますよね。
吉田
確かに。今じゃないと歌えない曲だと思います。昨年、初めて1年間密着というのを番組でやってもらったんですけど、カメラで撮られている自分たちを観た時に“ふたりともいい顔になったな。いいふたりだ”と単純に思えたんですね。自分が思う理想にはなれているなって。いくつになってもバカみたいなことをやってるように見えて、ちゃんと真剣に生きてる…そんな歌がしっくりとくるのは、やっぱり嬉しいですね。
密着のドキュメント、観ましたよ。吉田くんの“自分の命で救えるとなったら何の迷いもなく命を捨てられる、山田のためなら”という言葉が印象的でした。
吉田
今って“人はひとりでは生きていけない”という言葉があまり響かなくなってきていると思うんですよ。いろいろ面白いこともあるし、ネットで誰かとつながれたりもするし、ひとりでも生きていけがちなので。でも、やっぱり人と一緒にいたい! だから、みんな結婚したり、彼氏や彼女を見付けたりすると思うんですけど、相方ってまた違うというか、特別な存在なんですね。そんな人と自分がまだ若い頃…未熟な時から一緒にいられたのは、すごく運が良かったと思うんです。“命を張れる”というのはきれいな言い方ですけど…もしも宝くじで5億円が当たったら、赤の他人なのに2億5,000万円をあげられる(笑)。それはなぜなら、吉田山田が続かなくなるから。僕が5億円を持ってて、山田は持っていない状態で、同じトーンで会話できないと思うんです。だから、山田には2億5,000万円をあげられる。そんな2億5,000万円をあげられる赤の他人って、普通はいないでしょ? これってすごいことだと思うんですよ。そういうことを、この10年で感じましたね。
吉田くんが2億5,000万円くれるらしいよ。
そんな吉田くんに対する山田くんの想いは?
山田
いろんな人が曲に対してとかの意見を言ってくれるんですけど、僕、“あっ、なるほど!”と言いつつも聞かないんですよ。でも、よっちゃんが言ってくれると結構聞けるんです。音楽ってかたちがないし、正解がないものだから、その人の言うことを信じてみようと思えることって重要だなって。それがあるから、この先も続けて行けると思ってますね。あと、最近特に思ったことなんですけど、僕のことを面白がってくれてるっていうのは、すごくありがたいことだなって。人によっては…まぁ、ほとんどの人がそうなんですけど(笑)、“わけが分からない!”って面倒臭がるんですよ。そこを面白がってくれてるから、ほんと救われてるなって。