江沼郁弥の音楽に浸り、身に沁みるサ
ニーデイの音楽を浴びながらカレーを
味わい、フラカンを“聴”いてジビエ
で猪肉を“食”らうーー『聴食の楽し
み方 Vol.1』

近年、エンタメに対する楽しみ方が多様化している。動画サイトでの配信やSNS上でのコラボ企画など様々。SPICE編集部でも一味違った形でエンタメの紹介をできないかと、「音楽」と「食」を組み合わせた連載を始動! 本企画は京阪神のグルメ最新情報を発信し続け、現在も関西のテイクアウトできるお店紹介などを発信するなど、関西のカルチャー好きから信頼を得る京阪神エルマガジン社の月刊誌『Meets』編集部に協力を頂き、音楽ライターオススメの音楽とともに、その音楽に合うお店をご紹介! 今は『Meets』を読み、外食気分に浸りつつ、外食が楽しめるようになったその時は、是非音楽を聴きながらオススメのお店で食事を楽しもう。
担当ライターその1:鈴木淳史
1978年2月2日生まれ。兵庫県芦屋市在住。ライター・インタビュアー。ABCラジオ『よなよな・・・なにわ筋カルチャーBOYZ』(毎週木曜夜10時~深夜0時半)パーソナリティー兼構成担当
(1)今の時期だからこそ聴きたい曲/江沼郁弥「春なのに(自粛ver.)」
江沼郁弥 「春なのに(自粛ver.)」は江沼郁弥のnoteにて配信中
こんな春は嫌ですよね。だからって、変に明るい歌を聴いたところで、そのギャップに落ち込んでしまう。根拠の無い励ましで無理に元気づけられても、逆に疲れてしまう。でも、その流れに乗らなければ、社会からはじかれたみたいな疎外感もある。
ただ単に普通の生活を望んでいるだけなのに…、どうすればいい…、どうすればいい…、なんて思っている人は、僕だけではないはず。みんながみんなワンチームになって、元気に明るい未来を夢見て頑張れる人間ばかりではない。だからといって、こんな事を言い続けていても、どうしようもないし、あくまで、僕らがマイノリティーという事だって理解している。
そんな中、江沼郁弥が、その気持ちを自然に代弁してくれるような歌を作った。別に歌に依存したい訳ではないが、こういう同調圧力に違和感を示す歌い手は心から信頼できる。あと、何よりも、緊急事態に素早く動ける表現者も信頼できる。このような動きがメインストリームにとって、強烈なカウンターになっていけば、世界が少しだけでも変わるきっかけになると心の底から信じている。
まぁ、戯言みたいな事を悶々と考えている時は、なかなか外に出掛ける気にもなれやしないから、家に閉じこもって、この素晴らしい歌を聴く。御時世も自粛ムードですしね。それこそ、今みたいな時だからこそ、テイクアウトで美味しいものを楽しみたい。本当は岡持ち的な昔ながらの出前が一番好きだけど、外に出掛ける気分転換だって必要。テイクアウトを買えよ、町へ出よう(自粛ver.)…、おあとがよろしいようで。

