Editor's Talk Session

Editor's Talk Session

【Editor's Talk Session】
今月のテーマ:
ライヴハウス支援に立ち上がった
Dとlynch.に訊く

BARKS、OKMusic、Pop'n'Roll、全日本歌謡情報センターという媒体が連携する雑誌として立ち上がったmusic UP’s だからこそ、さまざなテーマを掲げて、各編集部員がトークセッションを繰り広げる本企画。第六回目も前回に引き続き特別編。新型コロナウィルスの影響で窮地に立たされているライヴハウスの応援プロジェクトを展開中のDのASAGIとlynch.の葉月に参加してもらい、バンドの立場から現状であり、想いを語ってもらった。
座談会参加者
    • ■烏丸哲也
    • ミュージシャン、『GiGS』副編集長、『YOUNG GUITER』編集長を経て、BARKS編集長に至る。髪の毛を失った代わりに諸行無常の徳を得る。喘息持ち。
    • ■ASAGI
    • 2003年4月にD結成、08年にメジャーデビュー。Vocalist。作詞家、作曲家。Dのリーダーであり、浅葱ソロとしても活躍。有限会社GOD CHILD RECORDSの代表取締役社長CEO兼CFO。Executive Producer。撮影スタジオStudio Rosariumオーナー。多摩動物公園オフィシャルサポーター。DMMオンラインサロン『Sub Rosa』運営。
    • ■葉月
    • lynch.というバンドで曲と詞を書き、歌っています。フルマラソンでサブフォーを達成し、琵琶湖にバスボートを所有し、ゲーム実況をやっています。
    • ■石田博嗣
    • 大阪での音楽雑誌等の編集者を経て、music UP’s&OKMusicに関わるように。編集長だったり、ライターだったり、営業だったり、猫好きだったり…いろいろ。
    • ■千々和 香苗
    • 学生の頃からライヴハウスで自主企画を行なったり、実費でフリーマガジンを制作するなど手探りに活動し、現在はmusic UP’s&OKMusicにて奮闘中。ディズニー好き。
    • ■岩田知大
    • 音楽雑誌の編集者、アニソンイベントの制作、アイドルの運営補佐、転職サイトの制作を経て、music UP’s&OKMusicの編集者として活躍中。元バンドマンでアニメ好き。

