ハイレベルのポップサウンドを
提示したゾンビーズの
『オデッセイ・アンド・オラクル』
本作『オデッセイ・アンド・オラクル』
について
やはり、本作からのシングルはどれも売れず、アルバムのリリースすら見送られることになった。助け舟を出したのが当時CBSのプロデューサーで、天才アーティストのアル・クーパーだ。当時の彼の発言は業界内外で大きな力を持っており、結局一度イギリスで失敗した「二人のシーズン(原題:Time Of The Season)」を69年になってアメリカで再リリースすると、あっと言う間にチャートを駆け上がり、3位まで上昇する。アル・クーパーがいなければ、おそらくお蔵入りしたであろうアルバムだが、本作は間違いなく傑作であり、ビートルズやブライアン・ウィルソンにも大きな影響を与えた作品なのである。ただ残念なのは、アルバムがリリースされた時にすでにゾンビーズは存在しなかった(ゾンビ化していたと言うべきか…)ことである。
収録曲は全部で12曲。駄曲はひとつもない。それどころか、何年聴き続けても飽きない魅力がある。豊潤で格調さえ感じられるメロディー、美しく編まれたコーラス、各々は主張こそしないがツボを押さえた演奏など、どれをとっても一級の仕上がりである。ひとつだけ難点があるとすれば、ジャケットに手書きで描かれたアルバムタイトルのオデッセイの綴りが間違っていることぐらいか。正しくは“Odyssey”なのだが、描かれているのは“Odessey”となっている。だからタイトルも『Odessey And Oracle』なのだ。
本作リリース後のメンバーとその活動
2008年には『オデッセイ・アンド・オラクル』40周年記念コンサートを行ないCD&DVDをリリース。昨年は念願のロックの殿堂入りを果たし、ブライアン・ウィルソンとゾンビーズのツアーで本作の曲を演奏するなど精力的に活動している。今年もツアーは予定されていたが、新型コロナウイルスの影響で現在は休止中である。
TEXT:河崎直人