TK from 凛として時雨

TK from 凛として時雨

【TK from 凛として時雨
インタビュー】
他者を介在させることで
自分を壊し、再構築した

漫画家の石田スイ、ゲスの極み乙女。のちゃんMARI、芸人・小説家の又吉直樹など、多彩なコラボレーターを迎えて制作されたニューアルバム『彩脳』。TK from 凛として時雨にとってエポックメイキングな作品になったと言える本作の制作の裏側をメールインタビューで訊いた。

タイトルには“自分には才能がない”
という意味も込められている

『彩脳』は純然たるTKさんの新作であると同時に、コラボレーションアルバム的な側面も持った作品だと言えると思います。“コラボを軸とした作品”というアルバムの全体像はいつ頃、どんなふうに見えてきたのでしょうか?

もともとはそういったコンセプトで始めたわけではなかったんですよね。“今ここに一緒にセッションできるプレーヤーがいたらな”とか“自分の脳で描けない角度から、僕の音や言葉を見てもらいたいな”とか、そんなちょっとしたきっかけの集合体なんです。今回参加してくれたのは今まで自分の音楽を作るにあたって自然と出会ってきた方々で、それは必然かもしれないし、偶然かもしれないけど、やっぱり求めているものとは出会える運命なんだと思います。“出会う”というよりも、気づけば一緒に音を出しているような感覚で、それくらい自然だったんです。

これまでとはイメージの異なるアーティスト写真もインパクトがありました。どのようなディレクションがあり、そこにはどの程度TKさんご自身の意図が介在しているのでしょうか? また、出来上がった写真についてはどのような感想をお持ちですか?

僕としては見慣れてる状態なんで、“インパクトがある”と言われると不思議な感じですが、目が見えるだけで新鮮なので面白いですよね(笑)。最近ジャケット写真でもお世話になっている岡田貴之さんに撮ってもらってるのですが、自然体でいられるので撮られることに抵抗がないんです。僕はもともと写真を撮られるのが好きじゃないのですが、岡田さんの作品を僕自身が見てみたいと思うくらいのマインドなのが、自然体として写真にも出ているのかもしれません。

「彩脳 ~Sui Side~」の歌詞に関して、作詞の石田スイさんとはどのようなやりとりがありましたか? 『東京喰種』の世界観の延長に感じられる部分もありますが、そういった会話はありましたか?

僕がもともと『東京喰種』に向けて歌詞を書いて、それを渡しつつスイさんに“自由に書き換えてほしい”と伝えました。スイさんは時雨のイメージで歌詞を書いてくれましたね。リクエストを出すわけでもなく、お互いラブレターを出してるような、そんなやりとりでした(笑)。

“彩脳”という言葉はアルバムタイトルにもなっていて、“多彩な才能”が集った作品の内容とリンクしていますが、これは全体像を見て意図的につけられたのでしょうか? それとも、偶然アルバムにも相応しいタイトルになったのでしょうか? また、“Sui Side”という副題についても知りたいです。

このタイトルには“自分には才能がない”という意味も込められているんです。もちろん、そんなのは誰が決めることでもないんですが、それでもそこに自分にとって魅力的な答えを導いてくれる人がいることによって、浮き出てくるものがあり、今回はそれをすくい集めたようなアルバムなんです。“Sui Side”に関しては、後にリリースされる“TK Side”との対比を楽しんでもらいたい、という狙いがあります。同じ楽曲に対してふたつ歌詞があるというのは珍しいし、存在していたとしてもリリースされることはまずないと思うので。でも不思議と物語が続いてるような感じもあるんです。

「katharsis」をはじめ、既発曲は“sainou mix”というかたちで収録されていて、もちろん曲ごとにこだわったポイントがあったかと思いますが、アルバム全体を通じてミックスで意識したポイントはありますか? また、そのポイントを意識する上で、サブスク時代の視聴環境をどの程度意識しましたか?

今回は既発の曲が多かったので、いつも聴いてくれてる人が気づいてくれるような仕掛けとして楽しんでもらえるように、全てミックスし直したんです。音が気に入ってなかったという意味合いではなく、アルバムとして新たなイメージで聴けることを意識しました。現代のさまざまなプラットフォームを全て網羅することは不可能だと思うのですが、ひとつだけ大事にしているのは、自分の好きな音であること。これは多様化するプラットフォームや聴かれ方、以前のようにCDとスピーカーという基準となるシステムが薄れていくことによって、僕は逆に少し楽になった部分もあります。もはやどんなリファレンスで音を作れば良いか分からなくなるという声もありますが、もう追いかけてもしょうがないって思えるんです(笑)。僕は独学でミキシングをしてるのもあって、どっちにしてもプロの様な音像は作れない。だけどみんなが自由な環境で聴いてることによって、自分の音の創り方も極端になってきた気がします。プロの音は出せないんだという失望の繰り返しですけど、自分の音は自分にしか出せないということにも気付けましたから。

「インフィクション」で共作した、ちゃんMARIとはどのような役割分担で曲を作ったのでしょうか? やりとりの中で印象的だったこと、完成した曲の感想など教えてください。

本来であれば僕が最初に何かデモを投げるのですが、あえて“何か好きなフレーズを送ってみて”というところからスタートしました。そこで携帯のヴォイスメモで送られてきた数小節を僕なりに膨らませましたね。自分のテリトリーから進めるのではなくて、最初から場所を自分の脳内じゃないところに置いて、そこに自分の感覚を重ねてみるんです。もちろん、違和感が生じるところもあるのですが、ちゃんMARIも音の直感がとても鋭い子なので、ずっとアドレナリンが出てる状態でしたね。迷ってる時なんかも彼女はスパッと意見を言ってくれるので頼もしいんです(笑)。まずは、コード感が僕の中にはないボキャブラリーなので、あえてそれを壊さず、ピアノの響きをメインに楽曲を構築しました。歌を入れる時には今までとコードの配分が全然違うので、自分でも聴いたことのないメロディーが引き出された感じでしたね。
TK from 凛として時雨
アルバム『彩能』【初回限定盤】(2CD)
アルバム『彩能』【通常盤】

OKMusic編集部

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