何かしないと
自分たちの今後が危ない

石田
この座談会企画は編集部スタッフが話し合うものなのですが、コロナ禍の中、前回は苦境にあるライヴハウスの方に参加してもらったので、今回はそのライヴハウスの応援企画を行なっているバンドということで、おふたりに参加していただきました。早速ですけど、この応援企画を始めた動機はどんなものだったのですか?
ASAGI
いつまで続くのか分からない不安な状況にあるわけじゃないですか。だから、“音楽で何かできることをしたい”というのが最初の気持ちでした。でも、ライヴ活動ができないわけですから、自宅からでも何かできることはないかと考えて、まずは曲を作ってみたり、今回のプロジェクトを立ち上げたりして、できる限り前を向いてやっていこうと思いましたね。
石田
Dは東日本大震災や熊本地震、台風、オーストラリア森林火災の時もチャリティー的なアクションを起こしていましたが、それも“音楽で何かをしたい”という気持ちから?
ASAGI
そうですね。結構長くバンド活動をしてますけど、結成当初はメジャーを目標に頑張ってて、そのメジャー10周年を迎えたあと、改めて“自分たちの目標って何だろう?”って考えた時、音楽で何かの、誰かの力になるようなことをやっていきたいと、より強く思うようになったんですね。そうなると音楽を作る時の気持ちも変わってきて…それこそオーストラリアの森林火災の件もそうですけど、悲しいニュースを観た時に“自分にできることは何かないか?”って。もちろん自分にできることなんて本当に微力なんですけど、自分がアクションを起こすことで少しでも力になれたらっていうのが最初だったんですよ。それでWWFジャパンとのプロジェクトだったり、新たに日本ユニセフ協会へ寄付できるプロジェクトも立ち上げたりしてるんですけど、実はこれらはコロナ禍になる前からやっていたことでした。すぐに実現するものではなかったんですよね。特に音楽配信からの“自動的な寄付”という内容的にも前例のないイノベーション的なことだったので、結構時間がかかって。前々から計画したのが、ようやく今になって実施されたという感じなんです。
石田
そのシステムも秀逸だなって。ダウンロードだったり、サブスクで楽曲を聴いてもらって、その配信収益の何パーセントかが自動分配されるわけですよね。
ASAGI
はい。2019年の秋頃だったかな? 配信サイトの新たな機能として、収益が自動分配されるシステムができたんですよ。“それって寄付にも使えるんじゃないか?”と思ったんです。楽曲制作には役割があるからシステム的には“プロデュース”や“エンジニア”、“フィーチャリング”“ディレクション”“レーベル”“マネージメント”“エージェント”“プロモーション”などという項目はあるんですけど、もちろん“寄付”はないし、このようにかなり細分化されているので“その他”というのもない。まずはサイトへ寄付に利用していいかを相談して、次にWWFジャパンや日本ユニセフ協会に受け皿になってもらえるかを相談しました。なので、コロナ禍になってからの実際の動きとしては、まずはライヴなどの延期の対応を含め、メンバー、スタッフ、ファンのことを第一に考えて行動しましたね。そして、すぐにファンクラブ会報にマスク2枚、グッズ通販にもマスクや除菌ウェットティッシュを同梱することを考えて手配し、ほぼそれと同時に自宅での曲作りやライヴハウス応援企画を始めました。
石田
lynch.もライヴハウス支援の企画をやられていますが、それはどんな想いから?
葉月
思ったよりも活動できない期間が長引きそうだと感じたところから始まったんですけど、最初は“じゃあ、コロナに対する曲でも作るか”ってスタッフと話してて、その売上でマスクを作るとかして、医療関係とかに寄付できないかなって思ってたんですよ。でも、それよりも身近なところ…ライヴハウスに寄付したらどうかっていう話をスタッフから言われたんです。“コロナが終息したら、またライヴをやりたい!”とか言ってますけど、いざ終息した時に会場がない可能性があるから、だったらライヴハウスを助けないといけないって思いましたね。もちろん僕らだけでどうにかできることじゃないし…それは金額的なところも含めて。あと、僕らが行動することで他のバンドやアーティストにも“何かしないと自分たちの今後が危ない”と思ってもらいたかったんですよね。だから、早く行動に移したかったのはありますね。
ASAGI
そこはまったく同じ意見ですね。
烏丸
バンドが解散・崩壊する背景には、人間関係や音楽性などさまざまな要因がありますけど、活動ができなくなる…ライヴをやらなくなるとバンドは潰れますよね。バンドって生き物ですから。ライヴ活動ができないという現状に、何を思いましたか?
ASAGI
確かに。僕、こういう時っていつも最悪のケースを想定するんですよ。だから、そうなった時の対処を日々考えて、何か音楽に通じることを発信していかないといけないと思ってて。さっき葉月くんも言ってましたけど、Dがライヴハウス応援活動を始めても、自分たちの力だけではどうにもならないってのは分かっていたから、自分たちがアクションを起こすことで“そういうやり方もあるんだ!?”って輪が広がっていってほしいと思ってましたね。そんな時に葉月くんも“ライブハウスを守ろう!”ってTwitterでつぶやいてたから、なんか頼もしかったし、嬉しくなって思わずLINEしちゃったんですけどね(笑)。
葉月
来ました(笑)。lynch.の場合は…lynch.って実はバンドっぽくないバンドなんですよ。曲作りにしても、みんなでスタジオに入って“せーの”でジャムりながらやるんじゃなく、僕がメインコンポーザーをやらせてもらってるんで、ある程度まで構築したものをメンバーに渡して、そこからみんなでアレンジしていくんですね。もともとリモートワークが多かったから、ライヴがないことによってメンバー間の阿吽の呼吸みたいなものが崩れる心配はまったくないんですよ。そういう意味では、ライヴができてないからって何も変わってないですね。
烏丸
それは頼もしい。バンドマンにとって葉月さんの意見は心強いですね。
葉月
どうなんでしょう? それぞれのバンドでのやりようってあると思うんですよ。僕らの先輩であるDIR EN GREYがいち早く無観客ライヴをやったんですけど、あれにはすごく勇気をもらいましたね。そうやってどんどんアクションを起こしていけば、周りにも伝播していくと思うから、こういう状況でも…まぁ、さすがにライヴは難しいですけど、活動はできるっていうことを示したいですね。

OKMusic編集部

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