●『Meets』編集部オススメのお店はコチラ●
・川間食堂[京都・清水五条]
『テイクアウトして即、鴨川へ。』
清水五条駅から五条大橋を越えて南へ、鴨川沿いのカフェ。通常営業8時からゆえ、看板メニューのライスバーガーやビールをテイクアウトして、朝の鴨川を独り占めしよう。
(2)日々の労働の休憩中に聴きたい音楽/サニーデイ・サービス『いいね!』
2000年代に入り、メジャーレーベルを離れ、自主レーベル『ROSE RECORDS』を立ち上げ、マネージメントも自ら行ない、カフェ『CITY COUNTRY CITY』まで経営する。まさしくDIY(Do It Yourself)。改めて、自主レーベルの利点を考えると、自分のタイミングで、いつでもリリースが出来る事。特に配信やサブスクが当たり前になった現在、この曽我部恵一(Vo.Gt)の動きは完全に時代に合っている。
自主レーベル設立から約15年。レーベル事務所もカフェも自宅も下北沢界隈な彼だが、この春、新たにカレー屋『八月』も開店させた。このコロナ騒動でライブが全て中止になった曽我部自らも店頭に立ち、テイクアウト中心の営業を行っている。自分自身で全ての生活を賄うとは、こういう事なんだなと改めて再認識させられた。もちろん、あくまでミュージシャンだから、一般の人と生活が全く同じとは言わない。でも、労働の大変さは、いわゆる一般のメジャーレーベルのミュージシャンよりは身に沁みていると思う。
3月19日に何の事前告知も無く突如ニューアルバム『いいね!』がリリースされているが、それにしても4曲目「春の風」の始まりの歌詞が素晴らしすぎる。<今夜でっかい車にぶつかって死んじゃおうかな>。日常生活を生きていたら、その大変さに死を考える人だって少なくないはず。それこそ、特にこの御時世だ。死ぬ事を考えるほど一生懸命生きている人間の音楽だからこそ、僕らの胸にむちゃくちゃ響く。
日々の労働の休憩中や終了後にカレーを食べながら、イヤホンから浴びたい音楽。早く当たり前の様に『八月』でカレーが食べられる日が来ますように。

●『Meets』編集部オススメのお店はコチラ●
・カレーショップいなくら[大阪・肥後橋]
『飲める!?カレーショップ誕生。』
オフィス街に現れた洋食居酒屋。まさかの名物は欧風カレーで、後引くスパイシーなやみつきルゥをソース遣いし、フライをディップしてつまむカレーアテは、昼下がりのビール泥棒。
(3)タフでパワーに溢れた気持ちになりたいときに観たい作品/フラワーカンパニーズ『フラカン、二十代の記録』
メジャーレーベルを2度経験しながら、去年には結成30周年を迎え、現在は自主レーベルで活動中。約20年、全国各地をバンドワゴンで移動して年間約100本のライブを行う生活。そんな中、第一期メジャー時代の1997年、1998年、1999年にリリースされたライブビデオがブルーレイとして1枚にまとめられ、『フラカン、二十代の記録』として再びリリースされた。
第一期メジャー最後のリリースが2000年4月という事もあり、どこか90年代は大きな結果を残せなかったというイメージもある。しかし、この映像を改めて観ると、そんな印象は一瞬で吹っ飛ぶ。特に一番最初の「地下室からこんにちは」は、バンドと観客の目線がほとんど変わらない低位置のステージで、派手な照明もなく、ギュウギュウ詰めの観客たちが押し潰されながら大熱狂。ただただ剥き出しのライブ。これが1996年11月のライブ。
映像を観続けると、どんどん大きなライブハウスに進出して、最後の映像では遂に大阪球場、日比谷野外音楽堂へと進出する。確かに後期は少し悩む姿も見受けられるが、それでも圧倒的にエモーショナルだ。
そこから約20年も進化し続けて生き残った。30周年ツアーも大好評で、後は今春のファイナル東名阪のみだったが、こんな御時世…。でもね、この映像を観たら、どれだけタフかがわかる。地球が滅亡しない限り、必ずフラカンは生き残る。
彼らも今年51歳になり、90年代大学生だった僕も今年42歳。みんな歳を取った。それでもフラカンのライブを観ると、異様に肉を喰いたくなる。そんなパワーがあるライブを早く観たい。そして、ライブ終わりに大興奮しながら肉に喰らいつきたい。

●『Meets』編集部オススメのお店はコチラ●
・猪鹿蝶[京都・木屋町]
『みなぎる深夜✕ジビエでチャージ!』
深夜焼肉は数あれど、イノシシ肉まである店は希有。融点が低いイノシシの脂は胃にもたれにくく、夜中にがっつり食べても軽い! 甘い脂を流すように、焼酎もスルスル進む。
文=鈴木淳史 取材協力=Meets Regional編集部

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